表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

#4. 寂しい夜にはアイスクリームを

 「愛唯ごめん。別れたい。お母さんが愛唯とは別れなさいって」と、松尾愛唯(まつおあゆ)は結婚前提で2年付き合っていた恋人に別れを告げられた。恋人はいわゆるマザコンで、母親の影響を受けやすい人だったのだ。その母親も愛唯本人には良くしてくれたけれど、陰では思うところがあったのだろう。

 友人の亘萌子(わたりもえこ)に別れたことをLINEで報告すると、「は? なにそいつ、クソ男じゃん。ママがダメって言ったからって……。そんなマザコン、別れて正解だよ」と真剣に怒ってくれた。

「本当にそれ。もう結婚とかせんと実家で大好きなママンのおいちい手料理食べておっぱい吸ってよしよしされとけって話」

愛唯が萌子に返信すると、「それな。だったらもういっそのこと、ずっとママと一緒にいたら良いのに」と萌子から返ってくる。やっぱり持つべきは友達だと思うけれど、恋人との思い出がフラッシュバックしてしまう。

 ある日の仕事終わりに、愛唯はフォーティーワンアイスクリームに立ち寄った。大好きなキャラクターとコラボしており、そのキャラクターがデザインされたカップでアイスを食べるためだ。恋人も愛唯と同じキャラクターが好きで、昨年は一緒にバラエティパックを買って食べていた。けれど今年は一緒に食べる相手がいないので、バラエティパックは買わずに1人でダブルカップを買うことにする。

 愛唯はダブルカップを注文したが、愛唯の前に並んでいる若いカップルがキャラクターのダブルカップを購入していた。きっと持ち帰って家で一緒に食べるのだろう。突如、愛唯の中で孤独感に苛まれた。ーーなんで私だけ1人でアイスを買ってるの? そんな気持ちだ。一方的に別れ話をしてきた恋人に恋愛的未練があるわけではないけれど、あの別れ話がなければ今頃も一緒にキャラクターのバラエティパックを楽しんでいたのだろうか。愛唯はそう考えた。


 そんなときはあの恋人と結婚した場合を想像する。恋人のマザコン度合いはさらにひどくなっているし、最悪母親と私を比べるような発言をされるかもしれない。母親がアポなしでいきなり新居に押し掛け、わあわあ騒ぐかもしれない。恋人は母親の味方で言いなりになり、私の味方にはなってくれないだろう。子どもができたらさらにエスカレートしそうだ。私と恋人が夫婦喧嘩をしようものなら、「私の息子に何するのーっ」と首を突っ込んでくるだろう。さらには「息子がかわいそう」という思い込みで暴走されるかもしれない。

 結婚後のことを想像すると、愛唯はあの恋人とは結婚しなくて正解だと考えるようになった。アイスクリームを誰と食べるかも重要だけれど、食べる至福の時間は自分だけのものにしたい。そう思うと、愛唯にとって1人でアイスクリームを食べることは悪くなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ