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パラレル邪馬大国/セア・テア  作者: 三井咲也
日輪の少女と黄金の神樹
12/16

12話 旅立ち/中編

 

 「陛下、アンテフォーテ将軍が参られました」


 女王の仕事は外から見るよりもずっと泥臭く、多岐に渡る。

 密偵が持ち帰る他国の情勢やそれに取り巻く環境の変化を精査し、エルフ国としての国針を定める。

 各族長達を集めて会議、友好国との書簡のやり取り。


 国内情勢の確認のため分割統治させた各族長達の元に定期的に赴く事も忘れない。

 自然な形での国内発展に寄与した者、大きな戦果を挙げた者等の表彰階級の昇進等。やる事は山ほどある。


 特に近年は更に多忙を極めるようになっていた。父ミストガルから玉座を引き継いだ当初、彼女は「平和な時代の統治」を夢見ていた。だが、エルフという長命種からすれば、それは一瞬の夢幻に過ぎなかった。

 この国スピリットキングダムは代々セレヴィーテ家が代々世襲しているが。実は絶対の決まりでは無い。もし王が民をないがしろにする「愚王」であれば、族長審判の多数決によって即座に引きずり降ろされる。所謂王政主義であり民主主義でもある国家なのだ。


 「失礼します」

 

 開かれた扉から現れたその人物からはやや疲労が見受けられた。仮に友人同士なら「痩せた?」なんて冗談の一つでも飛ばす所であるが、残念ながら長年の主従関係であり、その主も何故彼女がそのような状況なったかを理解しているためもちろんそんな事を口にせずむしろ労う。

 兵装は乱れなく整えられており。一度身だしなみを整えてからやって来た事が見受けられる。ミスティスからすればあまり気にする事は無いと思うのだが、彼女なりの不器用な生真面目さだ。


 「まずはご苦労様でした。そこに座って紅茶を飲みながら話しましょう?」

 「はっお気遣い痛み入ります」


 絶妙なタイミングで侍女長が淹れたての紅茶を運んでくる。

 白い湯気が立ち上るカップを見つめながら、セルフィは内心舌を巻いた。


 (さすがだな、カイネは)


 先代ミストガル統治時代以前は侍女は侍女であり侍女であった。

 だが過去に人族が首都エフィリアに侵入するという事件が起きた事がある。


 目的はミストガルの殺害。そして国内情勢を乱す事であった。

 その任務のために、正面からでは無くまさかの裏口(・・)から侵入してきたのだ。そしてやすやすとエフィリアに侵入を許してしまう。

 スピリットキングダムは網目状に感知魔法を展開しているが、まさか精霊も近寄らない裏口から侵入して来るとは思いもせず当時その盲点を突かれてしまった形だ。


 その事件以来警備体制を変える事にしたという経緯がある。

 この侍女長は、単なる身の回りの世話係ではない。隠密と武芸の極みに達したプロフェッショナルであり、有事の際には、その身を盾にして女王を護り抜き、同時に敵を屠る冷徹な矛ともなる者だ。

 彼女の経歴は極めて特異である。もともとエルフ国――スピリットキングダムにいたわけではない。いや、正確には「かつて奴隷として連れ去られたエルフの一人」であったと推測されている。数年前、女王が帰還した際に、自らその手を引いて連れ帰ってきたのが彼女なのだ。

 そんな過去の暗影を背負いながらも、今は誰よりも忠実な影となった侍女長、カイネ・ハート。セルフィはその鋭い双眸を一瞥し、改めて居住まいを正した。運ばれてきた紅茶を一口含み、熱い雫で喉を潤わせてから、静かに、しかし重みのある口調で言葉を紡ぎ出した


 「――となっております」

 「……なるほど。その2か所だけですか?」

 「はい、そうです……陛下には申し訳ありませんが――」

 「――大丈夫です。将軍が謝る必要はありません。そうですね、時間を見て赴くとしましょう」

 「はっ……それと……」

 「?他にも何か気になる事が?」

 「はっここに来る途中彼女を見かけたのですが――」

 



 ◇◇◇ 


 少し前の事、ミスティスの元に不穏な報告がいくつか届いていた。

 

 『近頃、ヒミコ様の元気がありません』

 『エフィリアの丘で、お一人で黄昏ているのを頻繁に見かける』

 『枕に濡れた形跡がある』

 

 食事の際は活発で元気に振舞っていた少女。

 だが、彼女はまだ、見知らぬ世界に放り出されただけの人族の子供なのだ。寂しくないはずがない。

 

 「はぁ、何故気づけなかったのでしょう」


 仕事が忙しく気づけなかったという言い訳は通用しません。しかも大事な友人の子を。


 まったく。かつての私がそうだったでしょうに。 


 しかしどうしたものでしょう?帰還させられるものなら返してあげたいケド、私がどうこうできる問題ではありませんし。


 一緒に食事をした所でもその場限りの空元気の可能性が高い。

 うーんうーんと考えてみても中々いい案が思いつきません。こういう時は一度思いっきり泣いてスッキリした方が良いと思うのですが。

 侍女長が淹れなおそうとするのを手で制して、冷めてしまった紅茶を口に含み、そしてそのカップの中身を見つめる。


 「ふふっ」


 旅に出ていた時の光景が少しだけ蘇る。お金が無くて節約生活を強いられたあの頃。


 しかも全員王族なのに。正確にはナミは次期王族と言う立場でしたが。


 ・次の街まで極貧生活を強いられた時の気合の魚釣り。

 ・デットオアアライブ(食べれるか分からない)のキノコ狩り。

 ・外壁塗装のバイト(プライドは捨てた)


 いい思い出です。おかげ様で貧乏性になりました。

 冷めたから飲めないなんて無いのです。飲み切るのです。

 

 あぁ……。そういえばナミも紅茶が好きでしたね。変わった飲み方でしたが、もしかしたら………


 ◇◇◇

 

 まじの一生の不覚じゃ、夢であってくれと願うが。鮮明に記憶しているワレの脳をめちゃんこ恨む。

 女足るもの泣くべからずというスローガンを掲げているこのワレが!


 くっ

 だがまぁスッキリしたのは認めよう。やるなミスティス………!更に頭が上がらん不思議な感覚になってしもた!

 

 まぁ忘れよう。デリートじゃデリート。

 切り替え!チェンジ!ホップステップジャンピングニードルアタックで行こうではないか!(?)


 という事で、変わらず、訓練に打ち込むことにした。それとついでに野球チームを作った。


 決めた!いつまでもクヨクヨしてもしょうがない!帰れんもんは帰れんのだ!

 そんなのワレの性分では無いのじゃ!

 それにある程度出来るようになったらワレも母上と父上のように旅に出てみようと思う。一生に一度切りの人生。せっかく来たんじゃ。色んな経験をしてみたい!


 そう心にキメ。訓練に打ち込んでいると、それなりの実力を得る事が出来た。

 上級兵士と戦ってもそれなりにいい線は行くくらいに。


 ただ!魔法は未だ!何故か!不思議と!使えん。

 じゃあなんで兵士と戦っていい線言ったのかじゃって?

 それは「魔力循環」じゃ。魔力と言うのは魔法を放つための燃料じゃが。あえて体内へ留めず放出すると何故か俊敏に動けるのじゃ。ブースト掛かったようにシュタタタタとな。


 ガル爺が言うには獣人族の「肉体強化」とはまた違うらしい。というか限りがあるから皆分かっていてもやらんらしいが、ワレはたっぷりあるからの。

 ロープレでもお約束じゃろ?強い奴のレベルは上がりにくいみたいな。まっ知らんがワレは凄いでいいじゃろ。

 

 「シュッシュッシュ!みよ!この俊敏さを!」


 つまりエアボクシングはそういう事じゃ。


 そう。中二病全開でも、実際中二病みたいな現象が起きる世界なのじゃから、調子に乗っても良いという事じゃ。

 

 という事でその事をミスティス。ガル爺に伝えた。そしたら意外というかなんというか。あっさりオーケーをモロタ。それはそれで少し切なかったが2人には分かっていたようだ。


 ガル爺は『ふんっどうせあ奴らのように同じ場所にずっと居続ける事等できる訳が無いと思っていたわ』と

 ミスティスも『せっかくなら世界を見て様々な経験を積んできてください』と快く送り出してくれることになった。


 マリーとガレットをセットで。

 1人で行くつもりじゃったが、嬉しい誤算じゃな。


 そしていきなりじゃが当日となった。


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