一学期後半新聞2ページ
「速報っ、茶道部の木村・まいさんが次のカツアゲ対象やて。どうします、部長?」
「いや、絶対許さないけど。賢人、そんな情報どうやって仕入れたんだ……」
「ああ、学校中に監視カメラと盗聴器を仕掛けといたで。相変わらずナイスプレイやろ、称えてくれてもいいで?」
……勝手に付けてよかったのか?
「よしっ、作戦は決まったな!」
……大丈夫か、この作戦?
「取り敢えず木村さんに会おうよー、話はそこですればいいしねー」
俺がこの学校に来て二つ目のミス……
「え、一卵双生児?」
「ええ、木村・まいは妹で私は木村・ゆいです。それよりも、今の話は本当なんですか?」
「いや、まあ計画されているって事は多分確かなんで……」
「じゃあ、まいに会おうとした本当の目的を教えてください。話して終わりじゃないんでしょ?」
「どうするー、圭ちゃん?明は話していいと思うよー」
うーん……たっぷり悩んだ挙句
「じゃあ、一緒に数学準備室に。そこで話します」
「へー、情報を流して欲しいんだ」
「うん、なんとかまいさんからカツアゲされる場所を聞き出して、はりこもうかなと……ついでに、ちょっと作戦に参加してもらう」
「じゃあ、私が聞き出すわ。その代わり妹の代わりに私が作戦に参加するから」
「いや……それは」
「圭介、奇跡的に睡眠薬があんねんけど、どうする」
「うん、奇跡だな賢人……そういう事にしておくぞ?」
その後、ゆいの活躍によりお金を渡す日時と場所が判明した。学校ではなく、路地裏で渡す事になったそう。さて、後は……
「圭ちゃん、どーだったー?」
「駄目だった……お客様以外、屋上には入れないって」
「ホテル相澤グランドホテルってひどいな」
「あっ、あの……」
「しょうがないよ、祐希。お子様は落ちたら危ないもの」
「凛、お前の方が小さいだろ!」
「私は精神面の話をしてたのよ?お子様?」
「もうやめとけ!」
その時、俺の背中が何かに触れた。いや、触れたのではなく突き飛ばした。
「きゃっ!?」
「おっと、ごめん……?」
……いつから後ろにいた?というかそもそも誰だ?長いロングヘアーに赤縁メガネ、俺の教室には新聞部のメンバーを除いてほとんど他クラスの人は来ない……なら、同じクラスメイトか?悪いけど消去法だ!
この時俺の頭はフル回転し、記憶の片隅にあった記憶をたぐり寄せた……この間わずか0.5秒
「ごめん、相澤さん?」
「え?あ……はい」
何故そんなに驚く?
「すいませんでした」
「いやいや、ぶつかったのは俺の方だから」
「違います。私のホテルがご迷惑をおかけしたみたいで……本当にすいません」
「私の?ホテル相澤グランドホテル」
「おおっ!これ来たやろ圭介!」
「これで屋上いけるんじゃねー?」
まさか、こんな偶然が……
「作戦会議やな!」
「じゃあ皆、放課後に数学準備室で」
「とりあえず、昨日圭介がホテルの屋上が使えるか聞きに行ってる間に俺らで細かい作戦たてといたんやけど……突っ込まずに聞けよ?」
「内容によるな」
「まず、現場へ向かう途中のまいさん(妹の方)を睡眠薬で眠らせて、拉致します。次に……」
「待って、拉致って……ゆいさん(姉の方)が朝食に仕込むとかじゃ駄目なの?なんか通報とかされそうで怖いんだけど」
「いやー、明達インパクト重視で考えたからねー」
「私は止めたから……」
ごめん凛、大変だったんだな……
「えー、次に俺らがマンホールの下にスタンバリます」
「いや、やめよう?どうせカツアゲした瞬間に『そこまでだ!』的な感じで出てくる気だろ?却下、って?そんなのばっかりか!?」
「いやいや、他にもあっと驚くような仕掛けが……」
「はい、決め直し」
「森先生?どうなさったんです?」
「ああ、水野先生……カツアゲの件、どうなってます?」
「そんなの知らないふりするに決まってるじゃないですか。それが学校側の方針なんですから……下手に逆らわない方がいいですよ」
「そうか……」