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棺の中

その昔 私達 吸血鬼の一族は 人間達の


手によって 滅ぼされた


ある者は 杭で体を貫かれて


ある者は 銀の弾で体を撃ち抜かれて


ある者は 火あぶりにされて


仲間達は 見る見る内に 滅んでいった





そして母も人間の手にかかり 命を落とした


私と父は命からがら 人間達から逃げ延びて


古ぼけた屋敷に 身を隠した


父は私の手を取り 屋敷の地下へと 降りると


私を棺の中に入れて言った


「父さんが 棺の周りに結界を張るから


お前は この中に隠れてるんだ」





幼かった私は 泣いて父を困らせた


「嫌だ 嫌だ 父上と離れるなら一緒に!」


「少しの間の辛抱だから 私が 人間達から


逃げ延びて 迎えに来るそれ迄の辛抱だから」


私は父の袖を両手で掴み 涙を流しながら


「絶対に約束だよ 絶対だよ!」


父はコクリと頷き 小指を出して言った


「ああ 絶対に約束だ!」


父と指切りを交わすと 私は 棺の中に入った





そして棺の蓋を閉めると 父は呪文を唱え始め


暫くして 棺の中の私に言った


「これで大丈夫だ 念の為に 私達一族しか


剥がせないお札も貼っておいたから」


「うん うん 有難う 父上」


私は棺の中で泣きながら 必死に答えた


「必ず 迎えに来るから それ迄の辛抱だ」


「分った 分ったよ 父上」





そして それが私の聞いた父上の


最後の言葉になった・・・






それから何日か過ぎたある日の事


人間達が突然 屋敷に押しかけてきて


父上の結界を破ろうと 躍起になり始めた


「吸血鬼を殺せ〜」


「悪魔には 制裁を!死を以って償え〜!」


私はそれを聞いて 恐ろしさのあまり


棺の中で ただ震えていた


父上 助けて! そう心で叫んだ





そして 次の日も また次の日も 人間達はやっ


て来て 父上の結界を破ろうと必死なのか


けたたましい物音が 時折聞こえてきた


その度 私は棺の中で ビクビクしていた


でも 大丈夫 父上の結界を人間なんかに


壊せるものか!


私は両手を握り合わせ 心で祈った





すると暫くして 物音がピタッと止んで


人間達の話し声が 微かに聞こえてきた


「この様子だと 棺から出て来る事も


出来ないんじゃないか?」


「それなら いいんだけどな〜」


「見ろよ 棺にもお札の様な物 貼ってるぞ」


「じゃあ外から開けない限り こいつは棺から


出てこれないって事か・・・」


「一旦村に帰って この事を村人達に話して


この屋敷には誰も近づかない様 伝えよう」


話が終わると 人間達は結界を破るのを


諦めて 屋敷から出て行った






私はホッと胸を撫で下ろし 棺の中で


再び深い眠りに 就いた


私には 来ないと分っている 父上の迎えを


ただ 棺の中で待つ事しか出来なかったから















































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