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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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薬草と魔法むそう

 ナオキは冷凍抽出した軟膏を少し指に取り、リヴの腕の傷に塗ろうとした。

「ちょっと試してみるか」


 リヴは眉をひそめ、腕を差し出す。

「あのときの……でも、これって……作り方が変わってるのよね?」


 俺は軽く笑った。

「まあ、普通じゃない方法かもね。でも、薬草成分は同じだし、濃度が違うだけで」


 リヴは恐る恐る軟膏を塗る。冷たい感触が腕に広がる。


「……あ……これ……きく……。すぐ……わかる……」


 足を治したときの記憶があるからこそ、効果自体は信じている。

 けれど今回は“何か”が違うらしい。リヴの瞳が大きく開き、火の光を反射した。


「でも……どうして……こんなにつよい? これ……魔法……?」


 俺は肩をすくめ、くすっと笑う。


「魔法じゃないよ。科学。

 乾燥させずに生のまま成分を抜いて、それを凍らせて分けるんだ。

 氷の中心に“濃い層”ができるから、そこだけ削って……ワセリンで整える」


「……カガク……? レイトウ……?

 こおりの……上級魔法……?」


「だから魔法じゃなくてだな……」


 リヴはぽかんと口を開けたまま、火の揺らぎを映していた。


「……わからない……まったく……。でも……すごい……」


 理解していない。

 それでも、迷いなく──“信じて”いた。


「まあ、作り方はいいさ。効けばそれで十分だろ」


「……うん。ナオキ……すごい……」


 その一言に、ナオキは思わず目を逸らした。




 軟膏を塗る仕草が落ち着いたころ、

 リヴは火の揺らぎに照らされた傷跡をぼんやり眺めながら、

 ぽつりと呟いた。


「こういう……“つくる”って……ナオキの世界の人、みんな……できるの……?」


「いや、全員は無理。俺だって専門じゃないし」


「じゃあ……なんで、ナオキは……できるの?」


「生活の延長、だな」


「せいかつ……?」


 リヴは首を傾げる。

 その仕草がどこか幼くて、胸に刺さる。


 俺は指を上下に振りながら説明した。


「たとえばさ。怪我したら消毒して、洗って、乾かして、薬塗って、ガーゼ巻いたりするだろ? 地球では、それを“科学”って考え方でまとめてるんだ。

 薬草も乾かすか、生で使うかで効果が変わるし、熱を加えると成分が壊れたりもする。そういう手順が“積み重なって”るだけ」


 リヴはぱちぱちと瞬きをした。


「……すごい。

 積み重なるって……そんな言葉、初めて聞いた……」


「魔法は積み重ならないのか?」


「ならない……と思う。

 使える人は、ぱってできるし……

 使えない人は、なにやっても……できない……」


 リヴは小さく視線を落とした。

 その肩が少し寂しげに揺れる。


「だから……わたし、むいてないのかなって……」


「そういえば、リヴは……魔法が使えるの? 氷の魔法とか言ってたし」


 問いを聞いた瞬間、リヴの指が止まり、肩が沈んだ。


「……つかえないの。まったく。

 ちいさい魔法も……だめ」


「魔法が使える人なんて、ほとんどいないのか?」


「うん……すくない。

 まともに使えるの、村に一人か二人……

 それも、火をちょっとつけるとか……そのくらい……」


「意外と地味だな」


 リヴは少しだけ笑った。


「こおりの魔法なんて……おとぎ話だし。

 わたし……半分エルフなのに……」


 ゆるく丸めた肩、伏せた横顔。

 その“ちいさな落ち込み”が、火の光でより鮮やかに映る。


(劣等感か……)


 俺はそっとリヴの肩に手を置き、微笑む。


「そっか……でも、焦ることはない。魔法が使えなくても、君の力や知恵は十分に強い。今までだって、そうやって困難を乗り越えてきただろう?」


 リヴは小さく頷き、少しだけ目に光を取り戻した。


「……うん、ありがとう、ナオキ……」




 俺は少し考え、笑みを浮かべる。


「魔法のことはよくわからないけど……イメージで使えるなら、発火点と酸素と結合させたりして火を出せたら格好いいよね。

 あと、空気中の水分を飽和状態にして水を出せたら、水汲みが楽になるだろうなあ」


「……?」


 リヴは完全に置いていかれた顔をした。


「サンソ? ハッカテン? ホウワ? えっと……それ、なに語……?」


「いや、日本語……だけど。

 あ、難しいよな。ごめん」


「ううん、きらいじゃない……

 ナオキの、その……“よくわからない話”……

 すき……」


「その言い方はどういう……」


「ふふ……なんでも、たのしそうに話すの……

 いいな、って思うだけ……」


 リヴは指をむにむにと動かしながら、

 火の明かりのほうを見つめる。


「でもね……ナオキのはなし聞いてると……

 魔法って、ちょっと……できそうに思えるの。

 なんでだろう……?」


 俺は少し照れながら肩をすくめた。


「たぶん……“理由をつけて説明してる”からだよ。

 俺の世界は、なんでもかんでも理由を探すクセがあるんだ」


「……りゆう……」


「魔法を使える人にとっては、きっと“感覚”なんだろうけど、俺は逆に、理由がわかれば安心するタイプなんだよ。

 そういうのが……リヴにも少し伝わってるのかもな」


 リヴは静かに目を細めた。


「ナオキの……そういうところ……

 すごく……すき……」


「え?」


「ま、まって、いまの……ちが……

 そういう“すき”じゃなくて……」


 耳まで真っ赤になりながら、

 リヴは小さく両手で顔を覆った。


「ナオキのはなし、すき……ってこと……

 へんな意味じゃなくて……」


 俺は笑いをこらえきれなかった。


「わかってるって」


「わかってない……」


「わかってるよ」


「……むぅ……」


 リヴはぷいと横を向いたが、

 その横顔は火の光でほんのり桃色に染まっていた。




 空気がふっとゆるんだとき、

 リヴは指を組み、そっとこちらを見る。


「……もっと……ききたい。

 ナオキの世界のこと……

 べんり、ってなに……?

 どうして、そんなに……たのしそうに……話せるの……?」


「全部いっぺんにだと多すぎるぞ」


「……ゆっくりで……いい……

 ずっと……きいていたい……」


 その言葉の響きに、

 火の揺らぎよりも柔らかい温度が宿っていた。

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