夏休み新聞6ページ
近くの川に来たのだが
「川を舐めるなよ馬鹿共が!」
祐希のこの一声により、俺らの間に緊張がはしった。しかし川での危険性なら十分承知だ。毎年多くの死者を出す。高校生も例外ではない。川を舐めている奴がこの中にいるとは到底思えない。
「川ではいろんな事件がおきる……今この瞬間にも、川上から大きな桃が流れてくるやもしれん!」
冗談か?いや、目がマジだ……もし仮に標準サイズの桃だとしても流れて来て、拾う奴いるか?さらに食べようと持ち帰る奴なんて……
「おーい!明ね、大っきい桃拾っちゃったよー今日のデザートに食べようよ!」
拾ったよりも見つけたが正しい。大きすぎて一人で持つのは難しそうだ。川で洗濯していたというおばあさんの偉大さが分かるな……
さあ、どうする?もう一度川にドボンするか、なんちゃら太郎の出生を見届けるか。
議論の結果4:2で見て見ぬふりをするに決定。ちなみに反対派は賢人と祐希だった。桃を川に流して数十m流れた時だった。強烈な光と共に小学生ほどの背丈をした少女がさっきまで桃が流されていたであろう場所に現れた。ちなみに桃は跡形もなく消え去り、少女は川の上に立っていた。当然この少女は人ではないのだろう。
「おい、貴様ら。何故再び流した……私がどんな思いで桃の中にいたと思っておる!」
そういって少女は俺たちの元へ歩みよって来た。だぼだぼの着物を身につけているため、裾が濡れている。
「おい、それぞれ名乗れ。私がいずれ神となった時、真っ先に天罰をくだしてやるからな!」
川を歩いた少女だ、嘘ではないだろう。俺たちはこのが神志願者が神にならない事を祈る事にした。
「……覚えたぞ!あいにく、今の私には大事な使命があるのだが、貴様らには絶対頼まんからな!」
そういって神志願者は俺らに背を向けた。そのまま数十分が経過し、俺らはその場から動かない神志願者をそっちのけて川遊びを堪能した……突然、神志願者はこちらを振り返り、俺らを涙目で睨みつけた。
「そこは呼び止めてどんな使命か聞くのが礼儀じゃろう!そんな事まで私に言わせるな!」
全くもって面倒臭い。
こいつは同じ事を何度話せば気が済むんだ……ダラダラと長い説明ご苦労。要約すると、名前は……長く覚え切れそうにないのでスー様でいいらしい。神は沢山いて、それぞれ役割があるらしい。神は凄い。スー様は神になりたい。こんなもん?お分かりの通り、内容が無に等しい。
「で?結局使命はなんやねん!」
賢人がついに痺れを切らした。俺もそろそろ限界。いきなり怒鳴られて涙目になるスー様には悪いけど今の行動は正しい。
「……私が…の大事な…を………た。」
「は?つまりテメーが全部悪いんだろーが!お前が尊敬してる神の杖?こっそり借りて下界に落とすって……馬鹿だろ!」
泣き崩れるスー様は明に任そう、それより
「部長命令、暇な奴ら集合!」
さっきの素晴らしい神の話を聞いて思ったんだが、こっそり杖借りるとかできると思う?最上クラスの神は全人口の名前、性別、年齢、職業まで覚えてるらしい。そんな奴から杖をこっそり取るなんて、まず無理だろう。で、下界に落とした事も知らないはずが無いと思うんだが……だって神だもん!そこから考えた俺の結論は
「スー様って、神に試されてるんじゃない?というわけで手伝おうと思う」
凛だけ首を縦に振った
「でも、スー様に媚を売ろうなんて……まあ私はいいけど……祐希や賢人はそういうの嫌いでしょ?」
そんな事は百も承知だ、俺もこの4ヶ月の間この馬鹿どもに振り回されてきたからな。……上手く乗せてやる!
「いや、圭介も嫌いなはずや」
まあ、俺もあまり媚びるのは好きではないが人を助けるのは好きだと自覚している。まあこの場合人じゃ無いけど……
「この前の噂覚えてるか?そう!1年の可愛い子の奴」
さあ、皆閃いてくれよ!
「あ、あの……私は知らないんですけど」
あ、相澤の存在忘れてた!そういえば一緒に来たな!でも旅行中始めて見たような気が……それに、噂の話をしていた時は相澤はまだ入部してなかったか。そんな事は置いといて……
「その噂の人物を神様に教えてもらう!全人口覚えてるならそれが1番確実だ!そして神様に近づくにはスー様を助けるのが手っ取り早い」
どうやら皆納得してくれたようだ。しかし、杖に心当たりが無い。スー様から詳しく聞き出さねば。