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第四話 コンテンツ班サブチーム

今度の定期集会に向けての。

ミーティングをしていたんだが。

またもや牧菱さんが。

色々とぶっちゃ始めたんだが……。

なんだよ、オレだけ仲間外れみたいに。

教えてくれなかったのかよ。

でも、ヒーラーと特盛にとっては。

そっちが気が楽だったんだろうな。

牧菱さんがやって来てから部活は騒がしくなった、気がする。

 

『今日の部活は何をしますか』

 

平日はLEARNのアプリで最低でも一回は牧菱さんから通知が来る。

 

『特に何もないぞ』


ヒーラーがそう返信しない限り何度も通知が来た日すらある。

 

一応オレらの活動という名の遊びに誘いもした。

 

『そういうのはいいです』

 

即行でお断りされた。

 

初日以外で放課後に牧菱さんと一緒にいた試しがない。

 

ただ、定期集会の活動報告用に作品を作らないといけない。

 

ヒーラーがグループボードにその旨を記したときだ。

 

『来ます』

 

超即行で返信が来た。


五月も下旬に差し掛かろうとしている。


火曜日、放課後オレ達サブチームのメンバーは学食に集まっていた。

 

テーブルの一つを陣取ってオレ達は各自席に着く。

 

「特盛、何撮る」

 

「ナギィにナース服でも着させるか、ヒーラー」

 

「オレ着ねえから」

 

飲み物を買ってダラダラと過ごす。

 

会議は踊るされど進まずスタイル。

 

いつもなら。

 

「今日までに私が考えてきた企画があります」


鞄からダブレット端末を取り出し牧菱さんが案を出してきた。

 

スライド式で企画を数点ほど彼女はオレ達に解説する。

 

例としてはこうだ。


大学構内や大学付近の飲食店の紹介。


高校生から大学生になってからの変化など。


シンプルかつ牧菱さんらしい真面目さに溢れた内容だ。


彼女は目を輝かせて主にヒーラーに向かってアピールした。


内容も作り込まれているしこれでいいだろう。


後はヒーラーと特盛が認めるだけだ。


「「却下で」」


即否決された。


「なんでだよ。こんなによくできているのに」


「だって、こんなお堅い内容だとな。特盛」


「こういうのは他所の班がやるもんだろ。ヒーラー」


それはないだろう。


きっと牧菱さんも落ち込んでいるに違いない。


そう思い彼女を見たらいつもの真顔だった。


「牧菱さん。企画ダメだったのに辛くないの」


「企画が採用されないくらい普通に有ります。一々嘆いていられません」


「強いんだね、牧菱さん」


「ところで皆さんいいですか」

 

牧菱さんのタフさには感心する。


彼女はというとオレ達を鋭く(にら)めつけてきた。

 

そのギラりとした眼差しにオレの背筋が思わず伸びてしまう。

 

「少しこのチームについて振り返ってもいいでしょうか」

 

「いいぜ」


ヒーラーが牧菱さんの提案を受け入れる。

 

今更振り返ることなんてあるか。

 

「このチームのリーダーは柊さんですよね」

 

「まあな」


じゃんけんで負けたからリーダーやっている。


これについては黙っておこう。


「このチームは柊さんと襟着さんの退部防止のためにできたんですよね」


「おい、テトそこまでにしておけ」


特盛が牧菱さんを諌める。


それにも関わらず彼女は淡々と言葉を続ける。


「後馬さんが奈種さんを叩いた件でお二人が抗議して……」


「やめてくれ。牧菱」


切実にヒーラーが牧菱さんに訴えた。


普段の明るさとは正反対の重々しさだ。


「何も知らないナギィさんが可哀想だと思って言いました」


「悪いが俺には企画落ちした当てつけにしか聞こえないぞ」


席を立つとヒーラーは特盛にも離席を促した。


「お前らどこ行くんだ」


「申し訳ないがナギィと牧菱で企画を決めてくれ」


「悪いがおれとヒーラーはこれで帰らせてもらうぜ」


二人はそう言い残し帰ってしまった。


牧菱さんを見てみる。


いつも通りの何を考えているか分からない真顔のままだ。


「オレのことは気にしなくていいから」


「はい」


「この際だからヒーラー達が隠し事聞かせてくれよ」


「いいですよ」


とにかく話を聞いてみないと。


オレとしても気になるし。

 

牧菱さんが語ったヒーラー達のもう一つの過去。


まとめるとサブチームの設立は奈種さんなりの気遣いだった。


去年の活動中に生じたトラブル。


熱くなりやすい後馬さんはよく周囲とぶつかっていたらしい。


その性格が災いしてある撮影の際に人をその手で叩いてしまった。


相手は奈種さん。


当時後馬さんと奈種さんは付き合っていた。


だからこそ、場は騒然としたみたいだ。

 

現場にいたヒーラーと特盛がそれに抗議して空気は最悪に。

 

そんな中で事態を止めたのが奈種さんの涙だった。

 

後日、ヒーラーと特盛は退部を決意。

 

しかし、奈種さんが二人を引き留めた。

 

自分のせいで二人が辞めてほしくなかったからだ。

 

そこでサブチームが設立された。

 

二人が部を引退するまでの活動の場として。

 

このとき先の一件を知らない人物がいればと奈種さんは思った。


ヒーラー達が心落ち着くようにとのためだ。

 

そこに都合よく部活についていけず悩んでいたオレが現れた。

 

これがメディア研究部サブチーム誕生の経緯。


「ありがとう。ところでこの話って誰から聞いたの」

 

「奈種さんからです。あの人は高校の部活の先輩だったんです」

 

オレは話をしてくれた牧菱さんにお礼を言った。

 

色々と知らなかったのはオレだけかよ。

 

でも、そのおかげでヒーラーと特盛は気が楽だったんだろうな。

 

高校時代のことも去年のことも。

 

オレが何も知らない方が二人にとってはありがたいよな。

 

その上でオレは牧菱さんに尋ねてみる。

 

「牧菱さんが部活に顔出さなかったのもこれに関係しているよね」

 

「はい」

 

「ヒーラーの扱いが悪くて後馬さんに抗議した、とか」

 

「正確には奈種さんや副幹事の浅漬(あさづけ)さんも交えてですが」

 

「ガチでやったんだ」

 

おっかねえ。


怖いもの知らず過ぎるだろこの子。

 

表情一つ変えずに牧菱さんは更に事実を語る。

 

「一か月の休部としばらくの間サブチームへの在籍だけで済みましたけど」

 

「もしかして、奈種さんがめっちゃ庇ってくれなかった」

 

「はい。あの人のおかげで私は部活を辞めないで済みました」

 

「奈種さんに後でオレから謝っておくよ」


四月の間部に顔を出さなかった理由は分かった。

 

だからこそ、彼女の心を突き動かすものをハッキリさせておきたい。

 

失礼だと分かっていても。

 

「牧菱さんはヒーラーが好きだからそういうことをしたんだよね」

 

「まあ。というかそれ私の前で言いますか普通」

 

「ごめん」


言動はどうあれこの子はヒーラーを想っているのは確かだ。


窓の外、遠くを眺めながら牧菱さんは気持ちを漏らす。

 

「私はかつてのひたむきな柊さんに戻ってほしいだけなんです」

 

きっとそれをヒーラー自身は望んでないだろうな。

 

これって部内恋愛が根本にあるよな。

 

気持ちの矢印とか、お互いの立場とか。

 

昔何があったとか、今は何をやっているのか。

 

想いのすれ違いやぶつかり合いとか。

 

色々なものが混ざって部活にも影響しているのが分かる。

 

当のオレは蚊帳(かや)の外っぽいけど。

 

定期集会の企画は結局決まらないままオレと牧菱さんは解散した。

 

それをLEARNでヒーラー達に報告したときだ。

 

『週末俺らの地元に来ないか』

 

ヒーラーから意外な返事がきた。

 

これには牧菱さんも含めてみんな承諾した。

 

合宿、ではなさそうだな。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

8/1に改題の件で活動報告をあげていますので、

お時間あれば、ぜひそちらもご覧ください。

次回の更新は8/14の17:00を予定しています。


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