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メイキング8 想いを追ってほしいんだ

ヒーラーと特盛、そして牧菱さんと一緒に。

ピザを食べながら。

鑑賞してくれた作品の感想や意見を出しあった。

そして……。

遂に定期集会、サブチーム以外の部活の皆へと。

作品を披露する日がやって来た。

皆に見直してほしい。

その思いからここまで来たんだ。

色々あったけど。

この作品を見終わった後に。

ヒーラーや特盛に牧菱さんの三人だけじゃなく。

奈種さんはどんな顔しているかな。

「オレ、もう一個サーモンのやつ食ってもいいか、ヒーラー」


「いいぜ、ナギィのために買ってきたんだしな」


「じゃあ、おれ四種のチーズのゴーダのやつもう一個いいか」


「いや、お前はダメだ特盛。さっき食ったろ」


「なら、私はモッツアレラのところ取りますね。誰も食べてないし」


とりあえず。


ヒーラーと特盛が買ってきくれたピザ二つを。


肉と魚介のツインピザと。


四種のチーズで食べる濃厚のピザを。


小さなテーブルに広げて。


それを食べながら。


おれ含め四人各々で。


意見の出し合いをしていた。


ピザの取り合いをしながら。


「何度も変更して申し訳ないのですが、ナギィさん一ついいですか」


「なに、牧菱さん」


「使わないでくださいって言った、アーケードのホール、作品に利用してもいいですよ」


「いいの、大切な場所だから、できれば見せたくないんじゃなかったの」


「あれは……ナギィさんと距離を置きたいための方便というか……」


「無理に気持ちを言葉にしなくてもいいよ、疲れちゃうだけだし。言いにくいこともあるなら尚更ね」


さっきの奈種さん絡みかもしれないな。


家族との思い出って言っていたけど。


奈種さんとの思い出もあるかもしれないし。


後輩と先輩としての。


なら、作品として残すのは。


奈種さんに見られるのが嫌かもしれない。


いいや。


これはちょっと考えすぎかな。


と、心の中で彼女に配慮していたら。


「なんかナギィがセンチメンタルなこと言い出したぞ、特盛」


「ヒーラー、同感だ。そんな繊細なこと言えたんだな、ナギィにも」


「ああいや、これは受け売りみたいなものだよ」


「受け売りというと、誰かからナギィさんに送られた言葉なんですか」


「去年、帰省した際に地元に新しくカフェができていてさ、そこのマスターのおじさんの言葉なんだ」


「何か悩み事でもあって、そこのマスターさんに話そうとしたんですか」


「まさにそうで、マスターから気を遣われたんだ」


「おやおや、どんな悩みだったのかな。気になりませんか特盛」


「ですな、ヒーラー。恋の悩みかもしれませぬ。どんな悩みか聞かせてくれますかな」


なんだ、この流れは。


まあ、でも話さないといけないよな。


こうなったら。


面白くないけど。


「部活についていけるかどうか、その頃からちょっと悩んでいたんだよ」


「ナギィさん」


「そん時は奈種さんには言う程じゃねえって思っててさ」


途中で辞めるのがなんか嫌だって。


カッコ悪いなって。


曖昧な、単純な理由で。


部活について悩んでいたら。


あの店を見つけて、立ち寄ったっけ。


「周りに言えるような人、部内にはいなくてさ。一人で抱え込んでいたんだよ」


「「ナギィ」」


ヒーラーと特盛が。


同時に態度を改めた。


内容が内容だし。


それこそ。


あの頃のオレの頭の中って。


予想していたよりもハードな部活で。


束縛されている気もして。


友達作りや彼女作りも。


部のノルマで心も体も時間も余裕なくて。


それどころじゃなかったし。


だからこそ、自分の気持ちを。


気持ちの吐き出し方が分からなくて。


部内の誰も知らない場所の。


部内の誰も知らない人が。


気持ちを察してくれたのが。


すごく嬉しくて。


あの日マスターが淹れてくれたコーヒーの味は。


砂糖とクリームで甘くしてくれた優しさを。


まだまだしっかりと覚えている。


「結局、限界が来て奈種さんに相談したけどさ、マスターのおかげで頑張れたかな」


「俺の感想だが、その人のおかげでナギィが退部を踏みとどまってサブチームができたんじゃないか」


「ヒーラーに同感だ。そのおじさんがサブチームの影の設立者だな」


「お二人に同じです。会ってみたいですね、その人に」


三人はピザを食べつつ。


ウキウキしながら。


オレを見つめていた。


ここまで来ると言うことは一つだな。


「じゃあ、今度みんなでオレの地元に来るか」


「いいじゃん。撮影抜きで俺そのおじさんに会ってみたい」


「同感だ。おれもおれも」


「私もです。ところでナギィさんの地元ってどこでしたっけ」


「鮒底市だよ。電車とかバス乗り継ぐけど、大学からカフェまで二時間くらいかかるかな」


みんなの地元に。


思い出の場所に連れて行ってもらったから。


今度はオレが。


自分の思い出の場所に連れて行かなきゃ。


お金とか時間は今は気にせずに。


次の定期集会の作品の制作とは関係なく。


サブチームのみんなと行ってみたいな。


なんて。


ピザパーティしながらの。


意見の出し合う光景を。


こだわりの強い部員の人が見たら。


厳しく批判されるだろうけども。


編集作業はストップしているけども。


こんな感じで作品を良くするために。


四人でコミュニケーションをとっている。


だからこそ……。


ピザを食べる。されど推敲すいこうは進む。


これがオレ達サブチームの制作スタイルだ。


そして、一時間後。


オレ達はピザを食べ終えて。


差し入れという名のプチ部活動は。


幕を閉じようとしていた。


もちろん、ただピザをオレは食べていたわけじゃない。


メモ帳にみんなの意見を書き記していたりもした。


ちょっと失礼だけど。


みんなが帰ってからが。


編集作業の本番になるから。


「俺達が見た時以上の仕上がりにナギィなら絶対にできる」


「おれ達の思い出を素材にして、ナギィの言うように他の班から見直してもらおうぜ」


「私達はナギィさんの頑張りを知っているから、自信持っていきましょう」


みんなが生き生きとした笑顔で。


いつも堅めの表情の牧菱さんも。


ヒーラーと特盛に負けなくらいの。


嬉しそうな顔をして。


オレに発破をかけてくれた。


「ありがとう、みんな」


そうして、帰っていく三人を。


オレは満面の笑みで見送った。


ああ。


いいもん作ってやっからな、みんな。




定期集会の前日。


みんなからの差し入れもなく。


大学の講義が終わると。


アパートに直帰して。


完全に編集作業に没頭していた。


編集画面を見て。


ストーリーボードにはめ込まれた画像や動画。


それらに付随する画面右サイドにある音声編集の項目たち。


タイムストリーミングのカーソルを何度も動かして。


ノイズ消しのために音量調整や。


背景に映り込んでしまった。


偶然通った車のナンバーや。


無許可のお店の看板に。


ぼかしが入っているかのチェックを繰り返して。


何度も何度も映像を再生しては。


これでいいだろうと思って。


ファイルに保存できるように。


動画を一度映像データとして書き出して。


それを鑑賞したら。


また改善点が見つかって、で。


修正を繰り返す。


ただ、集会当日も講義はあるわけで。


その日最初の講義は。


二限目からで。


間に合うように。


十時過ぎに起きれるような。


ギリギリの時間まで起きるつもりだったが。


気づいたら。


もう、午前五時はとっくに回っていた。


目覚まし時計とスマホのアラームを。


ダブルでセットしたら。


オレはすぐに寝た。




定期集会当日。


睡魔と戦いつつ。


なんとか最初の講義には間に合い。


そのまま残りの講義も受け終えた。


時間は四時五十分。


正午、お昼の休み時間に。


滅多に飲まないブラックコーヒーを飲んで。


一時間ほど図書館で仮眠をしたおかげで。


大分調子も良くなってきた。


かなりコンディションを回復したオレは。


購買付近の休憩スペースのテーブルで。


作品の最終チェックをした。


編集ソフトの画面で集会中に映像を流すから。


動画データを書き出すのは。


無駄じゃないか、と。


不意にとある講義中に思っていたが。


うちの部活の集会だと。


プロジェクターでホワイトスクリーンに。


映像を投影するわけだから。


画面比というべきか。


実際に映し出される動画を想定したなら。


もしも、プロジェクターが編集ソフトからの。


直の投影に急に対応しなくなったのなら。


動画データとしての書き出しは。


作品のチェックや。


機器トラブルへの柔軟な対処なんかにもなるし。


あながち無駄じゃない気もする。


いかん、いかん。


作品のチェックだ。


ぼかし忘れに。


途中ほんの少しでもノイズが混じっていないか。


動画のつながりはスムーズにいっているか。


まだやれることがあるならやっておきたい。


ちょっとでもクオリティを上げておきたい。


そうしている内に時間は過ぎていって。


残り十五分を切ったところで。


オレはパソコンをスリープモードにして。


定期集会が行われる講義室に向かった。


もう今日ここでの講義が行われないのか。


既にメディ研の部員の人たちによって。


室内は集会の準備が進められていた。


部屋の前方には。


ホワイトスクリーンが天井から垂れ下がっていて。


プロジェクターもスクリーンから距離があるものの。


最前列で映像がよく投影される位置に設置してあった。


なにより、オレ同様に。


今日の講義を終えた部員の人たちがいるのが。


もうすぐ。


サブチームにとって。


大事な場面を迎えようとしているんだって。


感じさせてくれて。


オレに緊張とやる気を与えてくれた。


今いる面子メンツの中に。


サブチームのみんなや奈種さんの姿はないが。


逆にそれが、ありがたかった。


本気、ぶつけるから。


みんなとかの顔を見ると。


気が緩みそうだから。


感想代わりとして。


みんなの顔見るのは。


全部終わってからでいいや。


上映の順番も一番目だし。


集会が始まる六時よりも早く。


プロジェクターに自分のパソコンをケーブルで接続して。


動画の映り具合を確認してみた。


まだ部屋の暗幕は降ろせないけど。


角度的には悪くない。


そんなギリギリのギリギリまでのチェックをしていると。


時刻は六時になっていった。


定期集会の部内報告も始まっていたが。


機材担当の特権として。


オレは機材の操作と作品のチェックが許されていた。


しかも暗幕で部屋が閉めきられて。


上映用のスピーカーにもつながっている。


本番の状態で。


よし。


編集ソフトのままでも動画がプロジェクターに映し出されている。


ストリーミングのカーソルを動かしてみる。


うん。


映像は冒頭から最後まで早く移動しただけ。


音声も出だしのBGMを聞く程度だけ。


それでも、今のところ問題なさそうだ。


だから、後は作品を上映するだけ。


サブチーム以外の部内の皆が。


見直してくれるかどうかだけ。


だから、全部終わるまでは。


後ろ。


振り返らないほうがいいよな。


「サブチーム班、作品についての説明をお願いします」


司会をする幹事の後馬さんの指示で。


前でチームリーダーのヒーラーが。


今回の作品を説明しているけども。


あいつの顔はまだ見ちゃダメだ。


全部済むまでは。


「では、サブチーム班。上映をお願いします」


後馬さんからオレへの指示が来た。


緊張のせいで躊躇ためらっているのか。


手が震えている。


でも、ここで止めたら。


それこそ本当にカッコ悪いよな。


うし。


サブチームのみんな。


やってやろうぜ。


オレは目を瞑って。


ヒーラー、特盛、牧菱さん。


三人を思い出して。


強引にダサい緊張を抑えつけて。


いい意味で後先考えないようにして。


画面上のカーソルを。


動画の再生ボタンの上に合わせて。


ノートPCのマウスをクリックした。


スクリーンには。


まず最初に高校時代のヒーラーの通学路の一風景が映し出されて。


室内にはピアノのノスタルジックな曲が流れ出した。


皆に見直してもらうための。


ヒーラー、特盛、牧菱さん達の思い出の追体験が始まる。


これが終わったら。


最初に誰の顔見ようかな。


サブチームのみんなには悪いけど。


奈種さんの顔見たいな。


思えば、あの人がいたから。


サブチーム結成の経緯を考えたら。


この『通学路を重ねて』が出来たのを想ったら。


奈種さんがオレに。


冬休みにサブチームへの。


異動を勧めてくれたのが始まりなわけだし。


あれを見終わった奈種さんは。


どんな顔しているかな。


この作品が出来るキッカケをくれた人に。


期待をしながら。


もう何度目か分からない。


映像の中の道をオレは。


部活の人達と一緒に辿っていった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

前回の後書きだの説明ですと。

最終回が前話に誤解してしまう方もいらしたと思うので。

遅ればせながら、申し訳ございませんでした。

では、今作に関してお伝えすると。

もし、よろしければ本編をもう一度読み返して頂ければ。

また違った味わいを体験できるかもしれません。

なお、青い夏の欠片(以下略)のときとは違い。

今作における作品全体の後書きについては。

投稿は未定です。

予めご容赦ください。

少し話題が巻き戻りますが。

ナギィ、ヒーラー、特盛、牧菱。

彼らサブチームの物語はどうでしたでしょうか。

青春の一言だけでは片づけられない。

ちょっとビターチョコみたいな風味でしたが。

その甘苦さこそ。

今作の魅力として受けとっていただければ。

私としては嬉しい限りです。

では、次回作の投稿に関してですが……。

明日ハロウィンの10/31の17:00の予定です。

前回の後書きでの告知通り。

変則的になってしまいましたが。

なんとか活動報告どおり。

10月内には投稿する予定です。

さて、予告も済みましたので。

改めてお礼をお伝えします。

最後までお読み下さった読者の皆様へ。

ありがとうございました。

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