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包帯少女  作者: 零歌
2/2

前進一歩

校内が騒がしくなる、昼食時間。


衣替えも終わり、すっかり寒くなったこの時期でも相変わらず屋上へ来る人はいる。


学校の屋上といえば告白場所だったり、七不思議だったり、自殺の話だったり。

怖いものから明るいものまで取り揃えた場所。


残念ながらこの屋上には恋愛な話もホラーは話もない。


今日も乾いた空気と、生徒たちの声であふれるのみ。

たまに吹くひどい風もなく、数人の生徒は屋上で昼食を過ごしている。



まぁ、私もその一人だったりするんだけど。




「ねぇねぇ、そういえばさ」


一緒にお弁当を囲んでいた友人がふと話し出す

食べてる最中でも話をするのは、もう学生では普通になったのかな。



「凛音ってこないだの告白どーしたの?」



自販機から購入した「うまい!お茶」を飲んでいた私に友人は聞く。


「断った」


「えー、どして? 顔だけはいいやつだったじゃん?」


「それって褒めてないよ」


「だってさ、

あの人結構暗かったしー。正直、よく分からなかった」


「それもう付き合う要素ないね」


「中ニ病同士仲良くすればいいじゃん!」


包帯と言動だけで中ニと決め付けないで下さい、愛さん

あいつは邪気眼系のれっきとした中2でした。


「黙れ腐女子」


「ちょっ、大声で言わないでぇー!」


弁当のおかずをぱくつき、内心笑った。

まぁ屋上には自分たち以外誰もいないんだけど。


愛はいわゆる隠れ腐女子というかオタクというやつ。

私に友達以上の感情を抱いてそうで怖い。

それでも少し一線をおいてしまう自分にとってはいい友達。


「中二の人が告白ってゆうのも珍しいというか、話で聞く以上に末期じゃないんだねぇ」


「末期がなんなのかはあえて問わないでおくよ」


「ねーぇ? やっぱり凛音って僕っ子が似合いそうだよね」


「僕っ子とかやだよ。キャラ作ってるし」


「頑張れっ、凛音ならできる!」



何故かガッツポーズで熱弁する愛。

なんとも見てて飽きないなぁ、とか考えながら残りの弁当を食べていく。



偶然薦められて一目ぼれしたキャラクターの弁当箱。

脇にIpotには薦められて気に入った音楽。


別に不満はないし、今まで気づかないものをすすめられて知っただけ。

でも気づけばそれの寄せ集めのような持ち物。


改めてみるとそう黄昏。


自分に自身に呆れ顔。


ため息を一つついて、弁当箱のふたを閉じる。

少し汚いかもしれない屋上に寝っころがった。



「また自己嫌悪?」


「いや、ただ眠いだけ」


寝心地はあまりいいものじゃない。

でもここに毛布を敷いて、枕を置けばきっとすごい開放感なんだろうな。


たまに思うこと。

でも実践したことはまだない。


多分これからもすることはないと思う。


ごつごつしてて痛いからそろそろ起きようと上半身だけ持ち上げると、視界の端を何かが掠めた。


何かのゴミかな、と思いその元を探す。



それは真っ黒だった。


屋上の鉄柵に、まるで重力がないかのように立つ真っ黒い女の子。


しばらくそこに視線が釘付けになる。

数秒が現実的には数分たったような気分さえ起こす。

意識が一瞬途切れたようなその感触のあと、慌てて我に返る。


あぁ、なんだ。


いわゆる、ユーレイってやつですか。


ちらりと横目で愛をみる。

数秒硬直していたにも関わらず、愛は気にせずにあと残り少しのパンをかじっていた。

少しだけ怪訝そうにこちらに視線をやる。


気づいていないのか、見えないのか。


まぁどっちでもいいけど、初めてみるわけじゃないし。

少し驚いたけど、現実的じゃないようで以外にあることだし。


害さえなければいいんじゃないかな。



すっ。



視界の端の黒い少女がそのまま落下した。


触れることもできないし、何を伝えたいのかもわからない。

無論何もすることはできない。


それにもう死んでるし、多分。


大丈夫だろうと思う。

そうゆうことにしておこう。うん。



今は包帯を巻いてない左手が少し寒く感じた。


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