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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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三人で作る秘密のサシェ

 ドアが閉まっても、六畳の空気にはまだ人の熱が残っていた。

 美咲が靴を揃えて上がり込んだ瞬間の気遣い、リヴが少し身をすくませていた緊張、直輝が慌ててスペースを空けたときの気まずい笑い──すべてがまだ部屋に浮いている。


 リヴは玄関の方に向けていた背をそっと戻し、胸の前で指を重ねる。

 緊張と嬉しさのあいだを、細い息が行き来しているようだった。


 美咲は軽く伸びをし、肩を回すように一つ深呼吸した。


「さて。せっかくだし、このままサシェ作ろうか。材料そろってたよね?」


 声は軽いのに、どこか真剣で。

 本当に作る気で来ましたよ、という空気が混ざっている。


 その声を受けて、リヴの耳がぴくりと動いた。


「……サシェ、つくる。ミサキ、いっしょ、する……?」


「もちろん。一緒にやろうよ。リヴちゃん、初作品でしょ?」


 言われた途端、リヴの頬がゆるんでいく。

 普段は控えめな彼女の表情が、少しだけ誇らしげに見えた。


 直輝はその二人のやり取りを見ながら、押し入れを見た。

(ミシン……あれ、出すしかないよな)

 胸の奥に小さな照れがうっすらと灯る。


 ショーツ制作の時の記憶がじんわり浮かぶ。

 ミシンのグリップの感触や、リヴの真剣な目、完成品を見せたときの照れた笑い。それらがぼんやり胸をかすめた。


「直輝くん、ミシン出すの手伝おうか?」


「いえ、大丈夫ですよ。すぐ出せます」


 言ったものの、押し入れの奥でコードが絡まった箱はなかなか出てこず、直輝は「……あれ?」と声にならない困り顔をした。


 美咲はすべて見ていた。


「絶対雑にしまったでしょ、それ」


「あー……まあ、ちょっとだけ」


「ちょっとじゃなかったよ。完全に押し込んだって顔してたよ」


「ナオキ……がんばって……」


 リヴの励ましが柔らかいのに、妙に胸に刺さり、直輝は苦笑した。

 だがその空気が、三人の距離を始まる前からゆっくり近づけていく。


 ミシンをテーブルに置き、小物入れから糸や針を取り出すと、六畳の部屋が段々「作業場」に形を変え始めた。


 リヴは目を輝かせながらあたりを見渡し、机の上の一つひとつを確認していく。

 香草の束を大事に抱えていたその手元には、緊張よりも期待のほうが強く見えた。


 美咲は机の端に置かれていた霧吹きを見つけ、キャップを外す。


「アイロンは無いんだよね? 大丈夫。霧吹きで湿らせて手で伸ばそう」


 布に降りかかる細かい霧が柔らかい膜のように広がり、美咲の手がその上をゆっくり滑る。

 布の皺がひとつずつ消えていくのを、リヴは吸い込まれたように見つめていた。


「……ミサキ、て……うごき、きれい。すごい」


「慣れてるだけ。でも、こうやると縫いやすくなるよ」


 美咲は飾らない声で言いながら、指先をしなやかに動かしていく。

 その自然体の手際に、リヴは息まで止めてしまいそうなほど集中し、耳先が熱を帯びていく。


 直輝はそれを横目に見ながら、胸の奥でそっと思う。


(美咲さん……やっぱ上手いな。こういうとき頼れる人だ)


 ミシンを配置し、椅子を三つ並べた瞬間、六畳の部屋は完全に「三人のアトリエ」になった。

 狭いのに不思議と窮屈さがなく、逆にちょうどいい距離感を作ってくれる。


「準備できたね。さ、リヴちゃん。いよいよだよ」


「……うん。ナオキと、ミサキと……つくる」


 呼吸を整えるように深く吸い込み、胸の前で指をそっと重ねる。

 耳が赤く染まり、そのままわずかに揺れた。


(なんか……この感じ、すごくいいな)


 直輝の心の奥に、穏やかであたたかい波が広がる。

 三人で作業を始める前の、静かで柔らかい時間が、六畳いっぱいに広がっていた。


 ミシンの前に座ったリヴは、背筋をぴんと伸ばした。

 椅子の高さを何度か調整して、足元に置いたペダルにそっと足を添える。

 緊張が指先に出ているのか、手がほんの少し震えていた。


 直輝は横から優しく声をかけた。


「リヴ、大丈夫か? そんなに緊張しなくていいよ」


「……うん。でも、はじめて……だから。まちがえたら……」


「間違えてもいいんだよ。俺なんてしょっちゅうだよ」


「ほんと?」


「ほんと」


 リヴはほっとしたように小さく呼吸を吐いた。

 その動きを見て、美咲が背後から椅子を少し引いて座り、柔らかい声で言った。


「じゃあ、リヴちゃん。まずここからだよ。縫う幅は、この線に沿って。焦らないで」


「……うん、ミサキ」


 美咲はリヴの背後に手を添える。

 触れないぎりぎりの距離で、気配だけが伝わる。


「糸はここを通って……こっち。そうそう。すぐできたね」


「ミサキ、おしえるの……じょうず……」


「ふふ。ありがとう。じゃあ、ちょっとだけ縫ってみよっか」


 リヴは深呼吸し、そっとペダルを踏む。

 布と針が触れ合う小さな音が、六畳に広がった。


 カタ……カタ……


 まだぎこちないが、手元は真剣だった。

 美咲の言葉を一つも逃したくない、そんな眼差しが布の上にまっすぐ落ちている。


「リヴちゃん、ちょっと速度落として……そう。すごく上手」


「……ほんとう?」


「ほんとうに上手。最初はもっとガタガタするものだよ。直輝くんとか」


「いや、なんで俺を例に出すんですか……」


 美咲の軽口がふっと空気を柔らかくした。

 リヴは緊張の中に小さな笑みを浮かべ、針の動きに集中を戻す。


 だが次の瞬間──


 針が小さく跳ねた。


「あっ……」


「ここ、少し曲がったね。でも、大丈夫大丈夫」


 美咲はすぐに前へ出て、リヴの手をそっと押しやる。

 慌てず、急がず。動きの一つひとつに無駄がない。


 糸を少し解き、布を平らに整えると、美咲は指先を添えた。


「ほら、こうやって少しだけ返し縫いして……なじませるの。ここ。見てて」


 リヴは息を呑んだまま、真剣に見つめていた。

 瞳がきらきらしていた。

 憧れをそのまま形にしたような光。


「……ミサキ、すごい。ほんとうに……すごい……」


 声が震えていた。

 泣きそうというより、胸がいっぱいになっている時の震えだった。


 美咲は少し照れたように笑い、リヴの頭を軽く指先で撫でる仕草をした。


「泣くほどのことじゃないよ。でも……そんなふうに言ってもらえるの、嬉しいな」


「うん……ミサキ、あったかい……」


 直輝は二人のやり取りを見て、胸の奥がほわっと温かくなるのを感じた。

 だが、同時にほんの少しだけざわつく。


(……なんていうか、いいんだけど……近いな)


 リヴは美咲にぴったり寄って座っていた。

 肩が触れ合いそうなほどで、その横顔は完全に信頼しきっていて。

 それが悪い感情ではないのに、胸が少しそわそわする。


 美咲は直輝の視線にすぐ気づく。

 気づいて、目だけで笑う。


「直輝くん、顔に出てるよ?」


「いや、出てないはずですよ」


「出てるよ。かわいいよ、それ」


「かわ……いや、その……」


 否定しきれず、言葉が途切れてしまう。

 リヴはミシンから顔を上げて、首をかしげる。


「ナオキ、かお……どうした……? いたい……?」


「痛くはないよ。ただの……気のせいだよ」


「……ほんとう?」


「ほんとう」


 リヴはじっと直輝の顔を見つめたあと、安心したように小さく笑って、またミシンへ向き直った。


 その笑顔が、妙に胸に刺さる。


(……リヴ、楽しそうだな)


 そう心の中でつぶやいた瞬間、リヴは布をもう一度ゆっくり送り始めた。

 最初よりずっと安定している。

 褒められた場所を活かそうと、丁寧に丁寧に手を進めていた。


「すごいよリヴちゃん。ほんと成長早いね。直輝くんより早いんじゃない?」


「美咲さん、そこで俺を比較に使う必要……」


「だって比較対象が分かりやすいから」


 美咲は笑いながら、リヴの背中をそっと押す。


「ね、リヴちゃん。直輝くんほんとに優しいけど……こういう細かい作業はね……」


「ミサキ、ナオキ、やさしい……」


「そうそう。でも、縫い方は私のほうが上手いから」


 その言い方が自然で、暖かかった。

 リヴはリヴで、まるで胸の奥が少しずつ芽吹くように表情を明るくしていく。


「ミサキ、すき……。ナオキも……すき……」


「はいはい、俺も嬉しいよ」


「直輝くん、顔またゆるんでる」


「だから言わなくていいですって……」


 三人で笑った。

 ミシンの軽い振動がその笑い声に混ざり、六畳の部屋に一定のリズムを作っていた。


 そのリズムは、作業というより、三人の生活が混ざる音のようだった


 縫い目が整い、美咲の指先が布の端をきゅっと押さえたところで、ミシンの音が一旦止まった。

 静けさが戻ると、リヴは小さく息を吐き、緊張の余り固くなっていた肩をそっと下ろした。


「がんばったね、リヴちゃん。とても綺麗だよ」


「……ミサキ、ありがと。ナオキも……みてくれる……?」


「もちろん。ほんと上手だよ。最初からここまでできるのすごいよ」


 褒められた瞬間、リヴの耳がふにっと上を向き、喜びを隠しきれないみたいに揺れた。


 美咲は机に広げていた香草の束を手に取り、茎の部分をそっと割いて、細かくちぎり始めた。

 破けた断面から、淡く甘い香りがふっと立ちのぼる。


「これ……ほんと不思議。地球のハーブじゃないよね。もっと……こう、深い香りがする」


「むこうでは……ふつう。森の、いいところ……に、はえてる」


「ふーん……すごいなあ」


 美咲は香草の色を観察しながら、指先をそっと撫でる。

 リヴはその横で、香草の扱い方を真剣に見つめ、同じように指を動かしてみせた。


「リヴちゃん、そんなに強く混ぜなくていいよ。香りが開きすぎちゃうからね」


「ひらく……?」


「香りが一気に強くなるってこと。少しずつ混ぜたほうがバランスいいよ」


「……ミサキ、すごい。なんでも……しってる」


「なんでもは知らないよ。でも、人に教えるのは好きかも」


 美咲の言葉に、リヴはほっと笑った。

 ほんの数週間前まで、地球の生活の基本ですらおぼつかなかった少女が、いまここで、香草を混ぜる手つきに“自信”の影を少しだけ乗せている。


 直輝はその小さな変化を見逃さなかった。


(……成長したな。ほんとに)


 香草のかけらが皿の上で擦れる、小さな音が続く。

 六畳に広がる甘さは、どこか深い森を思わせる匂いだった。


「ねえ……」


 美咲がふと思い出したように声を落とす。


「二人って、どうやって出会ったの?」


 動きが止まった。

 リヴは肩をびくっと震わせ、香草を持っていた指が小さく揺れた。


「ミサキ……それ……」


「ん? 聞いちゃまずかった?」


「いや……まずいとかじゃないんですけど……説明がちょっと」


「直輝くんが照れてる」


「いや……照れてません」


「照れてるよ」


「……否定しにくいです」


 美咲がにやりと笑う。

 その横で、リヴはゆっくり指を重ね、勇気を集めるように目を伏せた。


「ナオキ……たすけてくれた。わたし……森で、ひとりで……ケガして……いた。こわくて……どうすれば……わからなくて……」


 言葉が途切れた。

 息が震え、喉の奥がかすかに詰まる。

 思い出すだけで胸が苦しくなるような、そんな声だった。


「でも……ナオキが、みつけてくれて。てあてして……まってて……くれた」


 リヴは胸の前できゅっと指を結び、そっと俯いた。

 耳の先まで赤い。

 その赤さには、恐怖の記憶ではなく、今の安心が混ざっている。


 美咲はふざけるのを一度やめ、真っ直ぐうなずく。


「……そっか。怖かったんだね。でも、直輝くんがいてくれたんだ」


「うん……。ナオキ、すごく……やさしかった。いまでも……たいせつ……」


 その「たいせつ」という一言が、静かに六畳に落ちた。

 小さな音なのに、真っ直ぐすぎて胸の奥がじんとした。


 直輝は少し目を伏せ、小さな息を吐く。


「リヴが頑張ってるから……俺も助けられてますよ。ほんとに」


 美咲が目を細め、軽く笑う。


「直輝くん、そういうところだよ。そりゃ懐かれるよ」


「そうですかね……」


「そうだよ。だから名前も自然に呼べるんじゃない?」


 促され、リヴは直輝を見上げた。

 緊張で指が少し動き、その後で、ぽつりと声がこぼれた。


「……ナオキ」


 いつもよりずっと自然な発音だった。

 直輝は驚き、胸の奥が少し跳ねた。


「すごい……きれいに言えてるよ、リヴ」


「ほんとう……?」


「ほんとう」


 美咲もうれしそうに口元をゆるめる。


「前よりずっと上手。がんばってたんだね」


 リヴはこくりと頷いてから、美咲へと向き直り──


「ミサキ……おしえてくれて……ありがと」


 その声音が、あまりに自然だった。


 美咲は少し驚いて、それから目尻を下げるように笑った。


「どういたしまして。ちゃんと伝わって嬉しいよ」


(……なんか複雑だな)


 直輝は胸の中にふわっとしたざわめきを感じた。

 美咲への感謝も嬉しい。

 けれど、それが自然に言えてしまうリヴの成長が、なぜかくすぐったい。


「直輝くん、また変な顔してる」


「してないですよ」


「してるよ。わかりやすいって」


「ミサキ……ナオキ……もじもじ……?」


「もじもじじゃないよ……」


 三人の声が少し重なり、甘い香草の匂いに混じって、笑い声が柔らかく六畳を包む。


 香草の調合が落ち着き、縫い上がった布の端が揃うと、三人は自然とテーブルの中央へ集まった。

 完成に向けての最後の工程──袋へ香草を詰める作業だ。


 リヴは皿の上の香草を両手ですくい、そっと布の袋へ落とす。

 動きは慎重で、息まで静かだった。

 まるで大事な贈り物を扱っているように、ぎこちなくも丁寧に指を動かす。


「リヴちゃん、そのくらいでいいよ。入れすぎると形が崩れるから」


「……はい。ミサキ」


「あとね、口をぎゅっと縛る前に、内側を少し整えると綺麗に見えるよ」


「ここ……? このへん……?」


「そうそう。上手だよ」


 褒められた瞬間、リヴの耳がもう一段階ふわっと立ち上がった。

 その変化が自然すぎて、美咲は思わずほほえむ。


 一つ、また一つ。

 香草の量を調整し、紐を通して布の口を締める。

 結び目を作る手つきはまだぎこちないが、努力がそのまま形になっていく。


「できた……? ナオキ、みて……これ……」


 リヴは直輝の方へ小さく差し出した。

 差し出した手が、少し震えている。


「うん。すごく上手だよ。形も綺麗だし、丁寧に作ってるのが分かる」


「……ほんとう?」


「ほんとう」


 直輝が素直に言うと、リヴは胸の前で指を重ね、息をほっと落とした。

 その小さな仕草が、胸の奥を柔らかく撫でてくる。


「よし。三つできたね」


 美咲がテーブルに並べると──

 三つのサシェは見事に形も香りも違った。布の色、縫い目の雰囲気、詰められた香草の分量……

 でも、その違いこそが三人で作った証のように見えた。


「これ、絶対売れるよ」


 美咲は本気の声で言った。

 冗談が一つも混ざっていない。

 その声に、直輝とリヴは自然と美咲へ視線を向けた。


「ミサキ、ほんとうに……?」


「本当だよ。だって香りがまずすごくいい。市販のと全然違う。落ち着くっていうか……なんか、気がゆるむ感じがする」


 美咲はひとつ手に取って、深く息を吸った。


「……ねえ直輝くん。これってさ、何が入ってるの?」


「香草と……あと、向こうの魔素の残り香が少しだけ混ざってるんです」


「魔素……って、魔法ぽいの?」


「はい。でも害はないですよ。ただ、向こうの世界の……空気みたいなものです」


 美咲は驚いたように目を見開き、それから何度もうなずいた。


「そりゃ落ち着くわけだ。……ほんと、この三つ。すごいよ」


 リヴはその言葉を聞き、胸の前にそっと手を当てた。

 耳がやわらかく揺れた後、ゆっくり微笑む。


「ミサキ……ありがと。ナオキ……つくれて……うれしい」


「うん。よく頑張ったよ」


「すごいよ、リヴちゃん」


 褒められるたびに、リヴは照れたように体を縮める。

 でも、目だけは嬉しそうに輝いていた。


「……ああ、直輝くん。嫉妬してる?」


「してませんよ」


「してるね。顔に出てる」


「リヴ、ナオキ……へんなかお……?」


「言わなくていいんだよ、リヴ……」


 笑いが漏れた。

 その笑い声が、甘い香草の匂いに混ざり、六畳の空気をふんわり広げていく。


 やがて、外の暗さが濃くなり始めたころ。

 美咲はバッグを肩にかけ、三つのサシェを見渡した。


「ねえ直輝くん。ほんとにこれ、もっと作るつもりなら……いずれ作業場いるよ?」


 唐突な声だったが、全く軽くない。

 現実味のある、未来を見据えた声。


「六畳は限界くるよ。ミシンも増やすならスペースも必要だし。作り続けるなら考えたほうがいい」


「……たしかに。そうですね」


 直輝は素直に頷いた。

 その横で、リヴはサシェを胸に抱きしめ、耳をゆっくり動かす。


「ミサキ……ナオキ……つぎ……もっと、つくる……」


 その声には、迷いがなかった。

 大きな声ではないのに、芯があった。


 美咲はその言葉に気づき、にっこり笑う。


「よし。将来の工房、期待してるよ」


 靴を履きながら、美咲はドアの前で振り返る。


「二人とも。今日はほんとにありがとう。また一緒に作ろうね」


「はい。美咲さんこそ、ありがとうございました」


「ミサキ、また……いっしょ……つくる……?」


「もちろん」


 ドアが静かに閉まり、足音が遠ざかっていく。


 部屋に静けさが戻った。

 けれど、さっきまでの温度がそのまま残っている。


 リヴはサシェを抱えたまま、直輝に寄り添うように近づいた。


「ナオキ……きょう……たのしかった」


「俺もだよ。すごくいい時間だったな」


「……うん。これ……もっと、つくる。ナオキと……ミサキと……」


 リヴは胸の前で指をそっと重ね、決意を閉じ込めるように小さな呼吸をした。


 六畳の空気が、ほんのり甘い香りを帯びて、静かに揺れた。

 その揺れの中に、三人で始めた小さな“ものづくり”の続きが、確かに芽生えていた。

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