1話 存在の挿入。認識か幻想か。
これから始まります。
引き金を引かれた......気持ちいい......。
いや何を言っているのだろう私は、幽霊的快楽でももう覚えてしまったのか。ここは天国かニルヴァーナなのだろうか。
これほどまでに死後の世界は気持ちいいかのか。ああ、良い気分だ、なら、言ってみよう。
「キモティィーーー!!!!!!!!」
「キモッ!!!!!!」
誰かが私の甘美な叫びと喜びに丁寧に包まれた私のお美しいお言葉にすぐさま反応した。
いや、誰も聞いていなかった。いなかった。田舎育ちだ。イナカっていうロシア人幼女だ。
そうでなけれ、ゴミ箱メンバーズ会員の信条に反して、ハートブレークしてしまう!!!!
笑われるなんて。そんな。妾は.......
「大丈夫、聞かなかったことにしてあげる。」
と笑うような声とともに肩を叩かれた!違う!イナカたんだ!!!!?
だが、肩?幽霊なのに肩?あったっけ。
「ある...るんるん」と咄嗟にコミュ障語が出た。
「あるよ、そりゃ」公務員のような女がただそう返した。
「え?」
確かに肩だ、ある。というか体がある。むむ、あれは幻覚だったのか。見知らぬ女を見て興奮でもしてしまったのだろうか。いや私は...。
「君はね」
「君は選ばれたんだ」
え!もしかしてこれからいせk....
「実験台に」
なに。
「この世界に存在する人類の中で、最も排除しても問題ない存在 として選ばれたんだ」
「君はこれから未来、君のと同じ未来ではないけど、未来に行ってもらう。というよりもう行ってもらったんだ。君の存在ごとこちらに移った」
待って、待って。ついていけない。さっきまで自分で精一杯だったんだ。今も....。
「けどそんななことをしたら、過去を変えることに...」
またこの女が私の言葉を遮って言った。
「だから言っただろう。君は排除しても問題ない存在なんだ。君は社会と関わらず、世界を見ず。現実を受け入れてこなかった。そんな君が世界にもたらす影響なんて微々たるものだ。
観察者効果って知ってるかい?観察者によって世界は影響を受ける、シュレなんたらの猫だよ。君は観察を放棄した。だから問題はない。猫はいるかもどうかもわからない。つまり存在しない。」
「中でも君はとくに稀有な存在だ。君は...」
「もういいです!!!!」
かなり怒鳴ってしまっていた。この冷静さとノリの悪さには自信のある私が。
「ごめんごめん。君を傷つけるつもりはない。けど、言わないでおく方が酷なことだからね。」
「私は嫌いなんだ。現実を見ないことが。言っただろう。現実は、見てこそ変えられる。目を背けていては変えられないんだ。」
「逆に見てしまえばなんだって変えられるんだ。だが多くの人はそれをしようとしない。問題と直面しながら、それに目を向けようとしない。だからこんなことになった。」
「君にはそれができるかい?醜い世界を見て、それでもなお、美しい世界の存在を信じられるかい?」
「誤った世の中を受け入れて、それでも強く生きるか?
世の中のあらゆる不条理や無常を受け入れてもなお、君は強く、活きること を望むか?」
わかった。この人は2だ。ヒーローだ、聖女なのかもしれない。けど私には無理だ。
「私は望みます」
自分の体が、なぜか咄嗟にこう言った。
心は......
「もう逃げたくない。」
「よし。」
目の前の女がそう言った。




