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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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理の外側、森の向こうに見えたもの

 朝の光が差し込むよりも早く、リヴは目を覚ました。

 胸の奥がどくどくと脈打っていて、息がうまく整わない。


 見ていた夢の残像が、まだ瞼の裏に焼きついていた。


 ――森が沈んでいく夢だった。

 木々が音もなく折れ、空がゆっくりと裏返る。

 何かが壊れる音ではなく、「ほどけていく音」。


 その中心で、誰かが静かに笑っていた気がする。

 でも、その顔は思い出せなかった。


 リヴは汗を拭いながら、毛布をかぶって小さく息を吐く。

「……夢、だよね」


 小鳥の声が聞こえる。

 ウロの外では、朝の風がやさしく木々を撫でていた。

 それでも、胸のざわめきだけは消えなかった。


 ---


 少しして、ナオキも起きてきた。

 リヴの顔を見て、首をかしげる。


「おはよう。なんか寝不足顔だな」


「うん……ちょっと、怖い夢を見たの」


「どんな夢?」


 リヴはしばらく考えてから、ぽつりと呟いた。

「森が、崩れていく夢。

 音も光も、ぜんぶ静かに消えていくの」


「……なるほど。派手な悪夢より、そういう夢の方が怖いな」


「ね。目が覚めても、まだ“落ちてる”気がする」


 ナオキは椅子に腰かけ、湯を沸かしながら考え込んだ。

「理術的な意味で言えば、“崩れる”ってのは、

 エネルギーの偏りとか、バランスの崩壊を示す言葉なんだけど……」


「うん。でも、夢の中では違った。

 なんていうか、“世界が眠ろうとしてる”感じ」


「眠る?」


「そう。理が、動くのをやめてるような」


 ナオキは黙ってカップにお湯を注いだ。

 湯気が立ち上り、朝の光がそれを透かす。

 その白い揺らめきが、ほんの一瞬――リヴには森の霧に見えた。


 ---


「……もしかして、疲れてるんじゃないか?」


 ナオキが笑いながら言う。

 それは気遣いの声であり、現実的な人間としての反応でもあった。


「昨日の探索も長かったしな。

 魔法の使用は、知らないうちに精神エネルギーを削る」


「うん……そうかもね」


 リヴは少しだけ笑い返す。

 でも、胸の奥では――夢の中で見た“静かな崩壊”が、まだ鳴り止まない。


「ねぇナオキ。もし、世界の理がゆっくり壊れていったら、どうなるの?」


「理が壊れる? ……いや、正確には“理の前提が変わる”だな。

 例えば、魔法や物理の法則が一部変化しても、

 世界そのものは、それに“合わせて再構築”される」


「それって、元の世界とはもう違う世界になるってこと?」


「そうだな。

 でも――“滅び”ってのは、必ずしも“終わり”じゃない。

 構造が変わるだけ、かもしれない」


「……なんか、それ、少し怖いね」


「俺もだよ」


 二人の間に、少しの沈黙が落ちた。

 湯気が揺れ、森のざわめきが遠くで響く。


 ---


 午前の日差しが差し込み、ウロの中はやわらかい光に包まれていた。

 リヴは外を見ながら、心の奥で小さく呟く。


(ねぇ、この世界は、どこまで“理”でできてるの?)


 彼女の中で、その問いはずっと消えなかった。

 理術を学ぶほど、世界の“法則”の脆さを感じるようになっていた。

 それは知識ではなく、感覚――直感的な“不安”だった。


「ナオキ」


「ん?」


「……もし、世界が少しずつ変わっていくなら、

 それを“治す”方法ってあるの?」


「理を治す……難しいな。

 けど、理が壊れるなら、きっとそれを“見届ける人”も必要だろう。

 君の夢が、もしかしたらその“前触れ”なのかもしれない」


「見届ける人……」


「そう。俺たちは、それを観測する側だ」


 ナオキはそう言って笑った。

 その笑みは不思議と穏やかで、どこか“覚悟”にも見えた。


 ---


 午後になって、森の風が少し強くなった。

 木々がざわめき、ウロの天井から落ち葉がひとひら、

 リヴの膝の上に落ちた。


 それを見つめて、リヴは小さく微笑んだ。

「ねぇナオキ」


「ん?」


「私ね、世界が壊れても、ナオキが隣にいれば大丈夫な気がする」


「それ、軽く言うなよ。責任が重い」


「えへへ、冗談。でも、ほんとにそう思ったの」


 ナオキは少し呆れたように笑って、湯の入ったカップを差し出した。

「はい。理のバランスを整える、朝の一杯」


「これ、ただのお茶じゃない?」


「理の詠唱を省略しただけだ」


「それ、ずるい!」


 ウロの中に笑い声が広がる。

 その響きは確かに“日常”の音だった。


 けれど、リヴの心の奥では、まだあの夢の“静かな崩壊”が、

 かすかに形を保って揺れていた。


 ---


 夕方、ナオキは外で小さなメモを取った。


 ・リヴ、夢に理層崩壊の兆候。

 ・感覚的予知の可能性あり(要観察)。

 ・現実に異常はなし。環境安定。


 書き終えたあと、彼は深く息をついた。

「異常なし、か。……そうであってほしいな」


 森の奥から、風が吹いた。

 それはいつもの風。けれどほんの一瞬だけ――

 木々の影が、わずかに“反転”したように見えた。


 ナオキは気づかない。

 けれどリヴは、その瞬間、微かに寒気を覚えた。


 ――理が、少しだけ軋む音がした。




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