8.コンテスト
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エマは、ミザリーが帰ってきたその日から、中断していた習い事を再開させられ、翌朝からは、容赦なく学校へ送り出されました。
体の具合はまだ戻らず、心も沈んでいましたが――
(ミザリーと一緒にいるよりは……)
と、自分を励まして屋敷を出ました。
学校に着くと、できるだけ明るく振舞いました。
クラスの子達も、先生から事情を聞かされていたので、いつもより優しく接しようとしていました。
けれども多くの子は、どう声をかければよいのか分からず、遠くからそっとエマの様子をうかがっているだけでした。
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それから間もなくして、エマが毎年出展している絵のコンテストの日時が決まりました。
エマが以前優勝し、『チビッ子画家』と持てはやされるようになった、あのコンテストです。
楽しみにしていたコンテストなのに、エマはもう絵なんて描きたくありませんでした。
「コンテストには、出したくありません」
エマは、ためらいながら先生に訴えました。
先生は、ミザリーに相談しました。
「奥様、エマはとても今、よい絵が描ける状態ではありません。残念ですが、今年は出展を見送った方がよろしいかと思います」
「何言ってるの、絵の一枚や二枚、しっかり描かせなさい! 出さなかったら、私が悪く言われるかもしれないじゃない!」
こうしてエマは、その年もコンテストに出展することになりました。




