第五話 あいつの地元
ヒーラー達の地元に行くことになったオレは。
電車でヒーラーと共に現地へ。
こいつの実家にお世話になるんだが。
ヒーラーが朝早くから。
オレを連れていきたいところがあるらしい。
金曜の夕方、オレはヒーラー達の地元の武良宇煮市へと向かう。
そのため具実駅に向かっている。
今日のオレはキャリーケースでの通学。
講義を終えたらそのまま出発できるようにした。
「待ち合わせは改札近くのベンチだったな」
具実駅はバスターミナルやショッピングモールもある大きな駅だ。
お土産でも買っておいたほうがいいかも。
なんて考えていたらヒーラーを見つけた。
「お疲れさん。んじゃあ行こうか」
「お土産何か買っておこうよ」
「いいって。気ぃ遣うなって」
ヒーラーと一緒に武良宇煮入りするのはオレだけ。
特盛や牧菱さんはそれぞれのタイミングで帰省するらしい。
『武良宇煮行き。まもなく発車します』
アナウンスに従いオレ達は電車に乗った。
窓から見える景色は電車が進むにつれて変わっていく。
初めは都会の街並みだったのにがらりと田舎っぽい風景に変わった。
田んぼや鉄橋のかかった大きな川。
オレとしては行ったことのない場所だから新鮮な眺めだ。
「外が気になるか」
「まあ」
何回かヒーラーから声をかけられた。
でも、軽く返事するだけであまり話さなかった。
ヒーラーと特盛の事情を知ってからだ。
オレが二人に対し言葉を選ぶようになったのは。
多分ヒーラー達もそれに気づいていると思う。
だから、あいつらなりにオレに気を遣っているんだろう。
今回の武良宇煮行きがそうだ。
あいつらは自分達の過去を教えたいんだろうな。
「もうすぐ着くから準備しな」
「ああ」
日も大分沈んで夜になりかけている。
景色は田舎っぽさから市街地にもどっている。
武良宇煮市、ヒーラー達の地元、オレの知らない街だ。
電車から降りて改札を通ると駅を出て近くの駐車場へ行く。
そこで少しぽっちゃりしたおばさんが出迎えてくれた。
ヒーラーのお母さんだ。
「おかえりなさい秀太朗」
「ただいま母さん」
「今晩は」
「あなたがナギィくんね」
「はい」
「いつも秀太朗と仲良くしてくれてありがとうね」
オレ達はおばさんの運転する車に乗りヒーラーの実家へ。
知らない街並みに初めての道のり。
見たことのない景色にオレはどうしても目を奪われてしまう。
そうこうしている内に車は目的地に到着していた。
「ほい、到着。秀太朗、家案内してやんな」
「あいよ」
郊外にあるガレージ付きの一軒家がヒーラーの実家だ。
結構いい所だな。
オレの実家のマンションとはえらい違いだ。
玄関を開けると気さくな髭のおじさん、ヒーラーのお父さんが出迎えてくれた。
「秀太朗の友達かい。いらっしゃい」
「お邪魔します」
「ナギィ、俺の兄貴の部屋で寝ていいぞ」
「うん」
ご厚意でオレはヒーラーの兄ちゃんの部屋を使うことに。
確かヒーラーは二人兄弟だったな。
兄ちゃんの方は社会人で今は実家を出て働いているんだっけ。
二泊三日でお世話になる部屋だ。
大切に扱わないと。
本棚にはジャンル問わずズラリと漫画が並んでいる。
大きな勉強机に。
衣装箪笥の上にはロボットのオモチャが置かれている。
昔オレらが小さかった頃に流行っていたアニメのやつだ。
翼を広げたフェニックスからの変形で。
ロボになったときはその大きな翼がカッコよかったな。
と、それより色々やらないと。
荷物を置いた後。
汗臭くてくたびれた様子から。
「風呂入んなさいよ」
これまた気さくにヒーラーのお母さんが薦めてきたので。
ご厚意で。
先に風呂に入ってから。
ヒーラーとそのご家族の人達と一緒にご飯を食べた。
その後は少しスマホでゲームをしてからオレはすぐに寝た。
明日は朝早くからヒーラーと外出だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は短く物足りなく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが
電車での移動という、読者の皆様がこの話で夏の思い出に耽られたのなら
こちらもどこか嬉しいです
次回更新は8/21の17:00を予定しています
ぜひ、ご覧ください