お試しポーション作成
転生して5日目。
俺は再度、害虫駆除クエストを受注した。
千里の道も一歩から!それでも大分慣れてきたと思うまでになった。
南門から出て草原へ。今日は午前中に終わらせる予定だ。
午後からは買い物をする。こないだポーション作成の見学にいったんだ。
自分でも試しに作成してみたいのである。薬草自体はどこでも生えているんだが、北門から出た方が見つかりやすいというだけだ。
南門を出た草原でもあることにはある。今回は別に採取クエストを受けていないので大した量を取らなくてもいい。
途中、武器屋に行き手袋を買った。
剣を振り回す上で少しでも負担を減らしたい。
指あき手袋にした。手袋の中が蒸し蒸ししたら嫌だもんね。
何はともあれ、スライムは単価が小さいので、蜂と蜘蛛、あと飛蝗を討伐することにした。スピア以外は食害が酷いので優先することにした。
途中、農家の人が声を掛けに来てくれた。
スライムなら手は出せるけど、スピアやスパイダは手が出せないので助かっているそうだ。ロカストに関しては個体数が多く、やっていけないらしい。
おかげで葉物野菜は栽培が難しく、できても根菜ばかりだそうだ。
思いのほか、ロカストが多く討伐数が100ぐらいになった。単価は気になるが、よろしく頼むよ?
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午前中に一仕事終え、冒険者ギルドへ向かう。
「ミラリスさん!クエスト終了しました!」
俺は奥のカウンターで報酬金を受け取る。
「銀貨4枚、銅貨15枚です!」
ぼちぼちいい金額だった。
ロカストの討伐では脚を証にした。何かに使えるんだろうか?
まだスピアの針やスパイダの顎の方が使い道がありそうだけど。
小金を手に入れて、依頼書の貼り出されている掲示板に向かい、明日はどうしようかと見て回った。
なに、討伐対象の絵が描かれているからなんとなく分かる。
すると、いかにも猪討伐らしいものが貼ってあった。
ボア肉の確保ができるかも!
それを取って受付の方へ提出する。
「これ、俺にも受けれますか?」
ミラリスがそのクエストを見ると、少し困った顔をした。
「ええと、今のワイドさんでは少々厳しいかと。まったくダメ、という訳ではないんですが・・・」
「無茶はしないからさあ。お願い!」
ミラリスは渋々ながら、受諾してくれた。
「ワイドさん、最近がんばってますもんね」
「ありがとう!ちなみに、こいつの牙を取ってくればいいんだよね?」
「はい。一体当たり二つ」
「りょうかい!」
さて、討伐報酬だけじゃなく、その毛皮やら肉やらも持って帰りたい。
荷車でも借りられるんだろうか?
「ちなみに、ボアを運ぶ荷車とか借りれるのかな?」
「ええ、貸し出し料を出せば、ギルドから出せますよ!」
「ボアの買取とかもできますか?」
「ギルドの裏でできますが・・・」
なにか含みがあるらしい。
「一体当たり、どのくらいで買い取ってくれますか?」
「重量にもよるんですが、大体銀貨2枚ですかねぇ」
ううむ、微妙な匙加減。
「もちろん、魔石も買い取れるので、全部で銀貨4枚ぐらいです」
え、魔石?
「魔石って、ボアから取れるの?」
「はい!ボア以上の強さの魔物からは取れますよ!」
良いことを聞いた。
魔石でも商売になるんじゃないだろうか?
「ちなみに、魔石は何に使われたりするんだろうか?装飾以外で。」
ミラリスは考え込んで空中を目線が彷徨っていたが、「装飾以外では使われませんよ?」と答えた。
しかし何か閃いたようで、「そうだ!」と言いながら何やらゴソゴソしだした。
「ワイドさん、こちらも並行でお願いします!」
手渡されたのは、薬草採取の依頼書だった。
俺はギルドを後にすると、薬屋へと向かった。
「こんにちはー」
「おお!いらっしゃい。今日はどうされましたかな?」
「俺もポーション作成してみようかと思いまして」
「ほう、それではフラスコですかな?」
「はい、フラスコ1瓶と、三脚。ポーションを1瓶。」
「フラスコで銅貨8枚、三脚で銀貨1枚。ポーションは銀貨1枚だよ。」
「昨日作成したポーションと同じものですかね?」
「そうだとも。1瓶あたり銀貨1枚!」
「じゃあ、貰いますね!」
銀貨2枚と銅貨8枚の出費だが、一回作成してみてのお試しだから大丈夫だろう。
割が良ければ大量生産して売ろう。
サンプルとしてポーションも買った。
「ところでワイドくんは魔法を使えるのかね?」
疑問に思ったのかマックさんが聞いてきた。
「ええ、まあ、少し・・・」
「なんと!!」
途端に顔色が明るくなった。すかさず俺は「大したことは無いほんのちょっとのモノです」と付け加えた。
「そうであっても!すごいじゃないか!」
それほど魔力持ちが希少なんだろう。なんか、居た堪れない。
「今夜、試しに作ってみますね」
「おお、結果を楽しみにしているよ!」
果たして上手く作成できるんだろうか?
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宿に戻り、夕食を頂く。パン粥に温野菜だった。
質素な夕食がこの世界の常識なんだろうか。これが貴族社会になってくると毎日肉が食べられるのを史って、なんて世界は不条理なんだと憤慨した。
どうしても俺は毎日でも肉が出せれるような状況にしたい思いがあるので、明日のクエストが楽しみなのだ。
食事が終わると上の階に上がり、俺の部屋、手前の左手にある扉を開ける。
今日買ってきたフラスコと三脚、そして薬草を机の上に並べた。
フラスコの口に右手人差し指を付けて、意識を集中させる。
イメージは水。するとちょろちょろとフラスコの底に水が溜まった。
たった一回分の水なのに、精神が参ってしまいそうだ。
次に三脚の下に、これまた草原で見つけた平らな石と、木の枝を置いた。
今度は火を出す。
徐々に燻ぶっていた枝から火が見え隠れしてきた。
よし!あとは沸騰したらサルビアを一株、葉を千切って入れるだけだ。
「あと、魔力を込めるんだっけか」
水と火種を出した後なので、だいぶ大したことが無い魔力だとは思うけどやるだけやってみよう。
右手をフラスコに向けて意識を集中させる。
少し色が変わったような気がした。
そのまま4分ほど経ったが、色は薄いようだ。
買ってきたサンプルのポーションとフラスコを並べてみると、店で買ったポーションよりもさらに薄いピンク色だった。魔力量が少ないせいだろう。
「これ、もう桜色より薄いだろ。」
左手の指の腹を剣先でちょっと傷をつけた。
血が少しではあるけど滲んでくる。出来立てのポーションを垂らすと、出血は止まった。傷跡はまだ残っているが、止血剤ぐらいの効果は出たようだ。これが店で買ったポーションだと、もう少し大きな怪我が、無かったかのように治癒されるんだろうな。
「もっぱらの優先事項は魔力量だな」
こうして俺の、初めてのポーション作成は、止血剤ぐらいの効果のもので終わった。