#3. イメージチェンジ
中学生時代はボブヘアで過ごす。高校進学してから伸ばし続けて、ずっとロングヘアを保ってきた。そんな私も大学卒業して社会人2年目となり、ロングだった髪を切りたい衝動に駆られる。もうすぐで付き合って1年となる恋人の石沢直人との関係は良好なので、別に何かあったというわけではない。ただ髪を切りたくなった、それだけだ。
金曜日の仕事終わりに美容院に行くことになった。その翌日に石沢直人と会う。長かった髪をバッサリ切った私を見て、どんな感想が返ってくるだろうか。楽しみだ。なりたい髪型のイメージはある程度決まっているので、あとはそれをいつもの担当美容師の眞鍋さんに見せるだけだ。私はいろんな意味で美容院に行くのが楽しみだった。
1週間を乗り越え、ようやく金曜日になる。私は退勤し、眞鍋さんのいる美容院に向かう。
「6時半に予約していた山下です」
私がそう言うと、アシスタントと思われる受付の若い男性スタッフは「こちらでお掛けになってお待ちください」と椅子に掛けて待つよう言った。しばらく待っていたら時間になり、眞鍋さんにこちらへどうぞと席に案内される。
「今日はどれくらい切りましょうか?」
眞鍋さんに希望の長さについて聞かれ、私はあらかじめ用意しておいた写真を見せた。
「この人くらいにしたくて、肩につくかつかないか程度のボブで……。あと垢抜けた感じにしたいです」
私がそう言うと、眞鍋さんは「わかりました。お任せください!」と言ってシャンプー台に案内する。仕事疲れもヘッドスパのおかけでなくなってきた。
シャンプー後はハサミで髪がカットされていくのだが、どんどん短くなっていく自分の髪を見て衝撃を受ける。さすがプロだ。そうこうしているうちにカットが終わり、ロングからボブになった自分の姿に驚いた。
「後ろこんな感じです! 大丈夫そうですか?」
眞鍋さんが後ろから鏡で髪型の全体を見せてくれる。見せた写真と全く同じ髪型になっていた。やはりプロの美容師は違うなと思う。髪を切った私を見て、石沢直人は何と言うのだろうか。考えるだけでも楽しみだ。
土曜日になり、石沢直人と駅で待ち合わせするために早めに家を出る。昨日眞鍋さんに教えてもらった外ハネにしてみた。駅で待っていると、石沢直人からもうすぐ着くと連絡が来る。
「お待たせ……ってめっちゃ短くなってる! 長いのも良かったけどそっちも良いじゃん。可愛くて好き」
石沢直人は私の姿を見て驚いていたものの、今の髪型も好きと言ってくれた。ずっとロングヘアを貫いていたけれど、思い切って髪型を変えて良かったと思う。