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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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静かな学びと、新たな発見

 ナオキは、リヴの体力が少しずつ戻っていくのを見守りながら、そっとその手を握った。

 小さな手だった。触れた瞬間、指先の冷たさがすぐに分かる。

 包み込むように握ると、細い指がかすかに揺れた。


「疲れただろ……無理してないか」


 声音は、ごく静かだった。

 リヴを驚かせないように、壊れものを扱うような優しさが滲んでいた。


 リヴはゆっくり瞬きをし、小さく視線を伏せた。

 胸の早鐘はまだ収まらない。

 それは疲れだけではなく、この場所を“安全だ”と体が思い出しはじめたからだった。


 頬がうっすら赤くなる。

 長い耳がわずかに震えた。


「……うん……だいじょぶ……でも……ちょっと……はなす……したい……」


 弱く、遠慮がちで――それでも確かに前に踏み出そうとする声。


 ナオキはその気配を感じ取り、ゆっくり頷いた。


「いいよ。ゆっくりで大丈夫だ。……じゃあさ、魔道具の話、もう少し聞かせてほしい。どんなのがあるんだ?」


 問いかけの圧をできる限りなくし、

 “聞きたいけど無理はするなよ”という気配を混ぜる。


 リヴは言葉を選ぶように少し考えた。

 視線が宙をさまよい、記憶を手繰るその仕草に、健気さが滲む。


「わたし……しってるの、すこしだけ……。むらの人、とか……ぎょうしょう人……ときどき、ぼうけん者くる……その人たちの……はなし……」


 言葉が途切れるたび、胸の前で指がきゅっと重なる。

 誰かを騙すような性格ではない。

 十五歳の少女が集めた、限られた知識をまっすぐに差し出しているのが分かった。


「それで十分だよ。どんな噂でもいい。杖とか、小さい装置とか……どんなの?」


「うん……なんかね……つえ、光る……とか……。ちいさい箱……ひと、気持ちで“うごく”……とか……。しくみは……わからない、けど……」


 たどたどしく、単語だけ先に出る。

 それでも懸命に伝えようとしているのが分かった。


 ナオキは、自然と頬をゆるめた。


「なるほど。十五歳の情報網だけど……逆にすごく生活に近い生の情報だな」


 軽い調子に合わせるように、リヴも小さく笑った。


「……そう、かも……。はなすの……すこし……たのしい……」


 その言葉が出た瞬間、ナオキの胸がじんわり温かくなる。

 張りつめていた少女が、ようやく“会話を楽しむ余裕”を見せはじめた。

 その変化が救いのように思えた。


「リヴ……君の名前は“リヴネ・モーア”。十五歳の……ハーフエルフだよな?」


 確認するように、ひとつずつ丁寧に言葉を置く。


「うん……。わたし、半分エルフ……。でも……みんなの……やくに……たちたい……」


 慎ましく、けれど芯のある願いだった。


 ナオキは優しく頷いた。


「十五歳でそれだけ考えてるなら、十分すごいよ」


 リヴは胸の奥があたたまり、ほんの少しだけ笑った。

 その笑みは弱くて、小さくて、消えてしまいそうで――

 けれど確かにそこに咲いていた。


(……この人……ハーフエルフでも……いやな顔……しない……)


 その気づきは、リヴの心をそっと揺らした。


「……いま……むり、しない……。ここで……すこしだけ……あなたと……はなす……それで……いい……」


 安心が言葉の端ににじみはじめる。


 ウロには静かな時間が流れた。

 二人は少しずつ、互いの世界を知りはじめていく。


「ねぇ……ナオキ……あなたの世界……どうして……あまいもの……いっぱい? べんりな……ものも……たくさん……?」


 質問が大きすぎたと思ったのか、リヴは袖をつまんで視線を落とした。


 ナオキはすぐに笑って、力を抜かせる。


「ゆっくり教えるよ。全部まとめてじゃ、たぶん大混乱するだろ? 知りたいときに、知りたいことだけ聞いて」


 その言葉があまりに優しくて、リヴは息をのんだ。

 安心が胸いっぱいに広がり、かすかな笑みがもれた。


「……うん。そうしてくれる……うれしい……」


 その素直さが、ナオキにはただ愛おしかった。


 ナオキは、湯気で少し温まったクリームパンを差し出した。


「食べる? 無理して食べなくてもいいけど」


 リヴは少し迷い、そっと手を伸ばす。

 ふわりと沈む柔らかさに、目がわずかに開かれた。


「……やわ……」


 ひと口。

 甘さが舌に触れた瞬間、肩が小さく震えた。


「……これ……てん……じょう……そらの……おかし……みたい……」


 ナオキは思わず笑ってしまう。

 だがその表情には、侮蔑なんてひとかけらもない。

 ただ、解けるような優しさだけがあった。


「天上のお菓子って……すごい例えだけど……気に入ってくれたならよかった」


 リヴは頬を赤らめる。


(……ほんと……ちょろい……わたし……)


 でも、その気づきは不思議と嫌じゃなかった。


「……ナオキ……これ……ありがとう……」


 今日だけで何度目かの礼。

 けれど一つひとつが違う重さで胸に落ちる。


「君が無事で……こうして食べられるなら、それでいい」


 その言葉に、リヴの胸がまた小さく跳ねた。


「ねぇ……ナオキ……」


 小さな声に、ナオキは顔を上げた。

 リヴの目は伏せられ、言葉を探している。


「こうやって……ゆっくり……はなす……はじめて、かも……。いままでは……ずっと……はしって……うごいて……」


「ああ。そうだな。でも、これからは……こういう時間も、大事にしよう」


 その瞬間、リヴは肩の力を抜き、柔らかく目を細めた。


「……もっと……しりたい……あなたのこと……あなたの世界……」


 告白の一歩手前のような、小さくて真剣な声だった。


 ナオキは静かに頷く。

 互いを知ること――

 それが、この先の長い旅を支える力になる。

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