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32型テレビが繋g...(略)~手取り15万、現代物資(10秒制限)で成り上がる~  作者: ひろボ


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閑話:ギルド受付嬢ミーナと“謎のスライム依頼騒動”

 ◆ 冒険者ギルドの日常が破られた日


 昼前の冒険者ギルドは、今日も安定のカオスだった。


「てめぇのせいで依頼失敗したんだろ!」

「いやお前が酒飲んで寝坊したからだろ!」


 殴り合いが始まり、受付嬢が叫ぶ。


「ギルド内での喧嘩は禁止ですっ!!」


(……はぁ……今日も平和……)


 受付嬢ミーナは、胸に手を当てて溜息をついた。


 栗色の髪、ふわっとした雰囲気、

 ついでにちょっと背が低くて、冒険者たちからは


 “ギルドの灯り”


 なんて呼ばれている。

 本人は恥ずかしくて仕方がないけど。


 だが、その“灯り”が――

 今日は大嵐の前触れを照らすことになる。




 ◆ 掲示板がざわついた瞬間


 ミーナが新しい依頼票を貼った瞬間、空気が変わった。


【採取依頼:スライム核および残留ゼリー質の回収】

 ※焼却禁止

 ※密封して持ち帰ること

 依頼主:ヴァルター商会

 報酬:銀貨3枚


「………………は?」


「スライムの……残り?」

「核はまだ分かるが、ゼリーはゴミの塊だろ!」


「なんで銀貨3枚!? アホか!!」


「ちょ、おいミーナ! 本物かこれ!」


「は、はいっ……!」


 掲示板の前に、ワラワラと人が群がる。


 スライム素材はほぼ価値ゼロ。

 通常なら銅貨1〜2枚。


 その“ゴミ同然”の素材を――


 高額で買い取る。


 街の冒険者全員の脳がフリーズした。




 ◆ 受付嬢ミーナ、大混乱に巻き込まれる


「ミーナちゃん! 用途はなんだ!?」


「どこの薬師の悪ふざけだよ!」


「商会は何考えてるんだ!?」


「もしかして……食うのか?」


「スライム鍋はやめろ!!」


 ミーナは涙目で両手を振る。


「ち、違います!

 用途は……商会が“秘匿”って……!」


「秘匿だと!?」


「商会が!?」


「え、怖……」


 ミーナは封筒を抱きしめるように持ちながら、


「ゆ、用途は……ギルドにも伝えられてないんです……

 “依頼内容だけ掲示しろ”って……」


 冒険者たちは一斉に顔を見合わせた。


「……ガチじゃん」


「秘匿で依頼出すって、商会も本気だな」


「何か始まるのか……?」


 ミーナ自身も胸がざわついた。


(用途を隠すなんて……

 ヴァルター商会が“本気で動いてる”時のやつ……)




 ◆ ヴァルター商会の使者、降臨


 ギルドの扉が開き、冷たい風が吹き込んだ。


 濃紺の外套に、品のある足取り。

 ヴァルター商会の使者だ。


 ミーナは思わず姿勢を正した。


「こ、こちらへどうぞ……!」


 使者は淡々と追加書類を出す。


「質より量だ。できる限り集めてほしい。

 核は割って構わない。ゼリーは必ず密封袋へ。

 以上だ」


「用途は!? 商会は何に使うんですか!」


 冒険者たちが一歩前に出る。


 使者は一瞥した。

 その目は“記録する価値もない”とでも言いたげに冷静だ。


「用途を知るのは商会だけでいい。

 ギルドも冒険者も関係ない」


「…………」


 そのまま踵を返し、無言で去った。


 ざわあああああっ――


 ギルドが揺れた。




 ◆ 片耳のベテラン・グラッドの分析が深すぎる


「……おもしれぇことになってきたな」


 人混みをかき分けて現れたのは、

 片耳のベテラン冒険者・グラッド。


「グラッドさん……! これ何なんですか!」


「用途非公開で、報酬が跳ね上がる。

 つまり――」


 グラッドは依頼票を指で弾いた。


「商会が“儲けの核心”を隠してるってこった」


「な、なんだってー!!」


「その核心、多分、とんでもねぇ儲けだ」


「スライムで!?」


「この街、終わった……」


「いや、終わるんじゃなくて動くぞ」


「え、何が!?」


「知らん」


「知ってねぇのかよ!!」


 ギルドに笑いが起こるが――

 誰もこの依頼の重さを理解していない。




 ◆ ギルドマスター、読むだけで空気が変わる


「お前ら、騒ぐなっ! ミーナが困ってるだろう!」


 奥からギルドマスターが出てきた。

 白髪混じりの大柄な男で、顔の傷が歴戦を物語る。


「マスター! これ見てください!」


 ミーナが依頼票を差し出す。


 マスターは目を細め、短くうなった。


「……ヴァルター商会が“秘匿”とは……

 街がひっくり返る前触れじゃな」


「ひっくり返る!?」


「スライムで!?」


「何が起こるんだよ……」


 マスターは、しずかに言った。


「商会長には娘がいるからな。

 あの男が本気で動くのは、“街の庶民が得をする時”だ」


「え、意外に優しい……?」


「そんな話初めて聞いたぞ!」


「知らんけどな」


「またそれかよ!」


 混乱の中、依頼は瞬く間に埋まっていった。




 ◆ 森へ向かう冒険者たち


「おい新米、袋忘れるなよ!」


「スライムのゼリー素手で触るなよ!」


「うわぁ……今日のギルド、スライム臭がする……」


「それお前の装備が臭いだけだろ」


「ひどい!!」


 そんな騒がしい中、

 グラッドは若手2人を連れて森へ向かっていた。


「グラッドさん、本当に用途知らないんです?」


「知らん。が――」


 グラッドは森の入口で立ち止まった。


「商会が隠す時ってのは、“街が変わる時”だ」


「街が……?」


「庶民向けの生活用品か……

 病気を減らすための何かか……

 女が笑えるようになる道具か……」


「え、そんなの分かるんですか?」


「商会長には娘がいるからな」


「……なんか説得力ある!」


「知らんけどな」


「やっぱ知らんのかい!!」




 ◆ 森の湿気とスライムの影


 森に入ると、じめっとした空気が全身を包む。


「スライム出るかなぁ……」


「出るに決まってんだろ。ほら、足元を見ろ」


 べちゃ。


「ぎゃああぁぁ!!? 足踏んだ!?」


「スライムは踏むな! 臭いんだよ!」


 足元の青いゼリーが揺れる。


「核が奥にあるやつだな。ほら、外殻揺らすぞ」


 グラッドが大剣で風だけ起こし、外殻を震わせる。


 ぽとり。


 小さな透明の核が落ちた。


「新米、割れ!」


「はいっ!」


 ぱきん。


 スライムの体が一気に力を失い、地面に広がる。


「袋、袋! ゼリー全部いれろ!」


「くっさ!!」


「我慢しろ。銀貨3枚だぞ」




 ◆ 森の奥――スライム多すぎ事件


「グラッドさん……なんか音が……」


「いるな。五体……いや六体か」


「群れ!? スライムって群れるの!?」


「普段は群れねぇけど……誰かが刺激したんだろ」


「だ、誰が……?」


「お前だよ新米」


「俺かよぉぉ!!?」


 ずるんっ、と6体の青スライムが迫る。


「焼却禁止だからな! 核だけ狙え!」


「無茶言わないで!!」


「いくぞ、若造ども!!」


 グラッドが地面を蹴る。


 大剣で広範囲に風を巻き上げ――

 スライムの外殻だけを切り裂く。


「核、落ちた! 今だ!」


 若者が核を叩き割る。


 別の若者がゼリーを袋に詰める。


「これ……こんなに大量……?」


「街が変わる量かもしれんな」


「街が変わるゼリーって何!?」


「知らん」


「やっぱ知らんのかーーーー!!」




 ◆ 帰り道~グラッドの“核心に触れそうで触れない”話


 森を抜け、帰り道。


「でもグラッドさん……

 スライムで街が変わるって、どういう意味なんです?」


「商会長の娘は、女の不便をよく話すらしい。

 洗濯、寒さ、怪我、衛生、いろいろだ」


「へぇ……」


「街の女が得する道具が出る時、

 あの男は静かに動くんだよ」


「もしかして、それに関係ある……?」


「知らん」


「うわああああ!!」


「だが、用途を隠すってことは……

 “独占すると決めた商売”なんだろう」


「やっぱりでかい話なんだ……」


「お前らのゼリーで、街の歴史が変わるかもしれんな」


「スライムで!?」


「スライムで」




 ◆ ギルド帰還・ミーナ、頬を赤くする


「おかえりなさい! 怪我はありませんか?」


 ミーナが袋を受け取り、

 鼻先をひくひくさせて――


「す、すごい量……そしてすごい匂い……!」


「だろ? 俺たち頑張ったんだぞ」


「本当に……ありがとうございます……!」


 ミーナはぺこりと頭を下げた。


「あの……この素材……

 街の“重要案件”に使われるそうです」


「重要案件!?」


「そんな大事なの……?」


「わたしたち受付にも用途は隠されていますが……」

 ミーナは少しだけ笑った。


「……街の女の子たちが笑う未来につながるといいですね」


 若者の胸が、ズキュンと音を立てた。


「ミーナちゃん……(天使か……)」


「えっ!? 何か言いました!?」


「いえなにも!!」




 ◆ ギルドマスターの静かな言葉


 山のように積まれたスライム袋を見ながら、

 ギルドマスターがぽつりと呟く。


「……街が、良くなる」


「マスター、そんなに確信あるの?」


「あるとも。

 ヴァルター商会はな……

 “庶民が救われる時だけ”静かに動くんだ」


「へぇ……」


「知らんけどな」


「またそれーーー!!」




 ◆ 商会使者・二度目の来訪


 夕刻。


 ギルドの扉がまた音を立てて開いた。


 今朝と同じ、濃紺の外套の商会使者が現れた。


「――依頼の進捗を確認に来た」


 その声だけで、ギルド内が静まる。

 冒険者の喧騒が一瞬止まるほどの“圧”。


「ひっ……来た……」

「またあの怖い人……」

「沈黙の化身……」


 ミーナは慌ててデスクから立ち上がる。


「こ、こちらにスライム素材は全てまとめています!」


 使者は頷き、袋山をざっと数え、

 まるで“在庫棚をチェックする店員”のように淡々と手帳に書き込む。


「……十分だ。

 街の者たちもよく働いてくれた」


 その短い言葉に、若手がざわつく。


「褒め……たよな、今の……?」

「商会が褒めた!? あれが!? あの無表情が!?」


 ミーナだけが小さく笑った。


(やっぱり……裏で何か大きな計画が動いてるんだ……)




 ◆14 使者からの“追加依頼”


「ギルドマスターはいるか」


「ここだ」


 マスターが奥から出てくる。


 使者は封筒を一つ渡した。


「――追加依頼だ。

 スライム素材の“継続回収”。

 当分、この街で最優先の依頼にしてくれ」


「最優先……?」


「理由は言えん。

 だがこの依頼は“街の未来”に関わる」


 若者たちが息を呑んだ。


 ミーナも胸が高鳴る。


(街の未来……

 やっぱり……そんな大事な計画なんだ)


 マスターは封筒を重く受け取り、短く頷く。


「分かった。ギルドとして全面協力しよう」


「助かる」


 使者はそれだけ言い残し、また静かに帰っていった。




 ◆15 残されたギルド


「街の未来って何だよ!?」

「スライムで!? スライムで未来が!?」

「明日から俺たち、“未来の材料集めてくるわ”って言えるの……?」

「ちょっとカッコいいな……」


 冒険者たちの騒ぎに、

 ミーナはやわらかく、でも真剣な声で言った。


「……きっと、いいことですよ」


 冒険者全員がミーナの方を見る。


「まあ、ミーナちゃんが言うなら……」

「それなら……いい、のかな……」

「癒やされるぅ……」


 マスターが咳払いする。


「落ち着け。

 この依頼は……おそらく“生活の底”に関わる案件だ」


「底……?」


「女の生活とか、子どもの腹とか……

 そういうところを変える計画じゃ」


「なんで分かるんですか?」


「商会長には娘がいるからな」


「説得力あるな!?」


「知らんけどな」


「結局言うんかい!!」




 ◆16 ギルド受付嬢ミーナ、ひとり考える


 騒ぎがひと段落したころ。


 ミーナは受付のカウンターで、

 今日集まったスライム袋を見つめていた。


(……スライムのゼリーなんて、誰も欲しがらなかったのに。

 どうして急に……?

 それもヴァルター商会が……用途も隠したままで……)


(何のためなんだろう……)


 ミーナは、ギルドの窓口に立つたび見てきた“街の現実”を思い返した。


(……薬にするには聞いたことがないし……

 食べ物でもないし……

 戦いにも使えないし……

 商会がこんなに大量に欲しがる理由って……何?)


 胸の奥に、小さな不安と、説明のつかない期待が同時に浮かぶ。


(……分からないけど……

 あの商会が本気で動いてるなら……

 ただの悪い話じゃない……はず……)


 けれど――

 “誰かを助けるためのもの”かどうかなんて、ミーナには分からない。


(……ただ、こういう“静かな動き”のあとには……

 決まって、“何か”が起こるのよね……)


 ミーナは依頼票を見つめながら、ひとりごちた。


(本当に……何が始まるんだろう……)




 ◆ グラッドたちPT、もう一度依頼票を見る


 冒険者席では、グラッドが依頼票を手にしていた。


「……スライム核およびゼリー質の回収。

 焼却禁止。密封必須。

 用途不明。報酬高額。依頼主はヴァルター商会」


「やっぱり……何度読んでも怪しいっすね」

「絶対ヤバいってこれ……」


「ヤバいのは、お前らの想像力だ」


「グラッドさんはどう思うんです?」


「……女が得するものだろ」


「えっ、なんで分かるんです?」


「商会長には娘がいるからな」


「またそれですか!」


「知らんけどな」


「結局知らねぇのかよ!!」


 ギルド中に笑いが起こる。




 ◆ ギルドマスターの“静かな確信”


 マスターは受付に立つミーナに声をかけた。


「ミーナ、今日も大変だったな」


「いえ……でも……

 なんだか、不思議と嫌な感じはしません」


「そうだろうな」


 マスターは山積みのゼリー袋を見つめて言った。


「街はな……

 庶民の生活が変わる時、

 必ずどこかがざわつき始める」


「ざわつき……?」


「そうだ。

 石けんが広まった時も、

 読み書き教室が始まった時も、

 女の働き口ができた時も……

 最初は“何が起きるんだ”って騒ぎになった」


「……じゃあ……今回も……?」


「街が変わる前触れだ」


 ミーナはその言葉に、はっと息を呑んだ。




 ◆ そして――街の端で、歴史は動き始める


 荷馬車がギルド前に停まり、

 ヴァルター商会の職員たちがゼリー袋を引き取っていく。


「あれ全部……何になるんだろうな」

「商会しか知らねぇんだろ、あんなの……」


 夕陽を受けて輝く荷馬車の列。


 その中には――

 街の未来を変える“原材料”が積まれていることを、

 誰もまだ知らない。


「ミーナちゃん。明日も出るんだろ?」


「はい。……しばらく続くそうです」


「よし、明日も稼ぐぞお前らァ!」


「おおおおお!」


 ギルドは活気に満ちていた。


 その中心で、ミーナはそっと呟いた。


「……どうか、この街が少しでも良くなりますように」


 静かで、けれど確かな祈りだった。




 ◆ ミーナの微笑みは街の希望


 ギルドの外で風が吹き、

 どこか遠くから子どもたちの笑い声が聞こえてくる。


 ミーナは受付の窓からそっと空を見上げた。


(スライムの素材で街が変わるなんて……

 ちょっと信じられないけど……)


(でも、変わるなら――

 そのきっかけに、ギルドも関われているなら……)


 ミーナは小さく、胸に手を当てた。


「……なんだか、嬉しいです」


 その笑顔はほんのり赤く、

 夕暮れの光に照らされて――


 それは確かに“街の明日”の色だった。

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