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20.『この子を探してください』

                 ※ ※ ※


エマが、行方不明になってから十五年が経っていました。

エマがいなくなった当時、エマを探してくれと頼まれた警察は、警察犬もつれて、街中大掛かりな捜査を行いました。

話を聞きつけた街の人たちも大勢で探し回り、最後には、屋敷のある山の中を皆でかき分けました。


それでも、見つかりませんでした。


もちろん屋敷も調べられました。


警察犬も入れられましたが得られた結果は、ワインセラーに入った犬が一匹、匂いで酔っぱらって出てきたという珍事くらいのものでした。


屋敷の召使も学校の友達も、みんな心配していました。

コンテストで優勝したエマの自画像は、しばらく警察署の壁に掛けられて、その下には、『優勝』のプレートの代わりにこう書かれた張り紙が貼られていました。


『この子を探してください』


警察にエマを探してくれと頼んだのは、ブラッドとミザリーでした。

ブラッドは弁護士らしく、思慮深い態度をとっていましたが、ミザリーは皆の前で泣き叫んでいました。

髪を振り乱し、目を真っ赤に腫らしたその姿には、エマやミザリーを知らない街の人々までもが、深く同情をしました。


その一年後、


『傷心のミザリーを支えていきたい』


と公言し、ブラッドが結婚を申し込み、ふたりは夫婦になったのです。


エマのお父さんのしていた仕事も、そのままブラッドが引き継ぎました。

十五年経ったその頃では、ブラッドとミザリーは、周囲に立派な後継者とみなされ、街で有名な大金持ちになっていました。


ふたりを昔から知っていた、一握りの人たちは言っていました。


「あの、物乞いをしていた子供たちが、よくあそこまで出世したもんだ」

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