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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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出発前の確認と贈り物

 朝の光が森を透かして差し込み、露をまとった緑が静かに輝いていた。

 冷たい空気の奥に、これから動き出す一日の気配が滲んでいる。

 ナオキは卓上に広げた荷物をひとつずつ確かめ、袋の口を整えた。


「まずは消耗品から。圧縮タオル二十……水をかけると広がって、お湯ならふんわりする」


「こんなに小さいの? 雲の赤ちゃんみたい」


 リヴが指先でつまみ、目を輝かせる。


「次。折りたたみバケツ。満水で十リットル。縁に補強が入ってるから案外丈夫」


「ぱかって開くの気持ちいい……これ好き」


「火種と固形燃料。湿気に弱いから、缶のまま持っていく」


「缶、耳ついてる。かわいいね」


 静かな森に、二人の声だけが柔らかく響いた。

 ナオキが一息ついたとき、リヴは机の端に置いてあった小袋を拾い上げた。


「これ、光ってる……なにが入ってるの?」


「飴。砂糖を煮詰めて固めたおやつだよ。

 ただ、純粋な結晶は甘さが強すぎて価値まで跳ね上がるから……食べ物としてちょうどいいところに調整してる」


 リヴは小さく頷き、そっと一粒を口に含んだ。

 瞬間、瞳の奥がぱっと明るくなる。


「……っ、なにこれ……! こんな甘さ、この世界にないよ……!」


 頬がゆるみ、肩の力がふっと抜ける。

 その顔があまりにも素直で、ナオキは思わず笑ってしまった。


「保存も利くし、包み方を工夫すれば街でも売れる」


「こんなの、絶対に騒ぎになるよ」


「……だろうな」


 ナオキは小さく息を吐き、手元のメモに目を落とす。


「問題はそこなんだ。地球産のものを軽く渡したら、すぐに噂が広がる。

 “どこの錬金師だ”“異国の秘具だ”って……場合によっては拘束される」


「ナオキさ、そういう人たちの前でごまかすの苦手だよね」


「だから慎重に選ぶ。相手を間違えなければいい」


 彼は紙の端を指で押さえながら言った。


「ヴァルターに会おう。街で商会を仕切ってる人だ。

 前に君が話してくれた“あの人”で合ってるよね?」


「うん。少しだけ話したことがある。

 追われてた時に助けてくれた人で……角砂糖と清潔の話をしたら、“その知恵は人を救う”って言って何も取らなかった」


「金の匂いより、それを使う人のことを見られる人なんだな」


「うん。欲だけじゃ動かない人。怖い時でも……安心させてくれる人だった」


 ナオキはゆっくり頷き、真剣な表情でメモを閉じた。


「なら、信用できる。まずは一歩、預けてみてもいいかもしれない」


「きっと大丈夫。あの人なら、悪い方に持っていかない」


 リヴはそう言って笑った。その笑顔は、森の朝霧みたいに柔らかかった。


 二人はリュックを中心に置いて、持ち出す物の最終確認を始めた。

 多すぎても困るし、軽くなりすぎても頼りない。

 その絶妙な線を二人で探った。


「街に持っていく地球産は……飴、乾パン、乾燥果実。包材サンプル、圧縮タオルは少しだけ。バケツは一つ。

 浄水器は……まあ、保険として内緒」


「了解!」


 リヴは意気込んで拳を握った。


「甘いものは私の担当だね」


「頼もしいよ、甘味部長」


 二人で笑い合うと、ナオキは箱の底に残っていた薄紙の包みをそっと取り出した。

 触れるだけで中身がやわらかく動いた。


「……最後に、もうひとつだけ」


 薄紙を開くと、淡い桜色の布がふわりと広がった。

 白いレースが細く道を描き、裾は軽く揺れる仕立てになっている。


 リヴは驚いたように息を呑んだ。


「……な、なにこれ……」


「森の緑にも合うと思って。君に似合うんじゃないかな」


「……似合うかなぁ……」


 言葉とは裏腹に、頬がすでに赤い。

 小屋の奥でそっと着替える気配がし、それから――。


「……ナオキ」


 声が少し震えていた。

 くるりと振り返ったリヴは、桜色のワンピースの裾をそっとつまんで見せた。


 朝の光をすくい上げるようにレースが揺れ、森の空気が一瞬だけ柔らかく変わった。


「ど、どう……?」


 ナオキは言葉が出てこなかった。

 心臓の鼓動だけがやけに大きく響く。


「……見惚れてた」


 言ってから、自分で耳を赤くする。

 リヴは驚き、小さく笑い、そして幸せそうに目を伏せた。


「ありがとう。恥ずかしいけど……すごく嬉しい」


 その声が甘くて、小屋の中を優しく跳ねた。


「裾、歩幅に合わせて前を少し短くしてある。回ると――」


「こう?」


 リヴが軽く回ると、レースが白い円を描き、一瞬だけ光を集めた。


「ワンピースの扱いは?」


「最重要。士気向上装備だから……携行で」


「うん、任された!」


 リヴが胸を張り、ワンピースの裾がふわりと揺れる。

 その姿は、森の緑を少しだけ甘く染めていた。


「ねえ」


 背中越しに、やわらかい声が届いた。


「“プレゼント”……ありがとう。心もあったかくなった」


 ナオキは小さく頷き、肩にかかった紐を整えた。


 二人は並んで外へ出る。

 桜色の裾が朝の光をすくい、それを森へ返す。

 旅立ちの朝に、これ以上ない色だった。

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