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宰相閣下は『壁の草』をご所望です!~転生モブ令嬢は推しの溺愛に気付かない~  作者: 真波潜


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031 王妃の勧告

昨日、うっかり投稿を忘れて一日空いてしまいました。申し訳ありません。

「単刀直入に申し上げるわ。リベリオスと別れなさい」


 王妃の私的な応接間に招かれたメルルは、正面い座ったロゼリアの厳しい視線と共に告げられた内容に目を丸くした。

 その話は一昨日終わったはずだ。当事者のリベリオスと、レイラードも含めた四人の席で。


「ええと……」

「任務の間は仕方ないわ。でも今日のあなたたち、とても演技に見えないもの。いいこと? 任務が終わったらすぐさま別れるのよ」

「と、仰られましても……私の一存では……お答えするのが難しく……」


 困惑を顔にも声にもいっぱいにしたメルルの様子に、ロゼリアの眉間に深い皺が刻まれる。

 公的な場では反対しきれなかったからこそ、私的な場であらためてメルル自身に話を通そうとしているのは分かるが、その理由がさっぱりわからない。


 いくら厳しい顔をされても、契約相手のリベリオスがいないところで好きに言えない上、王妃にできない約束も言えるわけもなく困り果てていた。


(こんな話をわざわざ人払いをして、私だけに言うってことは……はっ! もしかして、分かっちゃったかも!?)

『名探偵メルルが見つけた真実とは!?』


 私的に婚約解消を迫る理由といえば、メルルには一つしか思い浮かばなかった。

 数多の少女漫画でもそうだった。放課後に校舎裏へ呼び出されるのは色恋がらみと相場が決まっている。


「もしかして……王妃様は、リベリオス様のことが……お好き、なのでしょうか?」

「そんなわけないでしょう!」

『迷探偵だったね、メルル』

(うーん、じゃあなんでだろ……聞き出せるかな……)

「で、でしたら、なぜこのような話を……? そもそもの依頼主であるリベリオス様に仰られる方が話はすんなり済むかと思うのですが……」

「……っそれも言えるわけないじゃない! いいこと、一度しか言わないから良く聞きなさい」


 ロゼリアは咳払いをひとつすると、姿勢を正してこれまでで一番真摯な表情を浮かべた。

 メルルも膝上にのせた手を緊張から握り込み、彼女の言葉を待つ。


「……私、リベリオスのお相手はレイしかいないと思っているの」

「はい?」

「レイの意地悪で悪戯な言動に、ため息を吐きながらも付き合ってしまうリベリオス。その関係が、この世で最も美しいと思っているの。だから、二人の関係を邪魔しないで欲しいのよ」

「……」

(お……お……)

『お?』

(お腐れ様だーー!!)


 まさかの元悪役令嬢の隠し設定(秘かな趣味)にメルルの受けた衝撃はすさまじいものがあった。

 一国の王妃が幼馴染の筆頭公爵の婚約者に対して、推しカプの片割れを奪わないでくれ、と言うとは思わなかったのだ。


 なぜこんな展開になったのか。

 二十分ほど前に庭園を離れた時には、こんな話を聞くことになるとは思いもしなかった。


   ◇◇◇

「リベリオス様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」

「なんだろうか」


 ガーデンパーティーの会場を抜けて王城の廊下に入ったところで、メルルはようやく正気に戻りリベリオスに尋ねた。

 正気は突然後ろから腰を抱かれたあたりから失っていたのだが、エスコートされている間にだんだんと正気が戻ってきた。


(ファルちゃん、音が他に漏れないようにおねがい)

『任せてー!』


 周囲の人の気配を探って一応確認はするが、ここは王城の中である。誰に聞かれているかわからないので、ファリーダに会話内容を隠してくれるよう頼んでおく。

 リベリオスもメルルの表情を見て、さっと周囲を警戒したようだ。

 その抜け目のなさや、さりげなさにメルルの正気が再度どこかに出かけそうになった。ファリーダの尻尾が素早くメルルの頬を叩いたので正気は保たれた。


「……王妃様とは一昨日お会いしたかと思うのですが、どういったご用事なのでしょうか?」


 ロゼリアとは先日ちゃんと話したはずだ。今日はレイラードとロゼリアに対してほぼ初対面のフリをしたが、それは予定調和である。

 なぜ呼ばれたのか、その理由がさっぱり分からない。


「あぁ……王妃は、本当に貴女に興味があるらしいのだ。私的な話がしてみたいとのことだから、少しだけ付き合ってやって欲しい」

「ふ、普通にそのままのご用事だったんですね。……夜会の日には、ご心配してくださったのにお見苦しいところをお見せしてしまっていたので、謝りたいと思っていました。機会を頂けて嬉しいです」


 どのようにお見苦しかったかといえば、心配をしてくれるろゼリア他二名に対し『魔力無し令嬢とグリフォルナード王国の結婚について』の演説をかましたのだ。


「そういえば、王妃は随分と貴女を心配していたな。私が貴女を危険な目にただ晒すわけないと知っているはずだが……」


 宰相として国民の一人であり大事な部下(コマ)のメルルを無暗に危険な目に合わせないという意味だろう。メルルもそこは同意するが、ロゼリアだからこそ思う事があったのだろうとメルルは思っている。


「情勢が情勢ですから、同じ女性の王妃様には私の行いがとても無謀に見えたのだと思います。もちろんリベリオス様が(部下として)守ってくださると知っているので、恐ろしくはないですよ」

「メルル嬢……もちろん、何度でも約束しよう。私が君を守る」


 足を止めたリベリオスがメルルの頬にそっと手を添え、親指で目元を撫でながら切なそうに告げる。

 一瞬で頬に熱が上るのを感じたが、この掌を振り払うことも目を背けることもできずに、驚くままに丸くなった目をリベリオスに向けてメルルは固まってしまった。


(ま、毎日こんな供給いいんですか!? この夢小説の作者を呼んでくれ! シェフ! シェフー!)

『もし作者がいるとしたらヒロインはこのシーンでそんなこと考えない! ってキレたと思う』

(それは確かにそうだわ……はぁー……すごいかっこいい、私の目が録画機能備えてないのなんでかな……)

『いいから早くお返事してあげて!』

(あ、そうだった、コマンドを選ぶまでこのままずっとリベリオスの顔を眺めていられると思って返事を忘れてた)


 メルルは一度目を伏せてから口元に笑みを浮かべた。


「……あまりに安心してしまって、言葉がうまく出ません」

「あぁ、……ただ私の気持ちを受け取ってくれれば、それでいい」

「ありがとうございます、リベリオス様」

「…………行こうか」

「はい」


 リベリオスの甘い言葉にメルルも蕩けそうな笑みを浮かべて顔を見合わせる。

 彼女の笑みに魅入られたように目を瞠り、この場所がどこかを思い出したリベリオスはさっと手を離し目を逸らして前を向いた。

 その後はエスコートに従ってまっすぐ王妃の部屋に向かい、部屋の入口でリベリオスとは別れることになった。


「私は少し仕事を片付けてくるから。後で迎えに来よう」

「ありがとうございます、また後程」


 彼が仕事に向かったところで、扉の脇に控えていた侍女の取次で、メルルは王妃の応接間へと入った。


 涼やかな薄青と金、白で揃えられた調度品。飾ら得る花も部屋の雰囲気を壊さないよう、白や青の花がささやかに彩りを添えている。

 白く座り心地の良さそうなソファの片方に姿勢よく座っていた王妃は、メルルを見て黙って目の前のソファを勧めた。

 礼を取ってからメルルも示された席に背筋を伸ばして座る。すぐに目の前にお茶が用意され、用意を整えた侍女はそのまま部屋を出て行った。


 そして、話は冒頭に戻るのである。


   ◇◇◇


(まさかお腐れ様だったとは……びっくりした……この世界にもいたんだ……いや、前世でも既婚者でお腐れ様は一般的だったしいるか。そりゃいるわ。でも……まさかの旦那攻め、幼馴染受け……そうか……しかも国王と宰相……グリフォルナード王国イチハイソカプじゃん……)

『えっ、なんか腐ってる!? なに!? 臭いしないよ!?』

(違うんだ、ファルちゃん。腐っているというのは食べ物の話じゃなんだ。そして私、今レイラード攻めリベリオス受けって勝手に受け取ったけど、ロゼリアはレイリベかリベレイか語ってない……くっ、まさか今世でも相手の左右に気を遣う日がくるとは……!)


 なお、逆カプだと勘違いしていた場合、後に発覚した時に人間関係に亀裂が入る可能性がある。

 推しカプとはすなわち宗教だ。左右固定無しなのか左右固定なのかで話が変わってくる。ここからは、細心の注意を払って言葉を選ばねばならない。


 メルルは緊張のあまり生唾を飲み込んだ。


(……負けられない戦いが始まっちゃった……)

『わかった、腐ったの食べちゃだめだからね』

(あ、うん、気を付けるね……)


 あまり食いつくのも違うだろう。メルルは腐は読み専だったうえ、全ては自分の夢妄想のための素材として嗜んでいたにすぎないのだ。

 やくしおの腐の中ではレイリベは覇権でリベレイもそこそこ多かった。どちらの話題でも対応できるように、記憶を混在させないよう思い出す時間を稼ぐために口を開く。


「しかし国王陛下は王妃様の伴侶でいらっしゃるのでは……?」

「王族の結婚など形だけです。常に一緒にいるわけでもなく、むしろ相手の外面を見る時間が8割でしてよ。そんなの、ほぼほぼ他人ではなくて?」

(それはレイラードがかわいそうな気が……一昨日の様子だとかなりべた惚れみたいだったし……)

『メルルがそれ言う資格はないよ』

(なぜか強めに否定された……)


 ロゼリアの視線は未だ厳しいが、メルルが彼女の妄言(推しカプ)を頭から否定をしなかったためか、説得できると踏んだのか、再度口を開く。


「レイが心から素直になれる相手はリベリオスだけなのよ! 私じゃないの、彼の心を真に慮り助ける存在は! ……だからお願い、レイにリベリオスを返して!」

(それはあながち間違いじゃなさそうで困ったな)

『レイラードとリベリオスが親友だから?』

(そうなんだよね。レイリベに限らずだけど、前世でも親友、幼馴染、義理の兄弟あたりは掛け合わせられやすい関係性だったから……)

『ごめんメルル語はわかんない』

(よーし後でちゃんと説明するね)

『遠慮したい』


 メルルはわずかに視線を落とし、頭をフル回転させた。

 権力を持った腐女子というのはつまり、石油王になってしまった腐女子である。真向から否定したり拒絶すれば、余計に頑なにさせてしまうだろう。

 ならば、別の方法で彼女に『さっさと別れろ』を緩和してもらう必要がある。おそらく任務はまだまだ続くからだ。


「……よろしいの、ですか?」

「……どういう意味?」


 思考を終えたメルルは意を決し、ロゼリアへとまっすぐ視線を向けた。


面白い、続きが気になる、と思ってくださったらブクマ、星、リアクションなどで応援してくださるととっても嬉しいです!

また、いただいた感想にも楽しく目を通しております。本当にありがとうございます。

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