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使い魔二体目


「さて、オーガウス。俺はちょっと探し物してくるから見張り頼む」

「了解だ主。何かあったら念話する」

「‥‥‥念話ってなに?」


なにそれ初耳。


「?念話も知らんのか。この世界はどうなってる?‥‥まぁ、契約した魔物と主が離れた所で使う心の中での会話だ。こんな風に‥‥‥」


【聞こえるか、主よ?】


「おぉ!?聞こえた!!」


頭の中にオーガウスの声が響いてきた。これは良いな!!凄く良い!!


「じゃあ何かあったらこれでよろしく!!」

「了解した。気をつけて行ってこい主」





「‥‥よし、こんなもんだろ。さて、アッチも問題無かったみたいだしそろそろ戻るか‥‥っと、電話か」


バッグに紙パックやタオルなんかを詰め込めるだけ詰め込んで背中に背負い、オーガウスの所に戻ろうとすると、突然ポケットの中が振動する。レイ達に何か合ったのかと顔が一瞬強張ったが、着信画面をみて緊張を解いた。


「先輩?どうしたんですか?」

『どうしたんですか?じゃ無いわよこのバカ!!』


あー‥‥こりゃバレたなぁ。伊波先輩頑張ってよ。


『テレビで東京が立入り禁止の特別区画になったってニュースを見て、マコを問いつめたの。なんでそんな危ない所に居るって言わなかったの!?』

「いやぁ、言ったら無理にでも来るかなぁって思いまして」

『当たり前でしょ!!‥‥それで?もう安全な所に居るんだよね?大丈夫だよね?』


心配そうな声で尋ねてくる先輩には悪いが、此処は嘘を言うしかない。魔物や真っ黒人間に襲われてまーす。なんて言ったら直ぐにでも此方に向かうだろう。先輩には危ない目に遭ってほしくない。


「‥‥‥えぇ、もう安全な所にいます。今まで警察に色んな話をさせられてて、今さっき終わったばかりなんですよ。だから、安心してください」

『‥‥わかった、気をつけてね。明日本土に渡るフェリーの切符が取れたの。それでそっち行くね』

「あぁー、そのことなんですけど、ちょっと伊波先輩に変わってくれません?』

『え?‥‥うん。マコ、代わってだって』


ちょっと不満そうに伊波先輩に代わる如月先輩は滅茶苦茶可愛かった。いや、声だけだけど、不満そうに唇を尖らせてる先輩を想像すると滅茶苦茶可愛いんだよ!!


『ちょっと〜、浮気は駄目だって言ったでしょ?』

「そんなんじゃないですよ。それよりも、本島に渡ったら九州でホテル取って泊まっといてくれません?」

『は?そっちに帰るなって事?』

「はい。今コッチは先輩が想像してる以上に不味い事になってるんで。レイとかそっちに行かせるんで、お願いできません?」

『‥‥わかった。宿取ったらまた連絡する。代わる?』

「いえ、このまま切ります。じゃ、連絡待ってます」


電話を切って歩き出す。もう充電が13%しか無い。これ以上電話している余裕は無かった。聞きたい事は聞いたので問題はない。最後に先輩の声を聞きたかったが。

危ない危ない。あのままじゃ電源が持たない‥‥あ、充電器も取りに行かないと。




「む、探し物は終わったのか主?」

「あぁ、これ持ってくれ」




「おっ、やっと戻って来たな。‥‥近くで見ると本当デカイな」

「大丈夫ですよ。ちゃんと契約していますから」

「オーガウスだ。よろしく頼む‥‥さて主よ、我はなにをすれば良い?」


別館のホールに戻って、オーガウスを皆に見せておく。叫ぶ奴はいなかった。が、やはり怖いのだろう。顔を青ざめる奴が殆どだ。

先輩以外は怯えてるな。ま、そりゃそうか。


「お前普段なに食うんだ?」

「普通の食事もできるが、普段は大気中の魔素だ。今は主の魔力もだな」


えっウソ?‥‥ホントだ、 280まで減ってる。


「じゃあ入り口の辺りで見張りしてくんね?お前いると皆怖がるから」

「了解。確かに、此処には居ない方が良さそうだ」

「悪いな」

「なに、気にするな。では、行って来る。何か合ったら念話する」


オーガウスを見張りに立てれば大丈夫だろう。という事で見張りをしていたレイ達を呼び戻し、皆で食事にする。

‥‥殆どが喉に通らなかったみたいだが。


食事を終えて、レイと深月、南に先生と『雀羽織』を渡してくれた野島先輩を入れた六人でこの後のことを話す。野島先輩は他四人以外の奴らのリーダー的扱いになった。

まぁ、他の奴らにとって俺は色々複雑な立ち位置だ。護ってもらった存在であり、他の奴らを見捨てた男。そんな奴と喋るのはキツいだろう。という判断で、比較的喋りやすい野島先生を代表として連れてきた。


「今は午後七時。五時には出発して、昼前に着くのがベストだと思う。隊形は今日と同じで、一番後ろにオーガウスを付ける。あと、多分明日からはオークやオーガウスみたいなオーガも出て来ると思う」

「えっ、オーガウスと同じって、不味いんじゃ‥‥」

「あれは例外です。魔力総量の高い奴が知能が高く喋れるらしいので。基本はオーガウスが吹っ飛ばしたオークレベルだと思いますよ」

「そ、それなら大丈夫‥‥か?」


心配性だなぁ先輩。まぁ放っておこう。それより今は少しでも休んで貰わなきゃな。


「とりあえず、今日は皆寝てくれ。少しでも疲れを落として欲しい。多分明日は今日以上に危険だからな」


そう言って解散し、コウは一人で外に出て行こうとする。レベル上げをする為だ。オーガウスの時は『雀羽織』に助けられたが、次からはそんな簡単には行かないだろう。

あの四人だけは何が何でも守らねばならない。そのために‥‥


「コウ。ちょっといいか?」

「レイ?どうしたよ?彼女に着いててやんなくていいのか?」

「南には深月と先生が付いてるから大丈夫。それより、どこに行くつもりだ?」

「‥‥小便だよ、でかい方。一日分だからな、クッセェから戻ってろ」

「僕も、強くなりたい。レベル上げってのに行くんだろ?連れてってくれ。もう足手まといはゴメンだ」

「ダメだ」

「なんで!!」


泣きそうな顔で叫ぶレイ。こんな顔見るのはあの時以来だ。

けど、コイツだけは、汚させたくない。


「お前は南とイチャついてれば良いんだよ。お前が汚れる必要は無い」

「バカにすんなよ!?南を守る為ならやってみせる!!なぁ、僕はそんなに頼りないか?お前一人で背負うなよ。俺達双子なんだから、お前のその苦痛を僕にも半分寄越せよ‥‥頼むから、一人で抱え込まないでくれ‥‥っ!!」


あの事件の時、一人で行くと言った時のレイの顔を思い出す。病院で誓わされた、あの言葉も一緒に‥‥


「レイ‥‥あぁくっそ!!わかったよ。けど、無理だと思ったら言え。良いな?」

「‥‥っあぁ!!」


全く、そんな顔されたら連れてくしかねぇだろ‥‥

凄い嬉しそうにしているレイをみて、顔を綻ばせながら、外にでる。するとそこには、オーガウスと楽しそうに話す野島先輩の姿があった。さっきまで尻餅付いてた人とは思えない。

なにしてんのこの人?


「お?おぉ、主。此奴中々良い奴だな。気に入ったぞ」

「いやぁ兄貴にそんな風に言ってもらえるなんて照れるぜ!!」


は?兄貴?なに言ってんの?


「じゃ、兄貴行って来るぜ!!」

「うむ。主の邪魔をしないようにな」


んん?マジでどうなってんのこれ?先輩どこ行く気?まさか付いて来るとか言うんじゃ‥‥


「そのまさかだぞ?」

「ふ、ふざけないでください!遊びに行くんじゃないんですよ!?」

「けど櫻木弟も付いて行くんだろ?一人や二人増えた所で問題ねぇよ」

「じゃあコイツも置いて行きます!!」

「ちょっ!? なに言ってんのさコウ!?」


さっきと言ってる事が違う兄に慌てて抗議を入れるレイ。やっと同じ位置に立たせてくれると思っていたのに、また守られる立場に追いやられると思い慌てだす。


「主、良いでは無いか。強くなりたいと言っているんだ。それに、戦力は必要だろう?此処は我に任せておけ」


このクソ使い魔め‥‥はぁ、もうどうなっても知らねぇ。


「‥‥‥行くぞ。オーガウス、深夜までには戻る」

「御意。行ってこい、主」


オーガウスに後を任せて、二人を連れてショッピングモールの裏側へと回ると、早速二体。近づいて両手足を斬る。

さて、こっからは二人の仕事だ。汚させたくないとか言ったが、もう知らん。あの時誓わせたのはコイツだ。もうどうとでもなりやがれ‥‥


「レイ、ポイズンダガーを先輩に渡して、それぞれ一体ずつ殺れ。大丈夫だ。噛まれても『解黒薬』があるから安心して噛まれろ」

「いや、出来れば噛まれない方が良いよね!?」


そりゃそうだ。‥‥さっさと終わらせろよな。後が使えてるんだから。


「う、うわあああああああああああああ!!」


おっ、先輩が行ったな。

頭を貫かれた『黒化』した男は、灰になって消えて逝った。

お見事!!‥‥あ、レイもやったな。


「な、なんだこれ?視界の端に‥‥ボタン?」

「ジッと見つめてみな」

「うわっ!?なんだこれ!?」

「名前に職業、年に魔力?」


よしよし。ちゃんと開けたみたいだな。ところで、先輩が叫びながら殺したせいで集まってきたんですが?


「使い方は後で自分で覚えろ。今は誰かの大声で寄って来たコイツらの相手だ。出来ないとか言うなよ?」

「大丈夫だ、やれる!!」

「お、俺もだ!!」

「そか、んじゃよろしくー」


そう言って横にあるコンビニに入って行く。

今週まだ漫画読んでなかったんだよなぁ。どうせ来週のなんて読めないけど、今週号くらいは読んどこ。

なにか叫んでる二人を無視して、店内に入って行く。思っていたよりも暗い。


     ・

     ・

     ・

     ・


「ゼェ、ゼェ、終わったぞ‥‥」


漫画も読み終わり、乾電池式の充電器を集めていると、先輩が死にそうな顔で声を掛けて来た。

どのくらい殺ったのかねぇ?


「レベルは?」

「僕が12で先輩が11。というか、放置ってなに?オークとかきたらどうするつもりだったの?」

「そしたら流石に大声上げるだろ?それより、『ピュリフィケイション』使えるだろ?さっさと使え真っ赤だぞ」


慌てて『ピュリフィケイション』を使い、身体の汚れを落とす二人。

放置してからまだ一時間しか経ってないな。‥‥次の狩り場探すかぁ。


「よし、んじゃ次行くぞ。今日でメイン職業決められるようになってもらう」

「それって‥‥昼間コウが苦しんでたアレ?」


無言で頷いて、サッサと次の狩り場を目指す。が、周りにはもう居ないし、近場だともう居ないだろう。

とりあえず、来る時に見た映画館行くか。





道中、『黒化』した人達に会う事は無かった。魔物の姿も無く、生きている人にも、当然会わなかった。さて、


「よし、流石に中には俺も付いて行く。でも、『黒化』は任せた。魔物が現れたら俺が殺る」

「了解」

「りょーかい」


レイは気を引き締め直したようだが、先輩はまだ疲れが残ってるみたいだ。まぁ、死んだら自己責任で。


「行くぞ‥‥二人共、下がれっっ!!」

「っ!?」

「な、なんだぁ!?」


映画館に一歩足を踏み入れた所で、何かが足に向かって液を飛ばして来た。液が当たった場所がどんどん溶けて行く。

全く気づかなかった。どこから攻撃された!?


「っ!!雀羽織!!」


今度は下から飛んで来る。最大火力で吹き飛ばし、映画館の中に転がりながら入って行く。


「お前らは来るな!!」


追って来ようとする二人を止めて、最大火力の『雀羽織』で天井を覆う。

さて、攻撃して来たのは‥‥うっそぉ


「スライム?」


ぽよぽよと音を立てながら少しずつ前進してくる姿は、非常に愛らしい。

よし、どうにかして使い魔にしよう!!


「よーし、ほらほらこっちだぞー‥‥うぉぉ!?掠ったぞ今!?なに、あの酸みたいなの出してたのお前かよ!?」


こんな愛くるしい姿と足音(?)させといて、なんて恐ろしい奴‥‥っ!?


「ハァァッ!!」


次々と発射される酸を回避して、一刀両断。左右に飛び散った酸が音を立てて床を溶かしていく。

こんな危ない奴使い魔になんて出来るかっ!!


「ふう、思ったより雑魚だった‥‥ふぁ!?」


終わったと思って背を向けたのに、突然の殺気で反射的に横に飛び退き前を見ると、二つに斬った筈のスライムが、元に戻っていた。物理攻撃無効ですかそうですか。‥‥‥‥強いんだなぁ、異世界のスライム。コッチでは雑魚なのに。ま、こんなの一瞬ですけどね!!


「雀羽織!!」


雀羽織を天井からスライムの頭上に集束させ、思いっきりぶつける。これは流石に‥‥うん。焼けはしたけど死んではないなぁ。今なら契約出来るか?イヤでも、会話が出来ないし‥‥あ、念話があるか。


スライムの首筋(?)辺りに魔力を当てる。これホントに大丈夫か?


テッテレーン!スライムが使い魔になりました!!名前を決めてあげてね!!


よし、ちゃんと使い魔に出来たな。えーっと‥‥‥


【おーい、話せるか?】

【あぁ、話せるぜ主】


中々男前なお声でいらっしゃる‥‥


【話せるみたいで良かった。今回復薬掛けるからな】

【俺には必要ネェよ。時間が経てば回復する】


え、アレ食らって再生すんの?


【身体が蒸発とかしない限りな。普通スライム相手にする時は魔法職連れて来るもんだぜ?そんな事も知らねぇのか主は】

【おい、チートすぎないか?スライムってどんだけ強いんだよ‥‥】

【まぁ、知能持ちの俺がおかしいんだ。普通は最初の剣で死んでる】


で、デスヨネー!!焦った‥‥


【それより、回復も終わったし話しやすいように人の形になってやる。少し離れてろ】


えっ、人化もできるんすか。ぱねェッスね。


「よっ‥‥‥っと、こんなもんだろ」


イケメン!!けど、なんかホスト崩れみたい。なんでこんな格好にしたんだ?


「あそこの壁紙みたいに作ってみた。なんかおかしいか?」

「いや、顔は?」

「顔は元々決まったのしか作れねぇ。つまり、コレが俺の素顔だな」


なるほど、イケメンは元々か。‥‥ちっ


「コウーッ!!終わったのかー!?」

「あぁ、問題ない!コッチ来い!!」


外で痺れを切らしたレイが、叫んでいる。全く、心配性だなぁアイツは。


「おい主、奥から団体さんだ。どうする?」

「今から来る奴らに任せる。危なくなったら助けてやってくれ」

「了解」


ドタドタと走って来る音が前から。後ろから「あぁぁーー、」とか言ってる団体さんの声。真っすぐ前に一人で歩いて行き、走って来ていた二人に前に居る奴は使い魔だと説明し、その場を任せる。俺もいい加減レベル上げしなきゃ。




一番スクリーンから順番に入って行こう。誰かいるかなぁ?


「失礼しまーす‥‥うおっ!?」


一斉に無数の赤い目玉が此方を向く。 コッワ!!夢に出て来たらどうすんだよ‥‥


「雀羽織っ!!」


さっきみたいに天井に雀羽織を広げ、視界を確保する。ひぃ、ふぅ、みぃ‥‥‥まだ学校はやっているのに結構いるな。あ、逃げて来た奴らもいるかな?まぁなんにせよ。


「一番スクリーンでこんなに居るなら他も期待できそうだな。さて、始めるか!!」

「あぁぁーーーっ!!」


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