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12.お父さんからの手紙

                 ※ ※ ※


新たに描き始めた自画像は、ものの数日で完成しました。

まわりの大人たちが喜ぶようにとエマは、彩り豊かで美しい作品に仕上げました。


思った通りに先生は、とても褒めてくれました。

絵を見たミザリーも、満足げでした。


「ちゃんと賞がもらえるかしら?」


「もちろんです。今年も優勝でしょう!」


                 ※ ※ ※


絵が完成してから数日後、エマの誕生日がやってきました。

お父さんが亡くなってから、二か月近くが経っていました。

エマは、十歳になったのです。

けれども、誰もそのことに気づいてくれませんでした。


学校を終えて屋敷に帰ると、いつものように家庭教師の先生が来ていて、すぐに勉強を始めなければなりませんでした。


勉強も終わり、ピアノのお稽古も終えて、絵の先生が来るまでのわずかな時間に夕食をとっていました。


すると、思い掛けぬ人から声を掛けられたのです。


「お誕生日おめでとう!」


意外にも、ブラッドが手紙を持ってきたのです。

エマがびっくりして受け取ると、ブラッドは言いました。


「お父様からです。『お嬢様の誕生日にこれを渡してくれ……』そうおっしゃって、私に預けていらしたのです」


もしあんなことが起こらなければ、お父さんはちょうど今頃、仕事で外国に行く予定になっていたそうなのです。

ブラッドはそれだけ説明すると、すぐに食堂を出て行きました。


ブラッドが出て行ったあと、エマは不思議な気持ちで手紙を眺めました。

お父さんから手紙など、一度ももらったことがなかったからです。


エマは食事を残して、すぐに部屋に戻りました。


扉を閉めると、今度はゆっくりと封筒を眺めました。


封蝋がしてあり、その上からお父さんの印がしっかりと押してありました。


たしかに差出人は、お父さんになっていました。


嬉しさと寂しさと、たくさんの感情が心の中に渦を巻きました。


ベッドに腰を下ろすと、丁寧に封を開け、手紙を取り出しました。


本当に、お父さんの字でした。


読もうとしましたが、涙があふれて目がかすんでしまいました。

字を見ただけで懐かしく、また悲しくなってしまったのです。


それでも、早く何が書いてあるのか知りたくて、涙をぬぐいながら読みはじめました。

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