13.秘密の部屋
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手紙を読みおえて、エマの心臓はどきどきと高鳴っていました。
誕生日のプレゼントの隠し場所が書いてあったのです。
しかもそれは、誰も知らない秘密の場所に隠してあるそうなのです……。
なんとお屋敷には、お父さんしか知らなかった秘密の部屋があったのです。
その部屋の場所と入る方法、それに注意事項なども記されていました。
注意事項のところは、
『部屋へは、絶対に、他の人には知られないよう、夜中に!』
『ロウソクの扱いに注意!』
という具合に、特に『』で強調されていました。
手紙を読みおえて間もなくすると、絵の先生の部屋の扉を叩く音が聞こえました。
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絵のレッスンが終わり先生が帰ると、じっと皆が寝静まるのを待ちました。
午前二時、エマはこっそりベッドから抜け出すと、手紙に記されていた場所へ向かいました。
まず、玄関ホールに降りると、それから廊下を何度かジグザクに曲がりました。
屋敷じゅうが、少し入り組んだ形になっていたからです。
屋敷は、建てられてから三百年ほど経っていました。
古くなって傷んだところを壊したり、部屋を広げるために建て増したりと、これまで屋敷に住んできた主人たちが、改築をくり返してきたからなのです。
いくつもの部屋の前を通り過ぎ、地下へ通ずる扉の前まで来たエマは、脇の壁に灯っている燭台から、持ってきた燭台に素早く火を移すと、静かに中に入って扉を閉めました。
地下に続く階段が、ぼんやりと明るくなりました。
階段を下りて、じめじめした廊下を数十メートル進むと、把手の壊れかけた扉の前に着きました。
たどり着いたところは、地下にあるワインセラーでした。
慎重に把手を扱い、中に入ると、ロウソクの光を頼りにまわりを見回しました。
部屋は、二頭立ての馬車がまるまる入ってしまうくらいの広さで、床も壁も天井も、綺麗に石が組み上げられて出来ていました。
入口の扉がある面以外の壁には、床から背より少し高いところまで、木の棚が備え付けられており、そのすべてにワインが収めてありました。
一直線に、手紙に書かれていた場所へ向かいました。
扉から入ると正面の壁、その右隅の棚のところです。
指示どおりに右端から数えて二列目、下から五段目のワインを引き抜きました。
空になった棚の奥をのぞき込むと、把手が見えました。
気をつけてワインを床に置くと、そっと把手を引っ張りました。
「ガコッ!」
小さな音がしたかと思うと、その棚の幅一メートルくらいの部分が、スーッと向こうに引っ込んで止まったのです。
胸を高鳴らせながら床に置いたワインを元に戻すと、落ち着くために大きく深呼吸をして、今度は、奥にめり込んだ棚を左にすべらせました。
まったく、力はいりませんでした。
ロウソクの光をかざすと、向こうに真っ暗な空間が広がっていました。
秘密の部屋です。
エマは緊張しながら、その部屋に踏み入れました。




