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1-1

 一


 男は吠えた。

 理性がとび、魔力の虜にされたその男は、その体を膨らませる。体が服を突き破ると、その肉体からは毛がはえており、指からは異形な爪がとびだし、口からは、人間には決して生えないであろうサイズの牙が、口に入りきらず、一切の容赦なく周りを威圧していた。


「こちらdeep1、全隊員に次ぐ、目標は魔神化した! 繰り返す、目標は魔神化した! ポイントR-5に増援を請う!」


 森の中でそう繰り返すローブをきた青年は指に光を纏わせ、指を耳に当てると基本的な魔法である、”テレパシー”を使い、そう味方に通達した。ローブには大きく1円の中に1という数字と手の掲げられたエンブレムと第一特自科と書かれていた。

 青年は”テレパシー”をきると、辺りを見渡す。辺りには同じようなローブをきた人が続々と集まってきており。それぞれの獲物を手に、威勢良く襲いかかる。


「おい! あわせてくれ!」

「いつでもどうぞっ!」

誰かがオリジナルエンチャントである炎熱魔法を放てば、敵の動きを封じようと、また別の誰かが拘束魔法を飛ばす、人狼に向かって高速跳んでいく、紫のロープのようなそれは、人狼の両足に絡みつき、食い込み、縛りつけ、その足から自由を奪った。人狼は足をもつれさせながら、勢いよく転び、抜け出そうと必死にもがくも人狼に、先に放たれた炎熱魔法が炸裂し、粉塵が巻き上がる。他の魔人が放った魔法もヒットし、ついには粉塵で人狼が見えなくなる。人狼の悲鳴が響きわたる。


「やったか……?」

「油断するなバカ!」

「全員警戒態勢を維持しろ! いつでも放てるように構えておけ!」

 いける、先ほどのテレパシーを使った青年は勝利を確信し、身を隠し、味方に煽りをいれようと、再び”テレパシー”で味方に連絡をいれる。再度味方に視線を向けると青年に向かって何かが飛んできて、為す術もなしに青年は気絶してしまった。


 青年が発見された時、そこは辺り一面に血肉が散乱する、まさに地獄絵図だったそうだ。


 後ほど、青年は死体に埋れているところを発見された。彼は部隊が全滅してなお生き残った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 皮肉な奇跡から十数年、世界は、日本は変わった。「魔法が使えるようになった!」そう喜んでいた時代はあまりにもはやく終わりを告げた。魔力を過剰摂取した動物たちはやがて歪な形で進化を遂げ、人間に化けるものや、はたまた魔法で害をなすものさえ現れた。それらは、ライセンス持ちの部隊だけでは対処できず、日に日に被害が増していった。そこで政府は”次期主戦力”となりえる世代を現場に「実戦訓練」と称し早期投入し、鎮圧にあたらせた。これが後にライセンス持ちを早期育成するという建前にかわり、”魔人育成条例”が制定されたのであった。その条例は、要約すると「正式ライセンスでなくとも仮ライセンスを持てるレベルににまで成人前に育成する」条約であった。


 そうして目をつけられたのが、高校であった。”魔人育成条例”は既存の教科に”魔術”という教科を足すだけで教育の面では済んだが、実技だけはそうはいかなかった。「年端もいかぬ少年たちに危ないことはさせられん」と、一部の役員が”ごね”、大多数の重役がそれに賛成したため、専用の”実戦訓練をつませる場”を高校に作ることになった。

 その高校では、実戦訓練と称し、様々な処理をさせており、暴徒鎮圧から、暴走した魔法生物の討伐、対魔人戦のための模擬戦など、ほぼ正規の軍隊と同じレベルの”訓練”をこなしていた。



「だから、なんで俺がでていかなきゃならないんだって聞いてるんだよクソジジイ!」


「口が過ぎるぞ、言葉を慎め!」


 国立第一魔法学科高校の校長室で叫ぶ生徒が一人と、叱る教師が一人。それと、校長と書かれた立て札の置かれた机に座る教師が一人。その生徒は、青年と呼ぶには、その顔にはまだどこかあどけなさを残しており、ダボついた制服からは、青年というよりも大人びようとしたが、失敗してグれてしまった少年のような印象をうける。その少年は校長が座っている机の前でおもわず声を荒げてしまう、

「……改めてお聞きします、なんで俺がこの学校から出て行かなければいけないのですか?」

 改めて静かに聞き直す生徒は、不服そうな表情をかえずに聞き返す、それを見て、聞いていたはずの校長もまた、ニコニコとしている。

「なぁに、簡単な話だよ」

 そう言ってさらにニコニコしだす校長に、得体の知れない何かを感じる青年。

「君の部隊が、君を残して全滅してしまったからだよ」

「今までだって何回か壊滅したりしてたじゃな……」

「壊滅と全滅ではわけが違うよ、言ってる意味、わかるでしょ?」

 校長にそう釘をさされ、ぐうの音もでなくなる青年。

「それに、君は今までまともな教育機関に属したことがないのだろう?」

「ちゃんと通ってましたよ!」

 やっと噛みつきどころができたといわんばかりに青年は噛みつく。

 ちゃんと君の経歴は把握してるよ、そう言って校長はパサリと書類を投げる。それを手にとり、中身を見る。それは青年の、時原漆についての簡単なレポートであった。

「君は国立第一魔法学科大学付属のエスカレーター式で上がってきているね」

 そういう校長の手元には、先ほどから自分が持っていたはずのレポートがあった。手には微かながらに、魔力の残滓が見られた。

 ……スられた、

「……むやみに自分の力量を晒すなって教えを作ったの、校長ですよね?」

「そうだね、けど私は、魔法を晒しても君に負けるほどは衰えていないよ。それにしても、校則を覚えていたり、自分に不利な話を逸らそうとするあたり、君は非常に優秀だ」

 だからこそ君は出ていくべきだ、校長はそう付け加えた。

「さて、うちの学校は魔人育成に関しては世界一だ、実際に”魔獣狩り”なんてご大層な二つ名までいただいてるしね……少し話がそれたね」

そこで一息つくと校長は、ジェスチャーを加えてまた話しだす、

「しかし、普通の教育校としては二流以下だ、そこで……」

 漆は相変わらずの表情で、校長の再度途切れた次の言葉を待つ。



「君には一般高校に通って、教養をつけてもらうよ。思う存分、一般のスクールライフを満喫したまえ!」ニコニコして校長はいい放った。



 __________________



 漆は緊張から、大きく深呼吸をした。当人は現在、編入先のクラスの前にいる。誰しも、知らぬ大勢の前に立つのは緊張することだろう。

 それは例え、人外と刃を交えたものであったとしても。

「____それでは転入生を紹介します、入ってきて」

 女性教師はそういい、漆は教室のドアを開ける、そのまま教卓の横まで歩き、今日から共に過ごすクラスメイトの方を向く、女性教師はそのまま紹介を促す。

「国立第一魔法学科高校特自科から来ました、時原漆といいます、使える魔法はプライマリーのみ。獲物は剣です」

 しばらく黙っていると一人の女生徒がひかえめに質問をする、

「えっと、オリジナルは? あとなんで刀じゃないの?」

「使えるのはプライマリーだけ。繰り返すが獲物は剣だけです」

 そうとだけ漆は告げると、クラスがざわめきはじめる。


「聞いたかよ、このご時世に剣だってよ」

「しかもプライマリーだけでしょ? 本当に第一の特自科からの生徒なのかしら」

「剣とか足引っ張るのが目に見えてんな、いらねいらね」


 今の世の中で剣と刀の性質上、前衛で刀を使わない奴はいない。それはある種特自を目指すもの達の常識であった。

その事実をしっかりと理解している漆は、そう嘆息し、女性教師、刑部美枝に終わりましたとつげ、指示を求める。

「そうですね……とりあえず所属を決めようか、どこか時原を欲しい小隊はありますか?」

 そう美枝は聞く、みな顔を見合わせるだけで何もいわない、漆は

(まぁ、そうだろうな)と内心溜息をついた。普通は中学校を卒業する時点で、授業で習う初期魔法ことプライマリーマジックは、義務教育過程で使えるように教育される。その過程でオリジナルエンチャントこと、個人魔法が使えるようになる。オリジナルエンチャントとはその名のとおり一人一人違い、発現タイミングや、能力には違いがでてくる無論、能力に被りがあったりするのだがたまに、オリジナルが使えないものもいる。なぜ発現できないのかは解明できていないが、共通する点として、プライマリーマジックの操作の繊細さや、魔分と、自分の魔力の発現効率などが他人より優れており、彼らはプライマリーマジシャンと呼ばれ、魔人とは別の意味の研究対象であった。しかしそれは、言いかえれば戦闘力が他の人より少ないということになり、仲間内でのいびりや、いじめなども起こっていた。その事実をしる漆としては、自分の闘い方や、考え方を理解してくれていない人など、逆にこちらから遠慮したかった。

「はい、はい! 時原君はうちのところがもらう!」

 漆原名乗りを上げた女子の方をむく、そこには艶のかかった長い黒髪を後ろに流して立ち上がっている女生徒がいた、すらりと通った鼻筋、全体的にスレンダーな体型と、かわいいというよりは綺麗なその女子は

「時原漆はうち、第10班がもらった!」

 机に右手をつき、左手で漆をしっかりと指差して宣言した少女は、その目は好奇心で満ちあふれていて、キラキラと輝いていた。

「第10班ですか、だったら安心です、人数も足りていないですしね、それでよろしいですか?」

 美枝はそう落弥に問う、落弥はどうとでもなれと思い、頷く。

「では、本日のホームルームはここまでとします。このあとの時間は、各々の班の会議の時間とします。ホールを借りてありますので、そちらに移動してください」

 そう美枝がいうと、生徒がぞろぞろと歩き出す、ホールの場所がわからない時原は、そのままどうするかと思案していると、不意に声をかけられる。

「やぁやぁ時原くん、私は第10班の班長、瑞原玲奈です」

 そういい、よろしくと手をさしだてしくる。時原は手を握り返す。

「さっそくだけど、他の班員は場所取りさせてるから、移動しようか」

 そう言って歩き出す彼女に、漆はついていった。


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