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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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街の門で――再訪の甘味

 昼下がりの街道を、乾いた風が走り抜けていった。

 さらさらと土を巻き上げ、地平線の向こうまで続く平原を揺らしていく。


 街ヴェルンの門の前には、長い列ができていた。

 荷馬車の軋む音、馬の鼻息、人々の声。油と香辛料の匂いが空気に混ざり、森とはまったく違う、人の暮らしの熱が漂っている。


「やっぱり、簡単には入れないんだな」


 ナオキの呟きに、リヴは耳を伏せ気味にして頷いた。


「身分証までは要らないけど……私たちは少し目立つと思う」


 ナオキは自分の黒髪を指に絡め、苦笑を漏らす。

 列の後ろから、旅人たちの視線が静かに、しかし確かに向けられていた。


 ハーフエルフの少女と、東方の異人。

 この地方では、どちらも珍しい。


 順番が回ってくると、思っていたとおり、門番が眉を寄せた。


「おまえさん、どこの生まれだ。見かけない顔だぞ。

 それに、そっちの娘は……混じりか?」


「森の出です」

 リヴが一歩前に出て答えた。

「薬草師で、ヴァルター商会との取引の約束があります」


 ナオキもすぐに続く。


「俺は助手です。試作品を納めに来ました」


 門番の表情が、警戒と不審のあいだで揺れた。


「ヴァルター商会だと? あの大商会の名を出すとはな……証拠はあるのか」


 ナオキはそっとポケットから小袋を取り出した。

 掌の上に置いた琥珀色の飴玉が、昼の光を受けて淡く輝く。


「これを。ヴァルターさんに評価してもらった試作品です。よかったら、どうぞ」


 門番は一度リヴの顔を見、それからナオキの手元を見つめ、慎重に飴を口に含んだ。


 次の瞬間、目を見開いた。


「……甘い……。なんだこれ、こんな菓子は初めてだ」


「でしょう。今はヴァルター商会にしか卸してないので、ここで味わえるのは珍しいですよ」


 門番は素直に頷いた。


「なるほど……確かに、あの商会の匂いがする。通っていい。中で確認してもらえ」


「ありがとうございます」


 二人が門をくぐると、空気の色が変わった。

 温かい風が吹き抜け、焼き立てのパンと香辛料の香りが鼻先をくすぐる。


 ナオキは思わず立ち止まり、街の景色を見渡した。

 石畳が整然と続き、赤い屋根が陽を受けている。

 商人たちが声を張り、子どもが走り、どこかの家から鍋の匂いがした。


「……本当に、街なんだな」


「ようこそ、ヴェルンへ」

 リヴは少し誇らしげに笑う。


 門の先には、巨大な市が広がっていた。

 通りの両側には屋台がぎっしりと並び、煙と香りと声が混ざり合って渦を巻いている。


 干し肉が吊るされ、燻製の煙が白く揺れ、塩漬け肉の樽は強烈な香りを放っていた。

 魚屋には干物がずらりと並び、山羊乳のチーズは酸味を帯びた香りで道行く人の足を止める。


 黒パンと硬焼きパンが山と積まれ、子どもたちが籠を抱えて走り抜けていく。

 犬が骨をくわえて横切り、どこかで商人同士の値切りが始まった。


「……活気がすごいな」


「音も匂いも、森の暮らしとは反対だから」


 ナオキは周囲を見回しながら、軽く口元を押さえた。


「空気の半分が食べ物でできてるみたいだ」


「慣れたらお腹が鳴るよ。あっち、薬草市」


 リヴが示した先には、束ねられたハーブが並ぶ露店があった。

 乾いたセージにタイム、見慣れない紫の花。

 瓶に詰められた淡く光る粉末は、魔力触媒だと札に書かれている。


「……魔法素材とスパイスの境界が曖昧だな」


「使う人しだいで薬にも毒にもなる。街では、その境目も商売になるの」


 リヴの言葉には、少しだけ大人びた響きがあった。

 市場のざわめきは、まるで呼吸をする生き物のようだ。


 鉄鍋を叩く音、果実を搾る水音、笛の短い旋律。

 遠くの酒場から、かすれた歌声が流れてくる。


「……本当に、文明の濃さが違う」

 ナオキは感嘆とも戸惑いともつかない声で呟いた。


「森が恋しくなった?」


「いや。見ておきたいものが増えただけだよ」


「そういうところ、やっぱりナオキらしい」


 リヴはくすっと笑い、通りの先を指差した。

 白い看板が見える。秤と麦穂の紋章。

 ヴァルター商会の支店だ。


「ほら、あそこ」


「ほんとだ。前に来たときは、扉を叩く手が震えてたな」


「今日は成果を持ってきた。胸張って行こう」


「うん」


 二人は人の波を抜け、商会の前で足を止めた。

 石造りの壁に陽が反射し、扉の金具が鈍く光っている。


 リヴは深呼吸をひとつして、ナオキを見上げた。


「ねえ、さっきの門番の顔、すごく面白かった」


「舌が早かったね。言葉より説得力があったみたいだ」


「あなた、案外商人の素質あるのかも」


 リヴが笑い、二人は扉を押した。

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