表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

13.秘密の部屋

                 ※ ※ ※


手紙を読みおえて、エマの心臓はどきどきと高鳴っていました。

誕生日のプレゼントの隠し場所が書いてあったのです。

しかもそれは、誰も知らない秘密の場所に隠してあるそうなのです……。


なんとお屋敷には、お父さんしか知らなかった秘密の部屋があったのです。


その部屋の場所と入る方法、それに注意事項なども記されていました。


注意事項のところは、


『部屋へは、絶対に、他の人には知られないよう、夜中に!』


『ロウソクの扱いに注意!』


という具合に、特に『』で強調されていました。


手紙を読みおえて間もなくすると、絵の先生の部屋の扉を叩く音が聞こえました。


                 ※ ※ ※


絵のレッスンが終わり先生が帰ると、じっと皆が寝静まるのを待ちました。


午前二時、エマはこっそりベッドから抜け出すと、手紙に記されていた場所へ向かいました。


まず、玄関ホールに降りると、それから廊下を何度かジグザクに曲がりました。

屋敷じゅうが、少し入り組んだ形になっていたからです。

屋敷は、建てられてから三百年ほど経っていました。

古くなって傷んだところを壊したり、部屋を広げるために建て増したりと、これまで屋敷に住んできた主人たちが、改築をくり返してきたからなのです。


いくつもの部屋の前を通り過ぎ、地下へ通ずる扉の前まで来たエマは、脇の壁に灯っている燭台から、持ってきた燭台に素早く火を移すと、静かに中に入って扉を閉めました。


地下に続く階段が、ぼんやりと明るくなりました。

階段を下りて、じめじめした廊下を数十メートル進むと、把手の壊れかけた扉の前に着きました。


たどり着いたところは、地下にあるワインセラーでした。

慎重に把手を扱い、中に入ると、ロウソクの光を頼りにまわりを見回しました。

部屋は、二頭立ての馬車がまるまる入ってしまうくらいの広さで、床も壁も天井も、綺麗に石が組み上げられて出来ていました。

入口の扉がある面以外の壁には、床から背より少し高いところまで、木の棚が備え付けられており、そのすべてにワインが収めてありました。


一直線に、手紙に書かれていた場所へ向かいました。

扉から入ると正面の壁、その右隅の棚のところです。


指示どおりに右端から数えて二列目、下から五段目のワインを引き抜きました。

空になった棚の奥をのぞき込むと、把手が見えました。

気をつけてワインを床に置くと、そっと把手を引っ張りました。


「ガコッ!」


小さな音がしたかと思うと、その棚の幅一メートルくらいの部分が、スーッと向こうに引っ込んで止まったのです。

胸を高鳴らせながら床に置いたワインを元に戻すと、落ち着くために大きく深呼吸をして、今度は、奥にめり込んだ棚を左にすべらせました。


まったく、力はいりませんでした。

ロウソクの光をかざすと、向こうに真っ暗な空間が広がっていました。


秘密の部屋です。


エマは緊張しながら、その部屋に踏み入れました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ