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小さくて、とても大きな悲鳴が聞こえた。
命の火が消える事を必死に食い止めようともがくような、大きな意味を持つ声無き悲鳴だった。
その悲鳴を上げる男の手は、アタシの足首を掴み、闇の底へと引きずり込もうとするのだ。それに抗うと、その男は化物のように腕を長く伸ばしてアタシの首を掴み、その手で強く強く締め上げられ、息が出来なくなったその瞬間、体を強く揺さぶられて目を覚ます。
またこの夢か。
目を開けて、自分の居場所を確認する。
ああ、良かった。自分の部屋ではなくて、今寝泊まりしている下宿の狭い一室だ。
あのかすかな悲鳴は、毎晩のようにアタシの頭を駆け抜ける。この悲鳴はきっと、一生アタシから去る事はないだろう。
あの日、あの男に悲鳴を上げさせたのはアタシだ。
だから、アタシはこれを一生背負い続けなくてはならない。