#2. 仲良し3人組
「6年付き合ってた彼に婚約破棄された。もう無理。これからどうやって生きていけば良いかわからない」
遠藤里美は、高校時代の友人である岸川こと子のSNSにこう書かれているのを見つけた。こと子の精神状態が心配だった里美は、こと子本人に気晴らしとして高校時代の仲良し3人組で集まろうと提案する。集まるメンバーは里美とこと子と三崎百合香の3人だ。
成人式の後に行われた同窓会以来、お互いの仕事やライフスタイルの変化もあって集まることができていなかった。それで今回は7年ぶりに集まることになる。オープンな話だと会話内容を周りに聞かれる可能性もあるので、里美は個室居酒屋で集まることを提案した。
当日、里美たちは駅に集合する。里美は7年ぶりに2人と会うので少し緊張していた。里美は出版業界の事務職、百合香は雑貨店の販売員、こと子は銀行の窓口業務に就いており、それぞれ違う進路を歩んでいる。前回集まった20歳の大学生のときからどう変化しているかも気になっていたからだ。
いよいよ里美は2人と合流した。高校時代から男子生徒の間で人気があった百合香は、28歳とは思えないほど若々しく見える。20代前半と言っても通用するレベルだ。百合香には本当に自分たちと同じ時間が流れているのだろうかと里美は考えた。こと子も可愛らしい雰囲気は当時のままだったが、婚約破棄のショックからか憔悴し切っているように見える。
「百合香も里美も来てくれてありがとう。私があんなこと書いたからだよね……」
こと子がそう言うと、里美と百合香は
「こと子が心配なのもあるけど、同窓会ぶりにみんなで会えるのが楽しみだったんだ」
と返す。3人揃ったので、居酒屋に入店した。
「婚約破棄って何があったの?」と百合香がこと子に聞く。
「大学の頃から付き合ってた彼、バンドマンやっててずっとフリーターだったんだけど、私と結婚するために就活頑張って正社員になったの。それなのにフリーター時代から他に女がいて、『浮気相手を妊娠させてしまった。責任取って結婚するから別れてくれ』と」
こと子は婚約破棄になった経緯を語る。お酒が入っていることもあり、饒舌だ。慰謝料もらったけど、同棲してたのに浮気に気づかなかった私がバカだった。結婚したいけどもう傷つくのは怖い。こと子はそう話していた。
「そんな男とは結婚しないで正解だよ」
「今は辛いかもしれないけど、もらった慰謝料で旅行したりおいしいもの食べたりして気分転換しよう」
里美と百合香は口々にこと子を励ます。百合香の提案により、次回は3人でコスメや新しい服を買いに行こうという話になった。