12.お父さんからの手紙
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新たに描き始めた自画像は、ものの数日で完成しました。
まわりの大人たちが喜ぶようにとエマは、彩り豊かで美しい作品に仕上げました。
思った通りに先生は、とても褒めてくれました。
絵を見たミザリーも、満足げでした。
「ちゃんと賞がもらえるかしら?」
「もちろんです。今年も優勝でしょう!」
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絵が完成してから数日後、エマの誕生日がやってきました。
お父さんが亡くなってから、二か月近くが経っていました。
エマは、十歳になったのです。
けれども、誰もそのことに気づいてくれませんでした。
学校を終えて屋敷に帰ると、いつものように家庭教師の先生が来ていて、すぐに勉強を始めなければなりませんでした。
勉強も終わり、ピアノのお稽古も終えて、絵の先生が来るまでのわずかな時間に夕食をとっていました。
すると、思い掛けぬ人から声を掛けられたのです。
「お誕生日おめでとう!」
意外にも、ブラッドが手紙を持ってきたのです。
エマがびっくりして受け取ると、ブラッドは言いました。
「お父様からです。『お嬢様の誕生日にこれを渡してくれ……』そうおっしゃって、私に預けていらしたのです」
もしあんなことが起こらなければ、お父さんはちょうど今頃、仕事で外国に行く予定になっていたそうなのです。
ブラッドはそれだけ説明すると、すぐに食堂を出て行きました。
ブラッドが出て行ったあと、エマは不思議な気持ちで手紙を眺めました。
お父さんから手紙など、一度ももらったことがなかったからです。
エマは食事を残して、すぐに部屋に戻りました。
扉を閉めると、今度はゆっくりと封筒を眺めました。
封蝋がしてあり、その上からお父さんの印がしっかりと押してありました。
たしかに差出人は、お父さんになっていました。
嬉しさと寂しさと、たくさんの感情が心の中に渦を巻きました。
ベッドに腰を下ろすと、丁寧に封を開け、手紙を取り出しました。
本当に、お父さんの字でした。
読もうとしましたが、涙があふれて目がかすんでしまいました。
字を見ただけで懐かしく、また悲しくなってしまったのです。
それでも、早く何が書いてあるのか知りたくて、涙をぬぐいながら読みはじめました。




