3話 オレンジの甘い風 異質のなかの普通 普通の中の異質
思い返そう、私はポンキッキーではない。ましてやその血を重ねた三世でもなかった。
「そう、あなたがあなたを決めるの。それは神様でも他人でもない。あなた自身が選択することなのよ。
あなたとはどう言う人間か。それを示す旅。それが人生なのよ。
それをね、他人に委ねてグダグダ言ってんじゃないわよ。あんた、いいやつなんだから。
あとあなたは、私の認識ではポンキッキー三世だから」
なかなかいいことをいう少女だが、私はポンキッキーではないし、ましてやその…
「じゃあまず、透視とかからやってみようかしら」
示せとかいいながらなかなか話を聞かない子だ。
「ん、投資?」
投資ならやったことがある。下げにすると、グラフが上がって、上げにすると下がるマジックのことだ。
ワタシコレトクイ!
「透視よ!凍死でもなく透視! ものを透かしてみるの!」
なんじゃそりゃ、このこはまた超能力っ子なのか?ここの子はみんな所長と同じような、イカr、変わった感じなのだろうか。
「あのね、超能力は才能なんかじゃないの。そりゃ生まれつきできる子もいるけど、要は 認識 の問題なのよ。ただそれだけ。できると思えばそれはできるのよ?時代とか、人々の認識とかもあるけど」
「そりゃ、そうなのかもしれないけど、世の中には理屈や法則があってだね、それを超えるっていったらそれは 」
私は少し子供をなだめるような声で言った。
「奇跡?そんなもの過去にいくらでも起こしているじゃない。イエスも、モーセも真実よ。昔の人は本気でそれを信じてた。多くの人の信念が合わさると奇跡だって起こせたのよ。」
「けどそんなの、今じゃ理屈が通らないよ。」
「理屈?それが正しいと信じられる?そんなのはただの理屈づけをしたに過ぎないわ。理屈が元々あったわけじゃない。ただ信じたことに、理屈をつけただけ。
真実なんてもの大勢が信じてるってだけよ」
「昔天動説ってあったでしょ。考えてみなさいよ。不思議なのはそれで全ての学問や社会が機能していたということよ。理屈は通ってた。天動説を唱えた人は冒涜者呼ばわりされてた。人間の真実なんてそんなものよ。大多数が信じて疑わないってだけ。」
「けどそれを疑うこともできるわ。信念を変えて、認識を変えるのよ。それが世界を変えるってこと。
あなたにもいずれわかるわ。けどこんな説明より、見せるのが手取り早いわね。」
すると彼女はそそくさと脇に行って、カーペットを取り出してきた。
そのかわいい素足をカーペットの上に乗せて、こういった
「ここに炎がある(フィアーニャ)」
唱えた。またたくまにカーペットは火に包まれた。
よくあるマジックだ。ふふ。可愛い子だ。
「ファイアウォークって知ってる?」
そして彼女はその上を…歩き始めた。よくできたマジックだなあ。
熱いそぶりも見せず彼女はその上をあるく。そしてそこに横になる。「涼しいわ」
すると彼女は私を手まねいた。ああネタを探るチャンスだ。この高飛車な女の子に物を言わせてやろう。文系の私が、物理法則を教えてやるのだ。
「熱っつ‼︎‼︎‼︎!!!」
んっ……ふむ、炎は本物みたいだ。
では女の子は?
「熱っつつ!‼︎‼︎‼︎!!!」
こいつ本当に炎に乗ってるのか。たかが言い合いでアホじゃないのか。けどなんで…
女の子が得意げな顔でいう。
「それはね、あなたが炎は熱いものだって思い込んでるからよ。人類はそう思うことで炎の利を得てきた。
私は今逆に考えてる。炎は涼しいって。けど料理はできないわね。ふふ」
いいながら彼女は私に抱きついてきた。
んー女の子って最高。
ではなく!!!炎が私に移ってきた!火だるまって何なんだっけ?祭り?そんなことより
「あっつ!‼︎‼︎‼︎!!!???」
いや、熱い!燃えてるほんとに萌えてる!!
「そうね、あなた今熱いって思ってるでしょ」
当然だろうがこのポンキッキー!熱くて皮膚が焼けてるが、肌で分かるよ!
「じゃあその信念。変えてみることね。」
なんだそりゃおいなんだそりゃおいなんだそりゃお…
やばいこのままじゃ死ぬ。ほんとに死ぬ!!
「そう思うならほんとに死ぬのかもね。」
今はこのゲスっ子に構ってる暇はない。
なに、信念を変える?そんなの無理だろ!炎は熱いし、熱いもんは熱いの!
いや、けどあのこは出来てた。
よし疑え。でないと死ぬ!
熱い熱い熱い熱い。熱い熱い熱い熱い。熱い熱い熱…熱い? これ熱いのかな。うわ熱っついのかなコレ。本当に熱… うわ
「冷たっっっっ‼︎‼︎!!!」
な訳ねえだろ熱っっっつつつつ!!!
んん……。けど不思議と痛みがない。神経が壊れたのか?
いや、ん?熱いような寒いような。寒気?
「まさか…。ふふふ。初でできるなんて。さすが現実を見てこなかったひきこもりなだけあるわ。それは素質よ、素質。」
うるせぇ!女の子に言われ放題なのも癪だが、今は助かったことに驚きを隠せない。
そしてまさかと言うところを見ると、できなかったらどうするつもりだったのだろう。
生き返らせることもできるのだろうか。
まぁそんなことより疲れ…。
意識が朦朧としてきた。思い出さないような歌が頭をぐるぐるまわる……。自分がおかしくなったのか、世界がおかしいのかどちらなのだろう。もう真面目に働くから故郷に帰りたい……。




