第4話 サバイバー
前回のあらすじ
上位種の怪物によって車を横転させられ絶体絶命のピンチに3人は逃げる選択を迫られた。その後、本部に向かうべく車を使おうとした際、後ろに怪物が立っていた。
戦闘は前半は優勢だったものの、神風の体力切れによりピンチの状況であったが、本部の到着により事なきを得る。
だが、しぶとく生き残っていた怪物が浅倉を取り込み、本部と2人は浅倉を残して撤退せざるを得なかった。
市瀬は目を覚ます。そこはとても綺麗に管理されている寝室だった。
「.....あれ、何処だここ?」市瀬はベッドに寝かされていた様だ
「REVOLVER本部の拠点だ。」隣のベッドに座っていた市瀬に声をかけられる。
「颯太!よかった無事だったか〜」
「まぁどちらかと言うとダメージでかいのはお前だけどな。」
「んなもん寝てれば治るわ!!ってか俺どんくらい寝てた?」
「1日も寝てねぇぞ。18時間くらいか?」
「そんくらいか。あっ....あのさ、浅倉どうなった?」市瀬が少し不安な様子で聞く。
「わからん.....怪物に取り込まれて、俺達は逃げたんだ。」
「そうか。」
そう話していると、寝室の扉がノックされる。
「失礼します。」そう言って寝室の扉を開け、入ってきた人物は河上だった。
「アンタは.....」市瀬は少し戸惑う様な様子で河上を見る。
「.....市瀬さん、その節はすみませんでした。」河上は市瀬に頭を下げる。
「えっ.....」
「怪物に取り込まれたとは言え、大切な親友が怪物になった時にかける言葉にしてはあまりにも気の利かない失礼極まりない発言でした。申し訳ありません。」
「い、いや俺もパニックって変な事言いました、すんません。」
「いえ、怒られるのも無理ないです。.....ですが、これだけは理解してください。班長として班の人間を守る事は僕の使命です.....浅倉さんへの攻撃命令については正しかったと思っています。」
「.....はい、すいません。」
「で、お前は何しに来たんだ?」神風は河上に尋ねる。
「あぁ。そうでした、龍城さんがお2人に話があると.....」
「.....あの人が?!」神風はかなり驚いた表情で聞き返す。
「はい。現状についてもお話ししたいと.....」河上はそう言って3人は廊下に出て、少し歩き大きなドアのある部屋に入る。
その部屋は豪華な内装で奥の方にある机に威圧感のある大柄な男が座っていた。
「いらっしゃい。私は龍城 荒田.....本部の隊長だ。河上....キミはもう良いよ。」大柄な男はそう話す。河上は軽くお辞儀をした後その場から去る。
「このおっさんが......隊長?」市瀬は神風に小声で話す。
「おい!失礼だぞ!!」
「.....おっさん?.....か、おっさん呼ばわりされたのは久しぶりだな。」
「あ、あ!すいません!!」市瀬はあまりの威圧感に頭を深く下げる。
「.....もういい。ただこれからは口の書き方には気をつけろ。」
「は、はい。」
「それで、話と言うのは.....」神風は龍城に聞く。
「あぁそうだったな。来てくれ.....」そう言うと部屋の扉からガスマスクと白衣を着た男が入ってくる。2人はその姿を見て警戒する。
「.....いやいや、私は必要あるかの〜」ガスマスクをつけた男は少し年老いた様な声で話す。
「.......」龍城は無言でガスマスクをつけた男を睨みつける。
「お〜怖い怖い。こんな老人を脅すんじゃないよ。」そういってガスマスクを外す。その男の外見は50歳をとうに超えている様に見える。
「えっ.....じーさんだったのか。」市瀬は驚く。
「この死体の一歩手前みたいなジジイは、湯堕 仁。赤子2人程の重さすら持ち上げられない筋力を事を除けば、有能な科学者だ。
この手の話においてはこれ以上のない人材だ。」
「仁博士とでも、呼んでおくれ。」
3人は椅子に座り、仁と呼ばれた科学者も椅子に座る。
「では、まず君達は何処まで知っている?」
「えっと.....人が変な怪物に変わって暴れてることくらいッスかね?」市瀬は思い出しつつ話す。
「.....今、日本各地で出現しているあの怪物を我々は"サバイバー"と呼んでいる。」
「サバイバー?」
「うん。私たちが掴んでいる情報では、
①超人的な身体能力の代わりに知能が乏しい。
②脳や臓器などが欠損しても2時間程度で完全回復する。
③体内にサバイバーの血液が侵入すると、その生命体もサバイバーに変異する。
と言うところじゃな。」仁博士はその様に説明してくれる。
「いつ生まれたのか、何処から来たのか全くわからないんだ。」
「その増殖能力についてなのですが、増える手段はそれだけですか?」
「調べている段階じゃが、今わかっている事はこれだけなんだの。
ただ、サバイバーの拡大する速度が異常と言うレベルではない程の増え方をしておる。言葉の通り本当に一瞬の内に日本各地に広がったのじゃ。」
「REVOLVERを襲撃した者については?」
「それについては私が答えよう。襲撃者の数は少なくとも3000体以上、支部に乗り込んだのは恐らくサバイバーだ。」龍城は答える。
「えっ?サバイバー?!」市瀬は驚きつつも聞く。
「.....私たちの見解だと統率なんて不可能に近い筈なんじゃ。本能的に人間を襲う様な猛獣に近い.....」
「では、何故そんな軍の様な動きを?」神風は仁博士に訪ねる。
「増殖スピードが異常に速いのも統率の取れた動きも恐らく襲撃して来た連中の仕業じゃろうな。」
「その連中って言うのに心当たりは?」
「.....無いな。恨みは買っているだろうが、ここまでの大規模な攻撃は初めてだ。」龍城は考えつつ答える。
「なるほど.....」
「質問は以上か?こちらも答えられる程、時間も情報もないのでな。」龍城は立ちあがろうとするがそれを市瀬が静止し質問する。
「.....サバイバーになった人間は治せるんですか?」市瀬は顔を曇らせながら質問する。
「浅倉君のことじゃな。.....結論から言えば、不可能ではない。」
「えっ?!」
「もっとも、ゾンビ化の進行度にもよるし実験の段階じゃがの。隊長....施設にお連れしても?」
「まぁそっちの方が話も早いか。質問があったらそいつを頼ってくれ。」
仁博士は2人を連れて廊下に出て、実験室に行く。
「ここじゃよ。私の実験室じゃ。」その部屋は物凄く散らかっていて床には資料やら見たこともない部品などが散乱している。
「す、すっげ汚ねぇ。」
「これじゃ。」そう言って仁博士はナイフの様な形のメカニックな武器を市瀬に渡す。
「何ですか?これ....」
「ナイフ?」市瀬は受けとったナイフをカチャカチャといじる。
「サバイバーワクチンじゃ。サバイバーを元の人間に戻せる.....はずじゃ。」
「へぇ〜スゲー!」
「.....良くこんな物をこんな物を数時間程度で作れましたね。」神風は仁博士に聞く。
「元々作っていた、あらゆるウイルスを破壊するワクチンの試作品をちょっと改良しただけじゃよ。」
「こ、これで浅倉を元通りにできるだよな!?仁博士!!」
「.....可能性はあると言った程度じゃな。そのナイフで刺した対象に自動的にワクチンを注入し通常のサバイバーなら4〜5発程度の注入で良いはずじゃ。」
「実験した事は?デメリットとか....」神風は心配そうに聞く。
「実験はできておらんな、結果は教えておくれ。デメリットは通常の人間には強力すぎて害となってしまいワクチンとしては本末転倒なものだったのじゃが、サバイバーの生命力ならばワクチンの影響を受けないはずじゃ。」
「なるほど、それなら一先ずは安心ですね。」
「このワクチンが上手くいけば、日本中のサバイバーを元に戻して救えるかも知れない。頼んだよ.....」
「はい!んじゃ颯太行くか!!」市瀬は実験室を飛び出そうとする。
「待て待て、今の俺たちの力じゃ浅倉がやられたサバイバーには勝てない。」
「あ〜そうじゃよ。じゃから本部の人間に鍛え.....」仁博士がそう言いかけた瞬間、研究室の扉が蹴り飛ばされる。
「失礼しますよっと!!」扉から2人の男が入ってくる。
「よぉ〜支部のゴミ虫と.....支部から這い上がった出来損ない。今日から俺らがお前らを躾けてやる。」