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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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現実が、夢に追いつく日

 ウロの小さな空間は、プリンの甘い香りに満ちていた。


 リヴは両手でカップを抱え、目を細めている。

 その表情は、荒野を生き抜いた戦士ではなく、ただの少女の笑顔だった。


 ナオキはその姿を見つめながら、静かに息を吐いた。


(この笑顔……これからも大切に……)


 リヴはカップの底を覗き込み、名残惜しそうに呟く。


「ねえ、ナオキ。あなたの世界って、いつもこんなに甘いの?」


「いや、苦いことのほうが多いよ。」


 ナオキは苦笑して肩をすくめた。


「だからこそ、たまにこういう“甘いもの”があると救われるんだ。」


「ふぅん……」


 リヴはスプーンを回しながら考えるように首を傾げる。

 そして、ぽつり。


「じゃあ、わたしにとっての“プリン”は……ナオキかも。」


「ぶっ……!?」


 思わずむせた。リヴが楽しそうに笑う。


「ふふ、冗談だよ。顔、真っ赤。」


「……お前なぁ、心臓に悪いこと言うなよ。」


 そう言いながらも、ナオキの胸の奥に、

 小さな熱のようなものが残っていた。


(……守りたい、と思った)


 その感情が、彼の中で確かな決意へと変わっていく。


 ---


 アパートに戻ると、机の上には学費の請求書が置かれていた。


 看護師になるために必要な二年。

 だが、今のナオキには、リヴを支える時間が足りない。



 彼は看護学校の休学届を書き、封を閉じた。


 介護の仕事は続ける。

 生活の基盤は必要だし、夜勤を減らせばポータルの時間も取れる。


 ――現実を捨てるんじゃない。

 動かすんだ、夢のほうへ。


 ---


 数日後。


 ナオキは自室でノートパソコンを開いていた。

 検索窓には「副業 時間の自由 資格不要」と入力されている。


「リラクゼーション……もみほぐし業か。」


 国家資格はいらず、手技と衛生知識があれば開業できる。

 顧客管理もネット予約にすれば、時間を完全にコントロールできる。


「これなら……いけるかもしれない。」


 ナオキは濃度調整した薬草軟膏とエナジーキノコがある。

 あれを使用すれば、疲れにくく集中力も上がる。

 それを施術のクオリティ向上に使えば、“合法的なチート”になる。


「看護で学んだ解剖生理も活かせるしな。」


 手元のノートに、“完全予約制リラクゼーションサロン計画”と書き込む。

 物件費用、広告、必要な備品、ベッド……全て洗い出していく。



 小さく息を吐き、ノートを閉じた。


「――名刺、作るか。屋号は……“つなぐ”でいい。」


 ウロと地球。

 二つの世界をつなぐ“手”の意味を込めて、ナオキは笑った。


 ---


 翌日。


「休学……?」


 職場の休憩室で、美咲が目を丸くした。


「看護の勉強、続けないの?」


「しばらく休みます。少し時間の自由が欲しくて。」


 ナオキはなるべく穏やかに言った。


「また何か考えてるでしょ。」


 美咲は半分冗談のように笑うが、すぐに真剣な表情になる。


「無理だけはしないで。あなた、倒れるタイプだから。」


「はい。気をつけます。」


 そう答えると、美咲は安心したように息を吐いた。


「……でも、ナオキくんが何かを“守りたい”って顔してるの、初めて見たよ。」


 ナオキは少しだけ目を伏せ、笑った。


「そう、かもしれません。」


 ---


 数日後、ウロ。


 リヴはノートを開き、真剣な顔で魔法の練習をしていた。

 周囲には紙と鉱石片、そしてナオキが用意した資料の山。


「よし、もう一回やってみよう。」


「うん!」


 リヴは両手を前にかざす。

 空気が震え、淡い光が手のひらに集まる。


 ……が、ぱちん、と音を立てて消えた。


「もぉ〜! 時間魔法ってなに!?

 “流れてる”のに、止めようとしたら消えるんだもん!」


「“流れ”じゃなくて、“動き”なのかもな。」


 ナオキは隣に腰を下ろし、資料を指でなぞった。


「俺たちは“時を感じる”ことしかできない。

 でも、“触る”ことはできない。

 ……だから、君が困ってるのも当然だ。」


 リヴは唇を尖らせた。


「ナオキでも、わからないの?」


「もちろん。地球の科学でも、時間の正体はわかってない。」


「じゃあ、だれも知らないんだ……」


「そう。でも、“知らない”って、悪いことじゃない。」


 ナオキは微笑んだ。


「わからないから、みんな考える。

 それが、学ぶってことだろ?」


 リヴはしばらく考え、そしてふっと笑った。


「……そっか。じゃあ、次は“次元”のほう、試してみる!」


 両手を前にかざす。

 空間がかすかに歪む――が、また霧のようにほどけた。


「うぅ……“重なる”感じまでは掴めるのに!」


 悔しさに唇を噛むリヴに、ナオキは笑みを浮かべる。


「焦らなくていい。

 たぶん、それを“感じてる”だけで、もう一歩進んでるよ。」


 リヴは小さく笑い返した。


「……じゃあ、もうちょっと頑張る。」


「うん。俺も、こっちでやれることをやってみる。」



 ウロの空間に、小さな光が生まれ、ゆらめいて消える。


 ナオキはその背中を見ながら、少しだけ口元を緩めた。


「……まったく。

 こっちは現実で揉んでんのに、そっちは時空かよ。」


 リヴが吹き出した。


「ナオキ、やっぱり変な人だね!」


「知ってる。」


 二人の笑い声がウロに響いた。

 その音は、どこか現実と夢の境目に溶けていった。



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