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ヒューリが聞いた。
「あんた、この世界に来て何日目なんだ?」
「まだ二日目だよ」
「じゃあ、あたしと同じようなもんだな。あたしは今日が初めてだから。あんた、このゲームについて詳しいのか?」
「詳しくは無いな。だけど、前前世が人間だったから。VRMMOについてはそれなりに知識がある」
「ふーん、じゃあ教えてくれ。あたしたちはこれからどうすればいいんだ?」
「えっと、それはだな」
顎に右手を当てて考える。俺たちは一体どうすればいいのだろう? 当てずっぽうで言った。
「ゲームをクリアすれば良いんじゃないか?」
「ふーん。ゲームクリアって、どうやるんだ?」
「最後のボスを倒せば良いと思うぞ?」
「ふんふん、じゃあ倒しに行こうか。最後のボスって奴はどこにいるんだ?」
ため息をついた。俺のレベルは1である。ヒューリも変わらないだろう。だったら、まずはレベル上げをするしかない。だけど武器がない。
俺は聞いた。
「最後のボスにはまだ勝てないな。それよりヒューリのジョブとサブジョブを教えてくれ」
「ジョブとサブジョブ? 何だそれ?」
「ステータス画面から見れるんだ」
「ステータス画面? どうやって見るんだ?」
俺は右手を軽く上げて、ステータスオープンとつぶやいた。目の前に半透明の青いボードが出現する。
ヒューリもマネして同じようにステータス画面を開いた。
彼女の横に並び、ステータスのジョブ欄を開いてもらう。どうやら彼女のジョブは風であり、サブジョブは魔法使いのようだ。スキルは突風とヒールを覚えている。
彼女は言った。
「何だこれ。突風と、ヒールって? あたしが使えるのか?」
「ああ、ヒューリの持っているスキルだ」
「ふーん。強いのかなあこれ」
「とりあえず、ヒューリはサブジョブが魔法使いみたいだから。魔法のようなスキルを使えるみたいだな」
「ふーん。で?」
「で? って何だ?」
「どうすれば良いんだ? あたしたちは」
「とりあえず、レベル上げをしよう。最後のボスを倒せるように、強くなるんだ」
「ふーん。まあ分かったよ。じゃあレベル上げをするか。どうやったらレベルが上がるんだ?」
「そこから説明しないといけないのか」
苦笑した。彼女はゲームについて何も分からないらしい。あれやこれやと、色々教えていかないといけないようだ。
ヒューリにステータスのアイテム欄を表示させると、持ち金はゼロのようだった。
「とりあえず、狩りに行こう」
「狩り? 狩りって、何か倒すのか?」
「ああ、村の外にモンスターがいるから、一緒に狩ろう」
「狩ろうって言っても、あんたもあたしも、武器なんて持ってないぞ?」
「……素手とスキルで狩るしかないな」
昨日は、宿屋代や食事代を稼ぐために素手で狩りをしたのだった。
「ふーん、じゃあまあ、行くか」
「ああ、行こう」
俺たちは道具屋を出て歩き出す。肩を並べると、通りがかるプレイヤーの視線がヒューリに集中していた。彼女の顔は秀麗であり、男なら振り返ってヒューリを眺める。そんな彼女と肩を並べるのは鼻が高い気分だった。
ふと、遠くの方で悲鳴が響いた。
「何だ?」
「ヒューリ、引き返すぞ!」
やばい!
向こうで、悪いプレイヤーによる初心者狩り始まっている。
俺は彼女の腕を掴んで引き返して歩いた。
「おおい! 助けに行かなくていいのか?」