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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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閑話:異世界貿易で現代で大金持ちになった!?

 これは異世界で大金を稼いで日本へ大金持ちになった夢オチなお話……


 ★金貨販売


 月末が近づくほど、財布の中は静かになる。


 六畳の部屋の片隅。

 ナオキはレシートの束と残りの生活費を見比べて、顔を覆った。


(……やばい。普通にやばい。

 貯金が……底見えてる……)


 異世界に行っていた間、当然のように給料はゼロ。

 帰還後も落ち着くまで仕事は休んでいる。


(生活費、家賃、食費……

 リヴの日本語教材とか……

 向こうの仕入れで使った分もまだ補てんできてないし……)


 隣で座っていたリヴが、心配そうに首を傾けた。


「ナオキ……おかね……たりない……?」

「うん……ちょっと、ね」

「ちょっと……じゃないおと、する……」

「バレてる……」


 財布を閉じた瞬間、胸の奥にひとつだけ光る考えが落ちた。


(……金貨があるじゃん)


 荷物の中には、まだまだ異世界産金貨が残っている。


(地球でも金は金。

 金の価値は世界共通……のはず……!)


 ナオキは机を勢いよく叩いた。


「よしっ!」

「……こわい」

「金貨、売りに行こう!!」

「さらにこわい……」


 リヴは袖を握りしめ、小さな声でつぶやいた。


「にほん……きんか……うれる……?」

「売れる。きっと売れる。たぶん売れる。売れろ」


 全部願望だった。


 それでも、追い詰められたときの人間の決断はだいたい軽率だ。


「リヴ、行くぞ。駅前に金買取の店あるから」

「ナオキ……あの……きんか……むこうの……」

「大丈夫大丈夫、金は金!」


 その自信には根拠が一切なかった。




 駅前・金買取専門店


 自動ドアが開き、店員がにっこりと迎える。


「本日はどのような――」


 ナオキは堂々と、異世界の金貨をテーブルに置いた。


「これ、買取お願いします」


 店員

「…………」


 店員は静かに金貨を手袋でつまみ、

 表と裏をひっくり返し、

 光にかざし、

 沈黙した。


「お、お客様……この金貨……どこの国の物ですか?」


「ヒビレア王国です」


「どこですかそれ」


「…………えっと……中東の方の……」


「そんな国ありません」


「ですよねー!!!!」


 リヴは震えながら袖をつまむ。


「ナオキ……やばい……?」


「いや……まだ……ワンチャン……」


 その瞬間。


 店員は裏へ消え――


 警察が来た。




 警察官が三人並び、ナオキを囲んだ。


「ちょっと、“金地金取引法”と“古物営業法”、それから“通貨に関する不正疑い”でお話を」


「三つ!? 一気に!? 初犯に厳しくない!?」


 リヴ

「ナオキ……たいほ……?」

「わかんない! 俺もわかんない!!」


 警察官は金貨を指さす。


「まず、金の売買には“身元の提示”と“原産国証明”が必要です」

「げ、原産国……ヒビレア……」

「ありません」


「次に、不明な入手ルートの金属を持ち込むのは古物営業法の確認義務違反です」

「ふ、不明って……」

「どこで手に入れたんです?」

「……言えません」


「最後に、この刻印。見たことがありません。通貨偽造の疑いも」

「なんで!? 偽造してない!! 異世界の本物!!」

「“異世界”は法律で想定されていません」

「ですよねー!!!!」


 警察官が腕を組む。


「どうします?」

「どうしようもないです!!!!」




 取調室のドアが開いた。


「失礼します、裁判官です」

「なんで来たの!? まだ逮捕もされてないのに!!」


 裁判官は書類を広げる。


「金貨の原産国不明、提出書類ゼロ、説明不可。重いですね」


「説明不可じゃないんですよ!

 説明しても法律がついて来れないだけで!!」


 リヴは半泣きで袖を引く。


「ナオキ……ごめ……わたし……きんか……」

「違う違う! リヴは悪くない! これ全部日本の法律が悪い!!」


「法律のせいにしないでください」と警察。


「被告人、直輝」

「まだ被告じゃない!!」


 裁判官が厳かに言う。


「判決を――」


(終わった……家賃も払えず、異世界帰り即実刑……)


 リヴ

「ナオキ……すき……。でも……けいむ……いや……」


 裁判官

「――これは夢です」

「は?」

「夢です。起きてください」




 目を開けると、六畳の部屋。

 リヴがスプーン片手に覗き込んでいた。


「ナオキ……ごはん……できた……。こわい声、した……」


「……夢か……ッ!!!!!!」


 ナオキは布団から飛び起きた。


「よかった……逮捕されてない……!! 裁判官も来てない……!!」


 リヴはきょとんと首を傾ける。


「きんか……こわい……?」


「金貨はもう売らない! 夢でも売らない!!」


 リヴは安心したように胸に手を置いた。


「ナオキ……あさ……ごはん……たべよ……」


「……うん……食べよ……」




 ★薬草軟膏とエナジーキノコ販売

 金貨で逮捕されかけた悪夢から、数日後。


 六畳の部屋はいつも通り静かで、財布はいつも通り悲鳴を上げていた。


(貯金……まだやばい……。

 数日経ったのに、なんも回復してない……)


 ナオキはレシートの束をめくり、額を押さえた。


(生活費。家賃。リヴの教材。

 あと……普通に食費。普通に高い)


 リヴが心配そうに覗きこむ。


「ナオキ……また……おと、くらい……」


「暗い……? 財布の中身のことかな……」


 リヴは胸の前で指を揃え、小さくうなずいた。


「うん……からっぽ、みたいなおと……」


「正解だよ……」


 その時――ナオキの脳内でひとつ、軽率な光が弾けた。


(そうだ……金貨はダメだったけど、

 俺にはもっと“合法っぽい”異世界素材があるじゃん!)


「よし! 困ってる人に売るなら問題ない!!」


「……こわい……」


「薬草軟膏と――」


 ナオキは荷物から“緑色の壺”を取り出した。


「傷がすぐ治る“薬草軟膏”!」


 さらにもう一つ、“しわしわの干しキノコ”を取り出す。


「そして疲労が一瞬で吹き飛ぶ“エナジーキノコ”!!」


 リヴはマスク越しに青ざめた。


「ナオキ……それ……むこうでも……こわい……やつ……」


「大丈夫、大丈夫。

 だってこれ、需要あるでしょ?

 現代の企業戦士たち、疲れてるじゃん!」


「……それ……あぶない……」


「いやいや、合法合法。治療にも健康にも役立つ。

 疲労が吹き飛んで、傷が数秒で治るって、もう大人気よ!!」


「ナオキ……じしんだけ……つよい……」


「行くぞリヴ! 今度こそ稼ぐ!!」


「また……さいしょの言葉……」


 ドラッグストア前


 ナオキは胸を張って店に入った。


「すみませーん!

 これ、売りたいんですけど!」


 例のごとく、店員が笑顔で出迎え――

 次の瞬間、表情が固まった。


「え、えっと……これ……何ですか?」


「薬草軟膏。裂傷が3秒で治ります」


「3秒!?」


「こっちは“エナジーキノコ”。

 疲れが一瞬で消し飛びます」


「一瞬!? 消し飛ぶ!?」


 店員はめちゃくちゃ慌てて、後ずさった。


「お、お客様……これは……その……医薬品……ですか?」


「医薬品……?

 え、なんか、自然素材ですけど?」


「効果が完全に医薬品です!!!」


 店員は震える指でボタンを押し――


 警察と、なぜか厚労省職員が来た。




「お客様! これは“未承認医薬品の無届け販売”の疑いで――」


「え!? 俺なんもしてない!!」


「“疲労が吹き飛ぶ”と効能を言った時点で薬機法アウトです!」


「言葉だけで!?」


「“裂傷が数秒で治る”と言ったのもアウトです!!」


「事実なんですよ!!」


「事実とか関係ありません!!!」


 厚労省の人が薬草軟膏の壺を見て震えた。


「……これ、本当に3秒で治るんですか……?」


「はい。治ります」


「だめです!!!!!!!」


 リヴ

「ナオキ……やめよう……?

 もう……にほん……こわい……」


 警察

「成分不明、効果が強すぎる、原産国不明」

「しかも製造場所が“ヒビレア王国”? どこですかそれ」


「また……中東ってことで……」


「ありません!!」




 警察

「あなた、異世界で作られた薬を日本に持ち込んだんですか?」


「はい」


「はい、じゃないです!!!」


 厚労省

「未承認治療薬は人体に影響が――」


「いや、逆に治りますよ?」


「そういう問題ではありません!!!」


 そこへ、取調室の扉がゆっくりと開いた。


「失礼します、裁判官です」


「もう来た!!??」


 裁判官

「あなた……またですか」


「またって!? 今回は夢じゃ――」


 裁判官

「では判決を――」


 リヴ(半泣き)

「ナオキ……けいむ……いや……」


 裁判官

「――夢です」


「やっぱり夢かーーーー!!!」




「はっ……!!」


 汗ばんだナオキが飛び起きると、

 リヴがスプーンを持って覗いていた。


「ナオキ……きょう……また……こわい声……した……」


「夢か……!!

 よかった……厚労省も警察も裁判官も来てない……!」


 リヴ

「また……へんなもの……うろうと……した……夢……?」


 ナオキ

「絶対に売らない!!

 薬草軟膏も、エナジーキノコも、夢でも売らない!!!」


 リヴ

「よかった……。あさごはん……たべよ……」


「……うん。食べよう……」







 ★魔石でエネルギー革命


 金貨の悪夢から数日。


 月末が近づくと、財布の中身はさらに静かになり、

 ナオキは六畳の真ん中で膝を抱えた。


(……金貨もダメ、薬草もダメ……

 救いはどこだ……?)


 隣ではリヴが、さっき洗った食器をタオルで拭きながら

 不安そうにナオキを見ていた。


「ナオキ……おかね……まだ、たいへん……?」

「うん……」

「さっきより……さみしい音……する……」

「バレてる……」


 そのときだった。


 荷物の中から、青白く光る石がひとつ、

 ころりと転がった。


 ――魔石。


(……あったわ。国家規模の解決策が……!)


 ナオキは勢いよく立ち上がった。


「よし!! 魔石からエネルギーを取り出すことに成功したぞ!!」

「え!? いま!? ここで!?」

「見ろリヴ! これは完全に100%クリーンなエネルギーだ!!」


 ナオキは魔石を机に置き、

 なぜか延長コードのコンセントを持ち出した。


「日本のエネルギー革命家に俺はなる!!」

「ナオキ……おと……あぶない……」

「任せろ!! 俺は今、科学を超越した!!」


 超越してはいけなかった。






「いくぞ……魔石イン!!」


 ぱちん。


 次の瞬間――

 部屋の照明がバチバチと点滅し、

 冷蔵庫が勝手に唸りだした。


「ナオキ……ひかってる……!」

「魔石が! エネルギーを吐き出している!!」


 リヴが涙目になって袖をつかむ。


「ナオキ……これ……だめなやつ……!」

「大丈夫! 俺は今、未来をひら――」


 その瞬間。


 アパートのブレーカーが落ちた。


 同時に、外の電柱が「ボンッ」と音を立てて火花を散らした。

 周囲の家が次々と停電していく。


 数秒後。


 外に響く、サイレンの音。


「火事ですか!?」「停電発生!」「原因はどこだ!」


「ナオキ……くる……!」

「誰が!?」

「しらない……でも……くる!! いっぱい!!」


 窓の外を見ると、消防車・警察・電力会社の作業車が

 怒涛のように集まってきていた。


「お客様!!」

「あなたの部屋から異常な高エネルギー反応が!!」

「なぜアパートの一室から電力網が逆流しているんです!」


 ナオキは魔石を両手で抱えた。


「ち、違うんです!! ただ魔石で電気を――」

「魔石???」

「えっと……ヒビレア王国の……」

「どこですかそれ!!!!」


 電力会社の責任者が叫んだ。


「国家レベルの事故ですよこれは!!」


 警察が部屋に入ってくる。


「あなた、“無届けで発電設備を稼働させましたね?”」

「え!? 発電設備!? これ石ですよ!?」

「電力網に負荷をかけた時点で違法です!!」


「ナオキ……たいほ……?」

「わかんない!! 俺もわかんない!!」


 非常灯の下、魔石だけが静かに光っていた。


「危険物かもしれません! 回収します!」

「やめろ! それは俺の――」


「――それ、もしかして核融合してません?」

「してません!!!!!」

「でもエネルギー値が異常なんです!!」

「異世界だから!!!!」


「異世界は国として承認されてません!!!」

「ですよねーーー!!!!」






 警察がナオキを連れていく途中。


 取調室のドアが開いた。


「失礼します。裁判官です」

「来た!!! また来た!!!!」


「今回の罪状はですね……

 ・無届け発電設備の運用

 ・電力網逆流による広域停電

 ・危険物不明物体の保持

 ・虚偽の原産国申告

 非常に重いですよ」


「虚偽じゃない! ホントにヒビレア王国!!」

「存在しません」

「ですよねーーーーーー!!!!!!」


 リヴが半泣きで袖を引く。


「ナオキ……けいむ……いや……」

「俺もいやだ!!!」


 裁判官が静かに言う。


「判決を――」


(終わった……異世界帰り即、国家反逆罪……)


「――これは夢です」

「え?」

「夢です。起きなさい」





「――ッ!!!」


 ナオキは布団から跳ね起きた。


 六畳の部屋。

 停電していない。

 魔石も光っていない。


 リヴが目をこすりながら覗きこんでいた。


「ナオキ……こわい声……した……」

「……夢か……!! よかった……!!

 電力会社も警察も裁判官もいない……!!」


 リヴは小首をかしげた。


「ませき……ま……?」

「魔石はもう触らない!! 二度と触らない!!」

「……あさごはん……たべよ……?」

「食べる……食べます……」


 その朝、

 ナオキの「エネルギー革命家になる」夢は

 完全に消えた。



「……そっか。

 異世界のものを持ち込んでも、現代じゃ金にならないんだよな」


「だから俺、いつも財布が軽いのか……」


 ナオキは膝に手を置き、深く息を吐いた。

 夢の残滓がまだ胸の奥でざわついている。


 リヴがそっと隣に寄る。


「……ナオキ……あぶない夢、みすぎ……」

「もう、いっしょに……のんびりして……?」

いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。

ブックマークや評価、感想ひとつひとつが、「もう少し先まで書こう」と思える大きな力になっています。

これからも、直輝とリヴの行き先を一緒に見守っていただけたら嬉しいです。

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