20.『この子を探してください』
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エマが、行方不明になってから十五年が経っていました。
エマがいなくなった当時、エマを探してくれと頼まれた警察は、警察犬もつれて、街中大掛かりな捜査を行いました。
話を聞きつけた街の人たちも大勢で探し回り、最後には、屋敷のある山の中を皆でかき分けました。
それでも、見つかりませんでした。
もちろん屋敷も調べられました。
警察犬も入れられましたが得られた結果は、ワインセラーに入った犬が一匹、匂いで酔っぱらって出てきたという珍事くらいのものでした。
屋敷の召使も学校の友達も、みんな心配していました。
コンテストで優勝したエマの自画像は、しばらく警察署の壁に掛けられて、その下には、『優勝』のプレートの代わりにこう書かれた張り紙が貼られていました。
『この子を探してください』
警察にエマを探してくれと頼んだのは、ブラッドとミザリーでした。
ブラッドは弁護士らしく、思慮深い態度をとっていましたが、ミザリーは皆の前で泣き叫んでいました。
髪を振り乱し、目を真っ赤に腫らしたその姿には、エマやミザリーを知らない街の人々までもが、深く同情をしました。
その一年後、
『傷心のミザリーを支えていきたい』
と公言し、ブラッドが結婚を申し込み、ふたりは夫婦になったのです。
エマのお父さんのしていた仕事も、そのままブラッドが引き継ぎました。
十五年経ったその頃では、ブラッドとミザリーは、周囲に立派な後継者とみなされ、街で有名な大金持ちになっていました。
ふたりを昔から知っていた、一握りの人たちは言っていました。
「あの、物乞いをしていた子供たちが、よくあそこまで出世したもんだ」




