「ゆとりの後輩チームメイト」(ショートショート)
実況 「あ~っと、また外れてしまいました・・・。
これでカウント3-2のフルカウント」
解説 「う~ん。今日はどうも、主審のストライクゾーンの判定が
すごく狭いようですからねえ」
実況 「ん、なるほど。しかしいまだ1アウトでランナーは二塁。
と、ん~?あれは・・・、
セカンドの菱川がマウンドへと駆け寄っていきます。
高卒3年目の若手、菱川がベテランピッチャー窪の元へと
声をかけにいくようです」
★
菱川 「・・・・・」
窪 「・・・ん?何だお前」
菱川 「あ、いや。
タイミングかなと思って来たんすけど、
何て言ったらいいかわかんなくて」
窪 「あ?何だそれ。
ったく、こういうときはなァ、審判のジャッジが厳しいすねとか、
そんなこと言えばいいんだよ。
ほんと、気ィ利かねえヤローだな」
菱川 「あ~、なるほど。
さすが先輩、勉強なるっス」
窪 「ん」
菱川 「じゃ、
審判ジャッジ厳しいみたいなんで、ドンマイっス!」
窪 「わーってんだよ!いいんだよ!
今、オレが言ったんだよ!
いいからもうあっちいけ!守備戻れ!」
菱川 「すんませんっス」
窪 「む~・・・、何だあれがいわゆる“ゆとり”ってヤツか、
ったっく~・・・」
★
実況 「さて、カウントはフルカウント。
ピッチャーの窪は、次は何の球を投げてくるか?」
解説 「さっきまでに落ちる球で二回ワイルド・ピッチしてますからねえ。
変化球投げたいですけど・・・」
実況 「さあピッチャー窪、投げた!
球種は・・・真っ直ぐ!外角ストレートだ!」
カキーン!
実況 「あー!バッター打ち返した!打球はセカンド菱川の頭上を越えて
ライト前ヒーット!」
解説 「あ~・・・」
実況 「さあセカンドランナーは、三塁から・・・
回った、回った!
三塁コーチャーの指示にそのままサードからホームへと突進!
送球がライトから返ってくるー!
タイミングは~・・・?」
解説 「んーっと、微妙だが・・・。ちょっと送球それましたね」
主審 「セーフ!セーフ!」
実況 「あ~っと、セーフ!
判定はセーフ!
チーム○○、今日の試合これで5点目獲得!
スコアは0-5。
回はまだ5回の裏です」
解説 「う~ん・・・」
実況 「ん~・・・?
あ、ベンチからベニー投手コーチが出てきます。
これはどうやらここでピッチャー・・・」
解説 「交代ですね」
実況 「あ~、そして高畑監督、ピッチャーの交代を告げます。
××ナインの内野陣も皆、マウンド上の窪の周りへと集まってきました。
ピッチャーの窪は非常に悔しそう」
解説 「まあ今日は残念なピッチングでしたね。
また次、頑張ってもらいましょう」
実況 「おや?またセカンドの菱川がピッチャーの窪に向かって
何やら声をかけているようですが・・・」
★
菱川 「・・・・・」
窪 「ん?何だよお前。また何かあるのか?」
菱川 「交代っスね」
窪 「だー・・・ッ!!!」