死者蘇生なんてご都合主義があるわけ…ない!
『魔法には大きくわけて2つのエネルギーがいる。正エネルギーと負エネルギー、エネルギーに当てはめる属性を選択して魔法陣という歯車を回す事によって得られる物が魔法である。』
ええっとなんだっけ、この会話。そうたしか大学の……
『正エネルギーを込めた魔法は治癒や浄化、防御や結界に使われ、負エネルギーは破壊魔法や呪術に用いられる。特殊エネルギーとして虚や素と言われる特殊魔法は正負の2つを掛け合わせる事で発現させることができ、効果としては、時魔法や次元魔法、重力魔法がそれにあたる。』
一年の時にやった気がする内容だな…確か…
『時魔法や次元魔法を正しく使えば、死者蘇生をする事も理論的には可能だが、大規模な時魔法を行う分の虚エネルギーを人体で生成できない』
そう、確か基本魔法学概論だ!
夢?走馬灯じゃないよね?
うっすら目を開けると、光が飛び込んでくる。
まだ辛うじて生きているみたいらしい。
あー、よかった。生きてたー
シャルル=マヨ=リーファン、戦鎚揚げ茄子さんとの戦闘から無事の生還である。
「大丈夫?」
声がした方をみるとそこには心配そうな目をした女の子…ではなく厳ついおっさんが立っていた。全身ナース服で、キャピキャピの。
全身女子ナースの厳ついおっさんとか誰得だよ!!?
「ご心配ありがとうございまふ。主にあなた様のナース服が気持ち悪くて死にほうでふ」
オェーッ
心意性の吐き気に襲われる。なにあれ怖い。
「それだけ騒げれば大丈夫そうね。」
今度は違う声、全身芋いジャージのエルフの女の子が立っていた。
「樹正魔法が間に合ったみたいね。大丈夫そう?」
うわぁ、綺麗な微笑み!これは天使やで!
ジャージは芋いけど、ナース服なら完璧だけど!
思い返せば記憶にトラウマな揚げ茄子女郎の戦鎚。
もうアルバイト初日でやめてやると思ってたけど俺やめないで頑張るよお母さん!
癒されたいこの笑顔!
「アレルギーとか出てない?腕ちゃんと動く?目見える?」
「あ、はい!大丈夫です。」
優しいなぁ、さすがエルフ!森の女神!
受け答えしてデュフフしてると不意に爆弾が投下された。
「チッ」
舌打ち!?舌打ちしたよこの子!?
「クソが。しっかり回復魔法で回復してんじゃねーですよ。この変態野郎」
唐突な罵倒に今度は骨じゃなくて、心がバッキバキである。
なんで!?なんでそんな辛辣なの!?
「樹木回復魔法は回復自体は早いんだけどねー、マジックアレルギー出やすいのよ!早い話が廃人生産回復魔法。」
普通は水回復か聖回復なんだけどねー、とナースのおっさんがクネクネしながら魔法について教えてくれた。
ってか見ず知らずの人間にそんな危ない魔法打ち込むんじゃないよ……
本気で職場変えようかなぁ……
初出勤初日で、転職を検討するのであった。
職場のイメージとのギャップについて思案してると、扉をコンコンとノックされる。
「おー、起きたか。五体満足っぽいな。ヨカッタヨカッタ」
「所長?どうされました?」
「様子見だよ。一応な。」
ガラガラと扉をあけて入ってきたのは緑髪に黄色の瞳、どこから見てもドラゴニュートの男だった。
所長と呼ばれた男はネームプレートをこちらに見せて適当そうに挨拶してくる。
「ナスにぶっ飛ばされて、エリーの樹木回復で生きてるんなら即戦力だな」
「エリー言わないでください!エリアリス=サラ=セサミソースって名前があるんですから!」
せめてサラにしてー!って騒いでるドSエルフ。
あの芋エルフ、エリーってあだ名なのか。
今度こっそり名前を呼んでやる。
今度こそ殺されそうだからやらないだろうけど。というか機会ないだろうけど。
所長がいるなら都合がいい。
さっきは考えるっていったけど、即断して辞めよう。
こういうのは早い方がいいよね!
「即戦力も何も、俺この職場辞め」
「ン?なんか言ったかー?」
辞めますと言おうとした瞬間に掴まれる所長の左手の握力と、右手に集まる魔力(おそらく火負魔法のヤバい奴)にニコニコ笑顔。
やめ、辞めま……
「ガンバッテハタラキマス」
「おー、期待してるぜ!」
としか言えなかった。ここの人は心折るのが得意なの!?
お父さん、お母さん
初日から猛烈なイジメにあいました。禿げたらごめんなさい
ちなみにナースのおっさんはマリアさんと言うらしい。
知らねぇよ!!!