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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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理解の外側と、森への誘い

 リヴが地球の甘味の衝撃から立ち直り、再び熱心に理術(空間干渉)の訓練に没頭するようになってから、数日が経っていた。


 ウロの中は、ナオキが持ち込んだノートPCやタブレット、そして「弦理論」や「膜宇宙論」を簡略化した図解資料で溢れている。


 ナオキは、リヴが魔力感知ではなく「空間の歪みを感じ取る感覚」として理術を習得していることに、確かな手応えを感じていた。


「いいか、リヴ。理屈で言えば、君が今やっているのは、空間の張力ブレーンテンションを揺らがせることだ」


 ナオキは、リヴが使おうとして失敗した瞬間転移(空間座標の折り畳み)の原理図を指差した。


「君は空間を『紙みたいなもん』だと理解した。

 でも、紙を折って遠くの点と点をくっつけるには、折り目の『糊』が必要だ。

 それは魔力じゃない。『理解』なんだ」


「理解……」


 リヴは目を閉じ、空間の僅かな軋みを聴こうとするように意識を集中させた。

 彼女の周りの空気が、かすかに揺らぐ。


「この先、遠くの場所へ瞬間的に跳躍する空間座標の折り畳みを試すには、この『糊』、つまり空間の構造を完全に理解しないといけない」


 リヴは真剣に頷き、再び掌を前に突き出した。


「たしか、ナオキの資料では……空間は『ブレーン』でできていて、折り畳めばいいんだよね?」


「そうだ。図で見たろ?

 短い距離なら、ただ折り畳めばいい。

 でも遠くへ跳ぶには、正確な座標の知識と、空間をピンポイントで曲げる精度が必要になる」


 リヴは必死にイメージを試みた。

 遠くにある、一際大きな木のウロの入り口。そこへ、今いる場所を重ねる。


 空間が震え、青白い光がパチパチと音を立てた。


 しかし、次の瞬間、光は霧散し、理術は不発に終わる。


 リヴはがっくりと肩を落とした。


「もぉ〜!どうして!『重なる』感じまでは掴めたのに!」


 ナオキはリヴの隣に座り、彼女の肩をポンと叩いた。


「焦らなくていい。

 君はもう、この世界の魔法使いが何百年も忘れていた『ことわりの理解』の部分に辿り着いているんだ。

 空間の歪みを感じ取ること自体、奇跡だ」


 リヴは唇を尖らせた。


「でも、ナオキの言う理屈は、すごく明確なのに。

 わたしが、まだ『リケイジョシ』になりきれてないのかな」


 ナオキは笑って、資料を畳んだ。


「大丈夫だ。

 正直に言うと、俺も君がやろうとしている『瞬間転移』なんて、理屈は立てられるけど、現象としては理解不能の域だ。

『科学が理解できる範囲の奇跡』として説明しようとしているだけで、俺の知識を超えている」


 ナオキの「わからない」という言葉に、リヴは少し安心したようだった。


「そっか……ナオキでも、わからないことがあるんだね」


「当たり前だろ。俺はただの凡人だ。

 チートの軸は『知識』『衛生』『物流』であって、戦闘力も魔法もゼロだ」


 リヴはそう言われて、小さく笑った。


「ふふ。じゃあ、今日はもうやめる。頭が混沌になっちゃった」


「それ、カオスの領域だな。ナイス判断だ」


 リヴが笑いながら伸びをすると、薄い外光がウロの木肌に反射して揺れた。

 小さな葉の影が、まるで水面みたいに彼女の髪に映る。


「ねぇナオキ」

「ん?」

「理ってさ、ぜんぶ理解しちゃったら──この世界って、退屈になっちゃうのかな」


 ナオキは少し考えて、苦笑した。


「多分、逆だな。理は成り立ち理屈だけど、その理屈で世界がどう動くのかは、誰にも予測できない。そこに、とてつもない面白さがあるんだよ」


 リヴはその言葉に満足したようにうなずき、背中を丸めてあくびをした。


「じゃあ、明日も『予測できない』を探そうね」


「おう、ちゃんと安全確認してな」


「それ、いつも言うよね」


「俺、医療系だからな。癖なんだよ」


 そんな何気ない会話のあと、

 リヴは毛布に潜り込み、あっという間に寝息を立てた。


 ナオキはその隣で、タブレットの画面を閉じる。


 残ったのは、森の呼吸のような静けさだけだった。


 外では、夜風がゆっくりと枝葉を揺らしている。

 遠くで、フクロウの声。


 そして──ほんの一瞬、風の音の中に混じるように、

 誰かが名を呼ぶような声が聞こえた。


 ナオキは顔を上げた。

 テレビの画面が、いつの間にか薄く光を帯びている。

 暗い森の奥の“何か”を映すように。


「……理の外側、か」


 彼は小さく呟き、

 消えかけた画面を見つめたまま、息を潜めた。


 ――――


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