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 夜中には雨も上がった。


 寝付けなかった私は庭に出てぼんやりと考え事をした。

 大した広さの庭では無いが、日本庭園風に凝った造りにしていた。小路の左右に石灯籠を設置し、そこを抜けると小さな池に出る。

 池の端の東屋に置いた二脚の椅子のうちの一脚に腰を据える。


 綺麗に晴れて、夜空は迫ってくるように見えた。


 私は彼女達、いや、彼女の来訪に非常に驚かされた。

 見るなり抱きついて来たカレンについてである。


 彼女が私を慕うのは当然なのである。

 なぜなら、カレンは私が作り上げた人造人間だ。



 脳内には制御用のバイオチップが埋め込まれているので、私の命令に背くことはできないし、常に私を意識して生きている。


 とっくに死んでいるものと思って諦めていたが、こうして再び私の前にいる。

 これは、私にとって無上の喜びである。

 寂しさを紛らわせる為に彼女を作ったのだ。

 私にとって彼女は半永遠的な伴侶となるべき存在だった。


 だったのだ……。


 ふと、月が雲に隠れ、世界が闇に落ちる。


 背後には今まで思いを巡らしていたカレンが立っていた。


「ご主人様。ご無事でなによりだったよー」


 後ろから抱きしめられる。とは言っても、彼女には右腕がないので、半ばのしかかるような格好になっていたが。


「ああ、お前こそな。これまでどこでどうしていたんだ?」


 どうも年のせいか目頭が熱い。


「長い間生き埋めになっていたんだけど、土砂崩れで生命維持装置がむき出しになったところを三千年程前にアララト山で掘り起こされたんだよ。あの時は日本にいたはずなのにねー。知らない間に随分と移動していたんだね。それからは、地中海世界をご主人様がいないかと探しさ迷っていたんだよ」


「中華にはいつごろ?」


「こっちに来てまだ三年程。敦煌とんこう陽関ようかんから洛陽に上ったんだよ。各地で豪族の部曲ぶきょくに加わったりして日銭を稼いでいたんだよ。辛く長い日々もこれで報われたよー」


 そう言って彼女は目元を濡らした。

 彼女に向き直って優しく肩を抱いてやると、後ろに手を回してきたので、頭を私の肩に乗せて撫でてやった。


 我々は無言で抱き合った。父娘の再開である。

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