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5.真夜中の呼び鈴

                 ※ ※ ※


十歳の誕生日を翌月に控えた、夏の夜のことでした。


いつものように一人で夕食をとったあとで、もう十二時も過ぎようとしていました。


ネグリジェに着替え、ベッドに腰を下ろした途端、玄関で勢いよく扉を叩く音がしたかと思うと、男の人の叫ぶ声が響きました――。


呼び鈴がうるさく何度も鳴らされて、召使が広い玄関ホールを走っていく足音が聞こえました。


屋敷は二階建て。吹き抜けになった玄関ホールは、普通の家屋が四、五軒ほどすっぽりと入ってしまうくらいの広さがあったのです。


エマの部屋は、玄関ホールから二階にまっすぐ延びる、幅の広い階段を上がってすぐにありましたので、よく聞こえたのです。


あまりの騒々しさにエマも、何が起きたのかと出ていきました。


玄関には、二人の警察官が険しい表情をして立っていました。

その手前で召使のおじさんが、尻もちをついている姿が目に入りました。


エマは、驚いてそばに駆け寄りました。


「どうしたの?」


召使は答えません。

エマはかがみ込んで顔を覗き込もうとしました。すると召使は、目をそらしてうつむいてしまったのです。


「お父様が、亡くなられました……」


言葉の意味が飲み込めず、エマは声の方に目を向けました。

警察官が哀れむような顔つきで、じっとエマを見つめていました。

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