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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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閑話:街に“はじめての居場所”ができた日

 夜明け前の工房には、すでに人影があった。

 扉の前で小さく背伸びをしながら箒を握るリヴ。

 夜露で光る木の床を、ひたむきに拭いている。


「……今日、来るんだよね。最初の人が」


 焚き火を熾していたナオキが、肩越しに声をかける。


「緊張してるのか?」


 リヴはぶんぶん首を振った。


「緊張じゃなくて……なんか……胸の奥が熱いというか……

 森でひとりだった頃には、絶対なかった気持ち」


 ナオキは微笑んだ。


「今日から“街の工房”になるんだもんな」


 リヴは箒をぎゅっと握りしめた。


 夜明け前の街は、いつものように薄暗く、寒かった。

 だがその朝——空気に、わずかな“期待”が混ざっていた。


 ヴァルター商会の掲示板に貼られた新しい紙。

 それが一晩で街じゅうに広まっていた。


【新規工房・縫い子募集】

 仕事内容:布製品の縫製

 対象:女性・子ども・体力に不安のある者

 条件:経験不問

 給金:日払い

 昼食つき

 必要なもの:手を動かす意欲


「……本当に、昼食つき……?」

 市場で野菜を並べるおばさんが、張り出した紙を凝視した。


「日払い……って、あの“その日のうちに銀貨が手に入る”ってことよね……?」

 隣の若い母親が、赤ん坊を抱きながら小声で呟く。


「うそみたい……」

「夢みたいだ……」


 夢は、こんな形で広がるらしい。




 パン屋の娘メリッサは、掲示板の前で震えていた。

 月に何度か寝込む日があり、仕事を失い、

 学も技もなく——

 “生きていける気がしなかった”。


「……わたしにも、できるのかな……?」


 横から、見知らぬ女が声をかけた。


「手が動けばいいんだって。書いてあるだろ」


「で、でも……」


「大丈夫だよ。わたしみたいな、腰を痛めた年増でも歓迎ってさ」


 その女は、笑いながら自分の腰を押さえた。


「……泣くのは、働き始めてからにしな。

 今日泣くと、目ぇ腫れて針が通らなくなるぞ」


「……っ」


 メリッサの頬から、自然と涙がこぼれた。


 たった一枚の紙が、

 希望の形をしていた。




 昼前、冒険者ギルドにも貼られた。


 ミーナは紙を貼りながら、

 よくわからない胸の熱さに戸惑っていた。


(……すごい……

 “女性・子ども・体力に不安がある者”……

 こんな募集、ギルドでは見たことない……)


 ギルド前を通る老女が立ち止まった。


「……働ける場所があるのかい……?」


 ミーナは微笑んだ。


「ええ。手が動けば大歓迎だそうです」


「……はあ……

 この年で働けるなんて……

 もう一度、胸を張れるのかねぇ……?」


 涙が浮かんでいた。


 ミーナの胸がきゅっと痛くなる。


(……あぁ……これ……

 本当に街を変えるんだ……)




 子どもたちが駆け回る。


「ねぇ、見た!?」「知ってる!」「働けるの!?」


「昼ごはんも出るってよ!」

「すげぇ! それって“毎日お腹いっぱい”ってことだろ!?」


「おれ、字読めるようになるかな……」

「わたしも……! わたしも、学びたい……!」


 普段は“働く大人の邪魔”にならぬよう

 隅に固まっていた孤児院の子たちが、

 初めて——

 “自分の未来”を口にした。




 午後、ヴァルター商会の前には行列が生まれていた。

 見たこともない光景だった。


 腰の曲がった老婆、

 腕に子どもを抱いた母親、

 読み書きができない若い娘、

 日雇いで疲れた男、

 昼に倒れた経験のある少女。


 最前列のラナが、胸いっぱいに空気を吸った。


「……すごい……

 こんなに“希望のある行列”……

 見たことない……」


 セラも涙を堪えながら並ぶ人々を見渡す。


「あなたたち……

 もう、泣かなくていいのよ……

 月の日も……

 お腹すかせたまま働くのも……

 子どもを置いて走り回るのも……

 もう終わるのよ……」


 リヴは胸がいっぱいで、何度も瞬きをしていた。


「ナオキ……

 なんか……

 わたしの胸のなか、あったかい……」


 ナオキは苦笑した。


「……俺の方が、あったかいよ。

 こんな光景……

 見れるなんて思わなかったから」


 リヴは袖をきゅっと握った。


「この街……変わるよね……?」


「変わるよ。

 今日から——な」


 リヴの瞳は涙で光っていたが、

 それ以上に、強い光を宿していた。




 商会の扉が開く。


 ヴァルターが姿を現し、

 震える声で言った。


「……一人残らず、力になろう。

 ここに来た者は全員——

 “この街の工房の仲間”だ」


 その言葉に、歓声ではなく……


 涙の音だけが広がった。


 すすり泣き。

 肩を震わせる音。

 手を握る音。


 “救われる瞬間”の音だった。


 ***


 リヴがぽそりと呟いた。


「……ナオキ。

 これって……

 本当に“街が変わる音”だよ」


 ナオキは声が震えないようにゆっくり言った。


「変わるんじゃない。

 変えるんだよ。

 リヴ……一緒に」


 リヴは泣き笑いしながら、力いっぱい頷いた。


「うん……!

 一緒に……!」



 ——この日。


 街の片隅で貼られた一枚の紙が、

 のちに人々から


「希望の紙」


 と呼ばれるのは、

 まだ誰も知らない話だった。




「うん。最初の一歩の日だから……

 ちゃんと綺麗にして迎えたいんだよ」


 その言葉の直後だった。


 工房の前の通りがざわざわと揺れた。


「……おい、リヴ。あれ……」


「えっ?」


 二人が振り向くと――

 まだ朝焼けすら始まらない薄闇に、

 とんでもない行列ができていた。


「ちょっと……これ……」


 リヴの目が見開かれる。


 通りの端から端まで、

 母親、少女、老婆、少年、若い男性まで、

 何十、何百という人が列になっていた。


 その中には、

 昨日まで肩を落としていた顔、

 孤児院の子どもたち、

 読み書きができないと嘆いていた少女、

 腕を怪我して外仕事ができなくなった若い職人、

 泣きながら受付に並んでいた女性冒険者の姿もあった。


 今日だけはみんな、

 胸を張って……ではないけれど、

 “未来”を見るような目をしていた。


「……す、すごい。

 工房なのに……お祭りみたい……」


 リヴが呟く。


 ナオキは、静かに息を吸った。


「よし。開けよう」


 ゆっくり扉を押す音が響いた瞬間――

 工房前の空気がふっと温まった。


 朝一番に入ってきたのは、

 小さな子を抱いた女性だった。


「……本当に……働けるんでしょうか」


 その声は震えていたが、

 怯えではなかった。


 リヴが一歩前に出て言う。


「うん。大丈夫。

 今日からここは“働ける場所”だよ」


 母親は泣きながら子を抱きしめた。


「ありがとう……本当に……ありがとう……」


 その言葉に、

 後ろの行列がざわりと揺れる。


「次! 名前と得意なこと教えてくださーい!」


 声を張ったのは、商会から派遣された新人事係だ。

 彼らがバタバタと動き、名簿へ記入していく。


 工房はあっという間に賑やかな空気に包まれた。


 ケルドが入口の柱に背を預けながら、

 ため息混じりに笑う。


「……こりゃ、予想以上だな。

 街のやつら……こんなに限界だったのか」


 ナオキはうなずいた。


「働き場がなくて諦めてた人、

 読み書きできないことを恥だと思ってた子、

 月のものの日に布を何度も洗って泣いてた少女、

 全部……ここに来た」


 リヴは胸に手を当てた。


「……ここで、“生活の続き”が始まるんだ……」


 工房内の奥――

 広いテーブルの前に、女性たちと子どもたちが集まっていた。


 ナオキはゆっくり前に出る。


「今日は“最初の日”だ。

 いきなり全部できなくていい。

 まずは針と糸の扱い方を覚えるところから始めよう」


 ざわ……と空気が揺れる。


「縫ったこと……一度もないんですが……」


「針を持つの、怖いです……」


 少年が小さく手をあげた。


「俺、指が不器用で……

 ちゃんと縫えるかな……」


 ナオキは穏やかに微笑んだ。


「できるようになるよ。絶対に。

 この工房は“できるまで一緒にやる場所”だ」


 その瞬間、

 泣きそうな顔がいっせいに緩んだ。


 リヴがやってきて、

 手本の布を広げる。


「ねぇ、見て。

 こんなふうに指を置けば、怖くないよ」


 年配の女性が驚いたように目を丸くする。


「まあ……まぁ……

 森の子に教わる日が来るとはね……」


 リヴは笑った。


「わたしね、人に教えるの、好きなんだ」


 その優しい声に、

 あちこちで小さな笑い声と涙が生まれた。


 工房の向かい――

 別室の戸が開いた。


 学びの部屋。


 机と紙、

 簡単な文字の見本が整然と並んでいる。


 最初に入ってきたのは、孤児院の少年少女たち。


「うわぁ……机だ……!」


「ほんとに……書けるようになるの……?」


 ヴァルター商会が探し出した教師が、

 柔らかな笑みで迎える。


「心配しなくていい。

 ここでは誰も怒らない。

 読み書きができるようになるまで、

 何度でも一緒に練習するよ」


 孤児院の少女が、

 涙を一筋落としながら席に座った。


「……字が読めたら……

 手紙……書ける……?」


「書けるよ。書けるようにするための部屋だからね」


 その言葉だけで、

 少女は両手で顔を覆って泣いた。


(ああ、これは本当に……街のための場所だ……)

 ナオキは胸が熱くなるのを感じた。


 昼前になり、

 食堂の扉が勢いよく開く。


 湯気がもくもくと上がり、

 香ばしい匂いが広がった。


「ご、五百人分できましたー!!」


 給食班総出、満身創痍。


 鍋の中には、

 熱々のスープと、柔らかく煮込んだ野菜。


 孤児院で空腹に耐えていた子たちが、

 匂いにつられて集まってくる。


「……これ……

 食べてもいいの……?」


「もちろん! 今日働く人はみんな食べていい!」


 最初のひとくちを口に入れた少女が、

 驚いたように固まった。


「……あったかい……

 ……あったかいよ……!」


 二口、三口。


 あっという間に涙がぼろぼろこぼれ始める。


「どうして……

 どうしてこんなに……優しい味するの……!」


 給食班の年配の調理係が、

 少女の頭をそっと撫でた。


「苦しい思いした子にはね……

 温かいもんがいちばん効くんだよ」


 隣で少年が鼻をすすっていた。


「うまい……

 こんな……スープ……

 初めてだよ……」


 孤児院の職員たちも、

 こっそり袖で涙を拭っていた。


 そして、工房に戻ると、

 針と糸で縫っていた女性たちの手元に、

 少しずつ“形”が生まれていた。


「あっ……縫えた……!」


「わたしも……!

 ちょっと歪んでるけど……

 これ、わたしが作ったんだ……!」


 少年が胸を張る。


「おれ、縫える! 縫えるぞ!」


 周りで笑い声が弾ける。


「ねぇ見てよ!

 わたしもできた!」


「おれも! おれも!」


 工房の中が、

 嬉しさと誇らしさでいっぱいになった。


 ナオキは、

 その光景をゆっくり見渡しながら思った。


(……やってよかった)


(この街に……

 “生きるための土台”を作れたんだ)


 夕暮れになる頃には、

 工房の入口で話す声が絶えなかった。


「今日はありがとう!

 また明日も来ます!」


「字の勉強、すごく嬉しかったです!」


「スープ……ほんとに美味しかった……!」


「わたし……初めて……

 “働きたい”って思った……」


 ナオキは皆に手を振って見送り、

 リヴは扉を閉めながら小さく呟いた。


「ねぇ、ナオキ……

 今日……すごい日だったね」


「そうだな。

 でも、これで終わりじゃない。

 ここからが始まりだよ」


 リヴの瞳が、夕焼けの光で輝く。


「わたしね……

 今日みたいな日が……ずっと続く未来がいいな」


「きっと続くさ」


 リヴはにっこり笑った。


「うん。

 だって……

 みんな……

 未来を“少しだけ信じられる顔”して帰ったから」


 工房の扉が、

 ゆっくりと静かに閉じられる。


 それは――

 街の“新しい一日”のはじまりを告げる音だった。


 朝焼けに照らされたヴァルター商会の前には、

 もうすでに“列”どころではない光景が広がっていた。


 ざっと見ても、百人は超えている。


 老人、若い娘、子どもを抱えた母親、孤児、

 仕事を失った者、字の読めない者、体の弱い者。

 みんな、胸の前に小さな希望を抱えて立っていた。


 ヴァルターが扉を開けた瞬間、

 街の空気が、震えた。


「お、おい……この人数……予想の十倍はあるぞ……」


 商会の若手が青ざめる。


「十倍どころじゃねぇ……

 百倍……いや、千倍の“重さ”だ……」


 ヴァルターは静かに言った。


「まず座らせろ。

 外に立たせたままでは話にならん」


「は、はいッ!」


 椅子が足りない。

 いや、部屋が足りない。


 商会の倉庫が即座に“臨時会場”になり、

 隣の建物まで借り上げて、ようやく人を入れ始めた。


 それでも、列は途切れない。


 セラが呆然と口にした。


「……街中の女の人が……全部来てるんじゃ……」


 ラナは少し震えていた。

 その手は、興奮と不安と期待で汗ばんでいた。


「これ……ナオキお兄さん……想像してた……?」


 ナオキは、列を見上げた。


「……してない。

 でも……こんなに困ってたんだな、この街は……」


 リヴは小声で呟いた。


「ナオキ……

 誰も知らなかった“痛み”が……

 あの列ぜんぶなんだよ……」


 ナオキは拳を握りしめた。


「じゃあ……全部救うしかないだろ」


 リヴは涙を浮かべて頷いた。


「——うん」


 ***


 最初の面接が始まった。


「ほ、本当に……経験なくてもいいんですか……?」


 震える老女。


「ええ。手が動けば十分ですよ」

 ナオキは優しく言う。


 老女は肩を震わせ、突然泣き出した。


「い、いきてて……よかった……

 生きてて……働ける日が来るなんて……」


 列の後方まで聞こえるほどの嗚咽だった。


 それが引き金になったように、

 次の女も、次の女も、涙を浮かべて現れる。


「子どもが三人いて……昼間働けなかったんです……」


「読み書きができなくて……市場の仕事を断られて……」


「月の……いや……体調が悪い日があって……仕事を失って……」


 言葉にしない“真実”があった。


 “働く機会がなさすぎた”街。


 ナオキは彼女たちの手を、一人ずつ受け取った。


「大丈夫です。

 ここでは生きていけます。

 あなたの人生、今日から変わります」


 その言葉に、胸を押さえて泣く者が多かった。




 孤児の少年が来た。


「ぼ、僕……字が読めません……

 でも……働けますか……?」


 ナオキは笑って頭を撫でた。


「読み書きは工房で覚えればいい。

 働きながら学べる場所を作るよ」


 少年は拳を握り、涙を落とした。


「や、やります……!

 頑張りますから……捨てないでください……!」


 その言葉が、いちばん痛かった。


 リヴのまつげが震える。


「……ナオキ……わたし、もっと頑張る……

 学びの部屋、ぜったい開く……

 教えて、守る……

 子どもたちが、泣かないように……」


「頼むよ、リヴ」


「任せて」




 昼を過ぎても、面接が終わらない。


 列は短くならない。

 逆に伸びている。


 ナオキは汗を拭った。


 ヴァルターが苦笑しつつ肩を叩く。


「……ナオキ。

 お前のせいで街の半分が動いたぞ」


「怒ってます?」


「いや。

 感謝してる」


 そう言って、ヴァルターは少しだけ涙をぬぐった。


「私の娘も……苦労してきた。

 街の女も……子どもも……

 彼女らを救ったのは……お前だ。

 本気で礼を言う」


「……俺なんて……」

 ナオキは視線をそらす。


 リヴが胸を膨らませた。


「ねぇナオキ、もっと胸張っていいんだよ。

 すごいこと、してるんだよ。

 街じゅうが動いてるんだよ?」


 ナオキは照れた。


「リヴにそう言われると……弱いな」


「ふふっ」


 二人のやり取りに、列から漏れる。


「……あれが噂の……?」

「商会に“奇跡を起こす外の人”が来たって……」

「本当に存在したんだ……」


 リヴが得意げに胸を張った。


(ナオキは……わたしの人だよ)


 表には出さないが、表情にじみ出ていた。




 夕方。

 面接を終えた人々の顔には、疲労と涙の跡があったが——


 その目には“光”があった。


「働ける……明日から……」

「ご飯も……食べられる……!」

「子どもも預けられるって……!」

「字……覚えられるんだぞ……!」


 街角では、まるで祭りのように、人々が寄り添って話していた。


 ラナがぽそりと呟く。


「……これ……全部……

 あの面接の台帳に名前をもらった人たち……」


 セラは涙をぬぐった。


「ナオキ様……

 本当に……街を救ってくださったのですね……」


 ナオキは首を振る。


「まだ救ってないよ。

 これからだ」


 リヴは、ナオキの袖をつまんで言う。


「でもね……

 “救われた顔”が……

 こんなにたくさんあるんだよ?」


 ナオキは答えられなかった。


 胸が熱くて——言葉にならなかった。




 夜。


 ヴァルターが工房の場所の地図を広げた。


「ここを使え。

 明日から改装に入る」


「こんなに早く!?」


「街が今日、動いた。

 なら商会は明日動かす。

 それが商売人だ」


 ヴァルターは少し笑って言った。


「ナオキ。

 今日のことを……

 私は一生忘れん。

 街の人間も忘れん。

 お前は……街の未来そのものだ」


 ナオキは照れながら、黙って頭を下げた。


 リヴは小声で囁く。


「……ねぇナオキ。

 工房ができたら……

 わたし、みんなに言うね。

 “この街は、あなたの優しさで変わったんだよ”って」


「やめてくれよ、恥ずかしいだろ」


「ううん。

 わたしは誇りなんだよ?」


 ナオキは顔をそらしながら言った。


「……リヴのおかげだよ。

 俺が動こうと思えたのは……」


 リヴは照れたように、でも嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ……これからも二人で動くんだよ?」


「……ああ」




 ——こうして、面接の日は終わった。


 街にはまだ、

 “なにが起ころうとしているのか”

 正確には分からない人たちばかりだ。


 しかし。


 その夜、街じゅうの家の灯りは、

 いつもより少しだけ……あたたかかった。


 誰もが胸の中で小さく呟いていた。


「……今日、希望をもらった」


 やがてこの日を、街の人々はこう呼ぶようになる。


「希望の列の日」


 その始まりの中心には——

 ナオキ、リヴ、

 そしてヴァルター商会があった。

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