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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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プリンが世界を書き換えた日

 ウロの朝。


 リヴは木漏れ日の中で、ノートを抱えていた。


 ナオキが昨日描いた図――火、水、風の理屈。

 それを何度も指でなぞりながら、小さく唇を動かしている。


「ねえ、ナオキ。わたし、もっと知りたい。

 この“カガク”ってやつ、もっと教えてほしい。」


 ナオキは思わず笑った。


「おっ、理系女子の誕生か。」


「リケイ?」


「理屈を考えて、世界を理解する人のことだよ。」


「ふふっ、じゃあ、わたしも“リケイ”になる!」


 彼女は胸を張って言った。

 その瞳は、昨日よりずっと輝いている。


「よし。じゃあ――教材、取りに行ってくるか。」


「きょうざい?」


「うん。本とか映像とか、地球の“勉強の道具”。

 それがあれば、リヴにもっとわかりやすく教えられる。」


 リヴの耳がぴんと立つ。

「そんなすごいもの……! 私も一緒に行っていい?」


 ナオキは少し考えて、笑いながら肩をすくめた。

「うーん……まあ、何度も見てるし、理屈もわかってるだろうけど――」


 リヴはぱっと顔を上げた。


「じゃあ、わたしも行く!」


 地球に興味津々なリヴだったが、以前ナオキが話した“通過に10秒を超えると切断される”という恐ろしいルールを思い出し、顔を青くした。


「でも、失敗したら体が半分こになるんでしょ?」


「……まあ、そうなるな。」


 リヴはぴたりと動きを止めた。

 そのまま小さく首を振って、真面目な顔で言った。


「今回は遠慮します。」


「ははっ、だよな。」

 ナオキは笑って立ち上がり、リュックを背負う。

「大人しく待っててくれ。美味しいものも持ってくるから。」


 その一言に、リヴの目がぱっと輝く。

「クリームパン!!」


 ナオキは笑いを堪えながら指を立てる。

「もっと美味しいものかもよ。」


「クリームパンよりも!?」


 リヴの反応に、ナオキは笑いながら手を振った。

「楽しみにしとけ。すぐ戻る。」


 そう言って、『32型』の光の縁に手を伸ばし、画面を起動させる。

 空間が淡く歪み、青白い光がウロを照らす。

 ナオキの姿が、ゆっくりと消えていった。



 リヴはナオキの背中を見つめ、手を合わせた。


「……いってらっしゃい。」


 ナオキは軽く振り返り、笑顔で言った。


「行ってきます。」


 ウロの中に静けさが戻る。

 リヴは両膝を抱えて、ぽつりと呟いた。

「……もっと、知りたいな。」




 光が収束し、ナオキは再び地球のアパートへ戻ってきた。

 時計を見ると、わずか数分しか経っていない。

 冷蔵庫を開け、手を止める。


「……あった。最後のプリン。」


 手に取るその姿は、まるで何かの秘宝でも扱うようだった。


「クリームパンより……衝撃的だろ、これは。」


 ノートPCとタブレット、教材用のUSBを詰め、再びポータルを開く。

 青い光が弾け、ナオキは異世界へと戻った。




 数十分後。


 光が再び開く。

 ナオキがリュックを背負い、少し息を弾ませながら戻ってきた。


「ただいま。お待たせ。」


「おかえり! ……それ、なに?」


 リヴが駆け寄る。

 ナオキは笑って袋を取り出した。


「お待ちかね。地球で“プリン”って呼ばれてる奇跡の食べ物だ。」


「き、きせき?」


 彼が差し出したのは、小さな透明のカップ。

 ふたを開けると、淡い黄色の光沢が中でとろりと揺れていた。


「……ぷりん?」

 リヴの声が震えた。


 スプーンを手渡すと、彼女は恐る恐る一口。


 ――とろん。


 舌の上でとけた瞬間、リヴの瞳が見開かれた。

 体が固まり、息を止める。

 ――瞬間、時が止まった。


「な、なにこれ!? あまっ……やわっ……しあわせぇぇぇぇ!!!」


 全身がびくんと震える。目を見開き、頬が赤く染まる。

 両手で頬を押さえ、涙がにじみ、唇が震えた。


「舌が……とける……! これ、食べ物じゃない、魔法だよ!」


 ナオキは腹を抱えて笑った。

「はははっ、ようこそ、地球の甘味の世界へ!」


 リヴは両手をぶんぶん振りながら叫ぶ。

「ずるい! こんな世界があるなんてずるい!」


「言っただろ? もっと美味しいものかもって。」


「これ……これ、世界を救える味だよ!!」


 ナオキは吹き出して笑った。


「大げさだな。」


「だって! だってぇ……こんなの知らなかったもん!!

 なにこれ、罪の味!? もう一口、だめ、止まらない!!」


 ナオキは肩をすくめる。

「女の子がしていい顔じゃない。食べ物に惚れてる顔だぞ。」


 リヴは我に返り、耳まで真っ赤にして両手で頬を押さえた。

「わ、わたし、そんな顔してた!?」


「した。」


「……もう! ナオキのせいだよ!」

 ぷいっとそっぽを向くが、

 その頬にはまだ――“世界を変えた甘味”の余韻が残っていた。



 ナオキはそんな彼女を見て、静かに笑った。



長めのお話を、ここまで読んでくださってありがとうございます。

この先のふたりの毎日を一緒に見守ってもいいかな、と思っていただけたら、ブックマークや評価でそっと支えてもらえると、とても心強いです。

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