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王韙はもともと孤独だったが、さらに相手にする者はいなくなった。
城中の一員となってからの話である。
所謂庶子の出である彼女に対して、好意的な態度で接する者は皆無だった。
召し上げられたのは四歳の時で、右も左も分からないまま、別世界の住人となった。
女手一つで子供を育てるには、この世情は薄情に過ぎたのだろう。食うに困った母親が城門を叩き、過去、戯れに重なった父、王粛に認知されたそうだ。母はその後、早々に世を去っている。
当時は上に本妻の兄が二人おり、彼女はいてもいなくても構わない、ただ飯を喰らうだけの子供だった。
誰にも望まれない子は憐憫の対象とはならず、妬みや蔑みを持って受け入れられた。母の死後にその身を任された乳母は、彼女を苛め抜いたそうだ。
彼女の方でも小さいながらも芯が強く、決して苛めには屈せず、日々超然と過ごしたという。
叩かれ、捻られ、悪態を浴びせられる。背後でせせら笑われ、使用人も手懐けられ、味方はいなかった。
そんな暮らしは十二の歳になるまで続いたという。乳母の支配を離れたのは、二人の兄が相次いで逝去したことによる。
彼女は一躍城内の要人になった。
王粛にとって唯一の子となったからだ。
このまま乱世が進むと、その限りではないが、今のところ、官職や領地は世襲ではない。太守の後継候補とは普通はならないのだが、それでも彼女の存在は大きなものになった。
それは彼女の小さな身体には持て余すほどのものだっただろう。城内外の有象無象は彼女の気を引こうと群がった。
だが、彼女は頑なに心を閉ざし寄り付く利権者の手を払い、誰にも心を許すことはなかった。
周囲の人々は、彼女の頑なさを、おとなしさ、寄る辺ない少女の薄弱さ、と、理解した。
いざとなれば簡単に従属せしめる存在と見做して、敢えて取り込もうともしなくなった。徐々に軽んぜられるようになった彼女に追い打ちをかけるように、王粛に三男ができた。
そして、彼女は未だ孤独だった。