メイキング2 ここが集合場所かよ
特盛に縁のある公園を撮ったとはいえ。
本格的な撮影は今日だけ。
しっかりしないと。
ただ、メンバーの都合とはいえ。
集合場所がヒーラーがオレに。
思い出を聞かせてくれた例の図書館だった。
昨日、特盛の野球にまつわる思い出の公園を。
撮り終えた後に。
今日の打ち合わせをした。
「みんな。ちょっといいか」
静止画と動画を組み合わせたショートムービーが。
今回の発表会で披露する作品だ。
ただ、作品のコンセプトとして。
ちょっとマズイかなと。
思ったポイントがあった。
「通学路とはいってもみんなの部屋とかは撮らなくていいから」
「おれん家の部屋とかかなり散らかってるからな」
「特盛ん所、今も弟たちが共同で使っているし映すのも気が引けるな」
「私も個人的に自分の部屋を晒されるのはちょっと」
流石に各々(おのおの)の実家の外観や。
その中の自分の家の部屋を。
見せるのはいくら部内の発表会であっても。
プライバシー的にマズイとオレは感じたので。
通学路とはいっても。
高校時代に実家から学校まで通う道のりの風景を。
ヒーラー達に撮ってきてもらう運びになった。
もちろん。
できるだけ朝早く起きてもらって。
各自撮った画像や動画をオレに送ってもらう方式だ。
動画といっても。
ものの数秒程度のものだ。
七、八本ぐらいはあると助かるんだけど、と。
ちょっとばかり贅沢なお願いをしてみた。
「じゃあ、みんなよろしく頼む」
「あいよ」
「オーケー」
「分かりました」
軽くその旨を説明して。
その日の九時くらいに。
グループトークで改めて伝えた。
そして、今日。
「うし、行こうぜナギィ」
「ああ。ヒーラー」
「道すがら俺が画像や動画撮ったりするときは悪いけど待っててな」
「もちろん。でも、まあ本当にいいのかな。あそこで」
「いいって、特盛とヒーラーもオーケーしたんだしさ」
最初のロケ地というか。
撮影場所の。
ヒーラーの思い出の図書館が。
集合場所になった。
特盛と牧菱さんのスケジュールの都合上で。
全員自転車での移動が難しいため。
今回の移動手段はサブチーム全員徒歩とバスによるものだ。
といっても。
オレとヒーラーはここまで歩いてきたが。
特盛と牧菱さんは。
身内の人に図書館の近くまで送ってきてもらったそうだ。
その道すがら。
途中で車を停めてもらって。
二人は写真や動画を撮って来たらしい。
「二人ともおはよう」
「よっ、特盛にテトラに、お二人さん仲良く到着ですな」
「おう。おれとテトちゃんとの仲だからな」
「笑えない冗談はやめてください。不気味です」
「んもう。手厳しい。テトちゃんったら」
元々は牧菱さんが大学受験の際に。
合格祈願した市役所の近くにある大きな樹が。
集合場所の候補になっていたのだが。
一週間前からその付近で。
道路や水道管なんかの工事が始まってしまっていて。
そこで待ち合わせできなくなってしまった。
代わりに例の図書館が選ばれたのだが。
正直、ヒーラーからすれば恋愛要素もあるし。
ここで撮るかどうか。
オレとヒーラーは悩んで。
特盛と牧菱さんにも。
図書館のベンチでの。
オレらのやり取りをトーク内で伝えたが。
なんと。
『部活の思い出として、な』
『恋愛とは別に柊さんや襟着さんの部活の思い出もあるじゃないですか』
珍しく特盛と牧菱さんの意見が。
合致した。
これにより。
オレ達の集合場所兼撮影スポットとして。
あの図書館が決定した。
今回のコンセプトとして。
ゲームとかでいう。
一人称視点みたいな感じで。
ヒーラー、特盛、牧菱さんが。
過去に見ていた風景という体で。
撮影をしていく。
要はサブチームのメンバーは誰も映らず。
撮影だけなら。
場所だけ教えて。
誰か一人がカメラをまわすだけで。
いい気がする。
でも、これは思い出を辿る作品だから。
その場所に来て。
本人から色々と話を伺ってこその。
ものだとオレは信じている。
「ヘイ、ナギィ。どうしたんだ。突っ立てよ。何か考え事かい」
「ヘイ、特盛のいう通りだ。悩みでもあんのかい」
「悩みじゃねえけど、なぜに特盛、ヒーラーはラップ調なんだ」
「ですね。ただ、今は誰もいないし。撮るなら今の内ですよナギィさん」
「ああ、うん。そうだね牧菱さん」
図書館前の外の広場には誰もいないし。
静止画と動画の両方を考えれば。
建物の全景を映すにはちょうどいい。
オレがスマホのカメラを構えたときだ。
食い入るようにヒーラーと特盛の。
二人がそれぞれリクエストをつけてきた。
「俺にとっては通学路で通り過ぎる場所だし、こう、右から左へ進んでいく感じで頼む」
「おれにとっては純粋に高校の部活での思い出があるからさ、入口前のベンチをお願い」
「でも、確かあそこって……」
作品の中の出来事とはいえ。
ヒーラーが奈種さんにフラれた所で。
部内恋愛に絡む場所じゃないか。
そんなオレの懸念を特盛は。
いつもの明るい感じで吹き飛ばしてきた。
「昔撮った作品のことなら気にするな」
「えっ」
「おい、ヒーラー。あれの内容全部ナギィに教えたのか?」
「いけね、俺がフラれた場面しか言ってねえ」
「なら、あの場所でおれの口から言わせてくれないか」
特盛は懐かしそうな笑顔を浮かべて。
オレ達の先頭に出ると。
サブチームのメンバーを。
図書館入口前のベンチまで連れっていってくれた。
昨日、ヒーラーがオレに。
高校時代の部活の思い出を聞かせてくれた場所だ。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
やや短めですが楽しんでいただけたでしょうか。
なんとなく普段より朝早い待ち合わせって。
いつもより緊張しませんか。
では、次回の更新は9/25の17:00の予定です。




