2話 サブマリン色の真実。 虚構は現実に。現実が虚構に。
それで、私はどうなるのだろう。実験にされるとなると、死ぬのだろうか。
けれど不思議なことに不安はなかった。むしろ前にいた世界の方が不安でいっぱいだった。押しつぶされそうだった。毎日フランクオーシャンを聞いて丘のような公園でお日様を眺めて、それができなくなると、家に引きこもって、ただ震えながら、1日が過ぎるのを待っていた。
そう、引きこもりというと少し語弊がある。遊んでいたわけではない。
一切の社会的繋がりは立ってきたが、一人でできることはなんでもやった。学んだ。体験した。それほどにまで怖かったのだ、社会が、だから必死で努力した。教養もつけた。哲学も学んだ。有数の大学にも、会社にもいわゆる褒められるような大手に行った。
あらゆる考え方も学んだ。アートも、低俗なものも、スポーツも、武道も。ありとあらゆることに手を尽くした。それほどまでに怖かった。
人が羨むような色々なものを手にしてみた、カネも車も、女も。けどそれでも怖かった。
だから、何をするのもやめたところだった。何回聖書を開いても不安は静まらなかった。神は私から離れ、見放しているのだと思った。
だから、だからこれから起こることで私が死んでも、何も後悔はなかった。
これから起こることが私の人生なんだと、初めてそれを受け入れられた。
神ではなく「自分の選択、人生、現実」を、初めて受け入れることができた。
私は、久々の「安心」を感じていた。
「おはよ。また小難しい顔してるね。くれぐれも梅毒にならないでね。」
などとあの女が、片手にコーヒーを持ち、笑いながら部屋に入ってきた。
「おはようございます。そう言えばもう三日も部屋にいますけど、いつになったら、その、実験というのは始まるんですか?」
そう三日もまるで同じ部屋にいる。快適な部屋で、自分の欲しいものはAI?みたいなティッシュ箱に言えばなんでも持ってきてくれた。一体どこから。。
そんなまるで夢のような部屋だったが、実験のことを考えると気が気ではなかった。
「んーそうだね。今からでもいいよ。君がここにきて落ち着くのを待ってたんだけど。」
心臓が軽くドクッとした。手のひらに少し汗を感じる。目を少し大きく開いて私はこう言った。
「今すぐ、初めてください。」
「了解。」
女は短く言うとどこかに消えてしまった。
この世界に来てからというものの、あの日以来、この部屋から一歩も外に出ていない。
この世界がどうなっていて、彼女らが私に何を望んでいるのかは全くわからない。
もしかしたら、彼女らは頭のおかしい団体で、未来に行ったなどと嘘ぶいているか。人権無視の視聴者参加型のドッキリ番組のどちらかかもしれない。
どうでもいいことか......。
そんなこと。私も狂ったようなものだ。酔狂に付き合うのも悪くはないかもしれない。
そんなことを考えていると彼女が入って来た。
「ついて来てちょ」
ちょ?つまらん女子校にいる好かれようとしてる数学教師? まあいいや。 私は腰を上げて彼女に続く。
「こっちくるっちょ」
くるっちょ?聞き間違いか...。まあいい。相当疲れてるみたいだ。
「ここ?」
そう言うと彼女は猫みたいに首を縦に振った。
言われたドアに立つとそこには彼女がいた。ん。彼女はあそこにいたはずでは?振り返ると彼女はいない。
トイレにでも言ったのだろうか。
「おはよう、初めましてだね。私はここの所長というか。んー、リーダー のイヴァンカよ。」
!!!?イナカたん?トランプ? いやそんなことより 今、初めまして と言ったのだろうか。
「初めまして? 僕たちすでに会っていますよね?あの日から??」
「ああ、確かに。けどそれは君の時代の君の世界の私であって。この時代の、この世界の私ではないよ。」
????え
「ここに来てから君のお世話をしていた子も違う。それも別の時代の私だ。この世界のオリジナルの私に近づくとちょっとキャラが変わるんだけどね。それが元の世界の彼女なんだけど。近づくほど、私が薄れる。」
「そして完全に近づくと消える。オリジナルの私には異世界の私は`異世界`の私は認知できない。だから、異質な方は消える。」
頭が混乱してどうしようもない。多次元解釈のようなものなのだろうか。消えた方はどうなるのだろうか。彼女は尋ねる前に少し私の眉を見て答えた。
「正確には、スポットライト理論だ。今も過去も未来も、今 ここに存在している。私たちはその動きの距離、変化率を`時間`という概念で感じているだけだ。時間は想像上のものだよ。」
「ちなみに、消えた私は、元の世界に帰っただけ。つまりは、過去、未来、現在で起こったかもしれない`あらゆる可能性`が今ここに存在するんだ。つまり、認識を変えれば、なんだってできる。いや、その可能性のどれにでもなれる、いける。過去に行くことも、現在の違う世界に行くこともね。」
「けど自分の認識が作った、自分という認識の世界つまりオリジナルの世界から抜け出すことはできない。それは人生という自分の車を乗り捨てて放置することだからね、いつか帰らなきゃならない。けど......」
「君は特別なんだ」
またでた、このワード。もういい加減にしてほしい。私は...。
「君はなぜか君のいたあの世界にしかいないんだ。」
「え??」
「私は別次元には存在しないってことですか?」
「そういうことだ。理由はわからない。君が世界や、神や、現実を拒みつづけて来たから。
大きな源の私たち、から離れてしまったのかもしれない。詳しくは私にも。」
?となると私は本当に孤独だったのか。私は。。私は。。私は。私。
「な〜ーに。心配することなんてないさ。これからそれを探しに行くんだから。その理由をね。君とは何か。私にも分からない。君が、それを探しに行くんだ。」
「私は長らくここで、この世界、神や真理について研究して来た。けど君を見つけた時はびっくりした。君は私が研究する価値がある。そう思って君の世界の私に連れて来させたんだ。
ここにきて、色々驚かせてしまってすまないね。マトリックスって映画あるでしょ。いくら突飛なことでも慣れたらそれが普通になってる。それが世界、いや人間ってものよ。」
いきなりの出来事すぎて話が飲み込めない。
あの後ひとまずゆっくりしなさいと言われ、部屋に戻されたが。
これからどうしたらいいのかも分からない。
死ぬのならまだしも。自分が本当に神、真理?とやらの源から見放されていると言われるとは思わなかった。私はまた深い孤独を感じなければいけないのだろうか。
ははは、全く何を信じたらいいのか分からない。神以外の悪魔だろうか?そんな
「それは自分自身よポンポッキー三世」




