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16.表彰式の前夜

                 ※ ※ ※


喜びと悲しみが入り混じりながらも時間は過ぎて、いつしかコンテストも終わりに近づいていました。

展示の最終日を明日にひかえた夜、きっと翌日の最後に表彰式があるからでしょう。珍しくミザリーがエマに話しかけてきました。


「明日は、私も一緒に行くわ」


エマは心の中でつぶやきました。


(絵なんて、どうでもいいくせに……)


『自分こそが良き母親であり、優れた教育者だ』


と、人々に見せつけるために出席したいのです。

そんなことくらい、エマは分かっていました。

ですから、明日のことを考えると、憂鬱でなりませんでした。


                 ※ ※ ※


夜になるとエマは、いつものように、皆が寝静まった頃ベッドを抜け出しました。

忍び足で部屋を出ると、その日は秘密の部屋へ行く前に、食堂に立ち寄りました。

燭台を、うっかり部屋に置いてきてしまったのです。

そのことに気付いたエマは、食堂で一つ借りていくことにしたのです。



燭台は、部屋の隅の高い棚に置かれていました。

背が届きませんでしたから、そばにあった木の椅子を押してきて踏み台にすることにしました。

そうして、椅子の上に乗り、いっぱいまで背伸びをすると、どうにか指先が燭台に届きました。


そんなふうにして、少し苦労しましたけれど、どうにか燭台を手に入れると、金属のひんやりとした冷たさを確かめてから、ほっとして小さく息をつきました。


それから、また忍び足で食堂を出ようとしたその時でした。

近づいてくる足音が響き、開け放たれた扉の向こうに、ろうそくの光がゆらりと揺れました。


驚いたエマは、慌てて一番近い窓のカーテンの陰に身を潜めました。


幸いにも、そのカーテンは窓の脇に束ねられ、足元まで長く垂れ下がっていました。

おかげでエマの小さな体は、すっぽりとその陰に隠れることができたのです。


隠れた途端、二つの人影が現れました。

食堂の火は消されていましたが、窓から差し込む青白い月の光が部屋を照らし、姿をはっきりと浮かび上がらせました。


そこに現れたのは、ミザリーと――なんとブラッドだったのです。

先週に続き、EP1〜15を全体的に見直しました。

語り口やリズムを整えて、より読みやすくしています。


とくにEP3とEP7では、ミザリーとブラッドの関係を少し加筆しましたが、

物語の流れはそのままですので、読み直していただかなくても大丈夫です。


今日から、土日祝を含めた毎日18:15投稿になります。

あと9話ほどで完結予定です。


最後まで見届けてもらえたら嬉しいです。

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