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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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帰還と、昼食と、少しの達成感

 森の奥での小さな戦闘が終わり、二人はゆっくりと歩いて拠点へ戻っていた。

 霧はほとんど消え、木々の隙間から差す光が、やわらかく二人の背中を照らしている。


 リヴが前を歩きながら、草を避けつつくるりと振り返った。

「ねぇナオキ、今日の私、ちょっとすごくなかった?」


「いや、“ちょっと”どころじゃないだろ。ちゃんと魔法使いしてたよ」


「でしょー? なんか、こう……風が言うこと聞く感じした!」


「それ、だいぶ危ない発言だけどな」


「ふふふっ」


 リヴは嬉しそうに笑い、尻尾を小さく振った。

 その姿を見て、ナオキの口元もゆるむ。


 ほんの数週間前――リヴは森の獣に襲われて重症を負っていた。

 それが今では、ゴブリンを相手にしても笑っている。


(あの時の“怖い”は、もうここにはないんだな)


 ナオキはそんなことを考えながら、足元の小道を踏みしめた。

 森の奥からの帰り道は、驚くほど穏やかで、風がやけに優しかった。

 ――ほんの数時間前まで戦っていたとは思えないほど、穏やかな空気だった。


 ---


 ウロへ戻ると、ナオキは荷物を降ろし、大きく息をついた。

「……ふぅ。今日も無事生還。探索初日は合格点、ってとこかな」


「うんっ、完璧! あ、でもヒュートのとき、ちょっと焦ったかも」


「焦ってあの反応速度? もう立派な上級者じゃん」


 リヴは得意げに胸を張った。

「えっへん! でもお腹すいた。今日はごほうびランチ!」


「ごほうびって……まあ、いいけど。なに作る気?」


「ふふふ、名付けて“森の恩恵スープ”!」


「嫌な予感しかしないんだが」


 リヴは小さな木のボウルを取り出し、鍋に水を張る。

「さっき拾ったキノコと、昨日のパンの残り、それに……森のハーブ!」


「いや待て、その“森のハーブ”って安全確認した?」


「うん! ヒュートがかじってたやつ!」


「おいおい、あいつ草食じゃない可能性あるぞ」


「でもいい匂いだよ? ほら」


 リヴが差し出した葉は、薄紫の筋が入った不思議な植物だった。

 甘い香りがする。確かに、食べられそうではある。


 ナオキはしばらく考えてから、苦笑した。

「……まあ、煮てから考えるか」


「やった! ナオキの許可でました!」


 リヴはうきうきと鍋をかき回し始めた。

 火はナオキが持ち込んだカセットコンロ。


「ねぇナオキ、これ、ほんと便利だよね。魔法で火は出せるけど、火の番しなくていいんだもん」


「それがテクノロジーの力だ」


「てくの……?」


「いや、もういいや。説明するとまた魔法の話になる」


「じゃあカガクの仲間?」


「うん、そういうことにしとこう」


 リヴは笑いながらスープをかき混ぜた。

 鍋の中から、やわらかい湯気が立ち上る。

 香りは思った以上に良く、ナオキの腹が鳴った。


「……うん、これはいけるかも」


「ふふ、私のセンスを見直した?」


「少しだけな」


「“少しだけ”って何さー!」


 軽口を交わしながら、二人はスープを分け合った。

 口に運ぶと、想像よりもずっと優しい味が広がる。


 少し甘くて、草の香りが鼻に抜ける。

 どこか懐かしい、田舎の味のようだった。


「これ……普通に美味いな」


「でしょ! 森の恩恵だよ!」


「うん、これは合格だな。食中毒の兆候もなし」


「失礼な!」


 リヴが頬を膨らませ、スプーンを突き出す。

「はい、これで正式に“リヴ式スープ”認定」


「また“リヴ式”増やしてるし……」


「いいの! 魔法も料理も、気持ちで作るの!」


 ナオキは苦笑したが、どこかその言葉に納得もしていた。

 理術も、魔法も、料理も――“理解して、感じて、形にする”という点では同じだ。


「……こういう感覚、俺にはなかったな」


「ん?」


「俺、ずっと“根拠、エビデンス”ばかり気にしてたんだよ。

 でも君は“楽しくやる”ことを覚えてる。それがたぶん、一番大事なんだ」


 リヴはスプーンを止めて、ふわりと笑った。

「だってさ、ナオキといると、むずかしい話も楽しくなるんだよ」


「それは……どう反応すればいいんだ」


「褒められて照れる医療系男子」


「やめて」


 リヴがくすくす笑う。

 スープの湯気の中、二人の笑顔が揺れていた。


 ---


 食事のあと、ナオキはタブレットを開き、簡単なメモを打ち込む。


 ・リヴ、詠唱省略傾向。

 ・理術→感覚制御型(無詠唱化)。

 ・反応速度向上。危険判断も的確。


 そして最後に、ふと迷ってからこう書き加えた。


 ・理解は知識ではなく、経験の積み重ね。


 画面を閉じると、リヴが横から覗き込んだ。

「ねぇ、それ、私の成長記録?」


「まぁ、研究ノート的なものだな」


「じゃあ、書いといて。“森のスープ、おいしかった”って!」


「研究ノートにならないから!」


「なるもん!」


 二人は笑いながら、木の根元に座り込んだ。

 昼下がりの森は穏やかで、遠くで鳥の声がする。


 静かな時間が、ゆっくりと流れていく。


 リヴはふと空を見上げて呟いた。

「ねぇナオキ。私、ちょっとだけ自信ついた」


「だろうな」


「でもね、怖い気持ちが消えたわけじゃないんだ」


「うん。怖さを知ってる人ほど、強くなるんだよ」


 リヴはその言葉に、少し驚いたような顔をした。

 それから、目を細めて笑う。


「……そっか。じゃあ、私はこれからもっと強くなるね」


「その前にまず昼寝だな」


「もー! 台無し!」


 笑い声がまた、森に響いた。

 光が枝葉をすり抜け、ウロの中にきらめきを落とす。


 風が通り抜ける音が、まるで森が息をしているようだった。


 その穏やかな午後の中で――ナオキは思った。

 この世界での暮らしは、もう“生き延びる”だけじゃない。

 少しずつ、“生きる”という日常へと変わってきているのだ。


 ---


 夕暮れが近づき、空が金色に染まり始めた。

 ナオキは空を見上げ、深く息をつく。


「……よし、次はもう少し範囲を広げようか」


「え、もう次の冒険の話?」


「そうだ。せっかく森のマップ作りたいしな」


「やった! 次は“森の果実スープ”ね!」


「スープ縛りやめようか」


 笑いながら、二人はウロの入り口に腰を下ろした。


 一日の終わりの風が、心地よく吹き抜ける。

 その風はまるで、「よく頑張ったね」と囁くように優しかった。



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