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15.絵のコンテスト

                 ※ ※ ※


その日からエマは、夜ごと秘密の部屋に通いました。

初めの日は、嬉しさのあまり、なかなかお母さんの思い出の品々のそばから離れられませんでしたが、次からは気をつけて早めに自分の部屋に戻りました。

誰にも見つからないように、しっかりと注意もしていましたし、もちろん火の始末にも気をつけました。


十歳の誕生日まで、お父さんがこの部屋を教えてくれなかったのは、ちゃんと秘密を守れるかということと、ロウソクの火のことが心配だったからなのでした。

そう、手紙に書いてあったのです。


寝不足になってしまうこともありました。

たまに授業中、居眠りしそうになりましたけれど、そんな日はいつもより早めにベッドに戻り、朝までぐっすり眠りました。


秘密の部屋のおかげでエマは、ずいぶんと元気になりました。


『お母さんが見守ってくれている。それに、お父さんも!』


そう思えるようになっていたのです。


                 ※ ※ ※


いよいよ、絵のコンテストの日がやって来ました。

絵の展示期間は一週間、絵は先生が運んでくれました。

でもエマはもう、絵のコンテストにあまり興味を持つことが出来なくなっていました。

思ったように感じた通りに描いたものが出せないのなら――


『なんの意味があるの?』


絵の賞など、どうでもよくなってしまったのです。


ほんのりとした寂しさを、胸の奥に抱えたままに――その年もエマの絵が優勝に輝きました。


それでもいざ、受賞の知らせを聞くと、


『お母さんとお父さんに、報告しなくちゃ!』


やっぱり嬉しくなりました。


                 ※ ※ ※


次の日、学校から帰ると、屋敷に入らずそのままお墓に向かいました。

でも、縄梯子の前まで来ると足がすくみました。

実を言うと、お父さんが亡くなってからも、ここまでは何度もやって来ていたのです。

そのたびにどうしても怖くなってしまって、縄梯子への一歩が踏み出せないでいたのです。


『今日こそは!』


そう決意していたにも関わらず、やっぱり無理でした。


(お父さんが一緒のときは平気だったのに……)


結局、うなだれて屋敷に帰りました。


エマは、お父さんが亡くなってしまった悲しさを、いっそう強く感じてしまいました。

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