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初クエスト

転生して3日目。


遠くから鐘の音が聞こえる。

俺は硬いベッドから身体を起こした。今日から冒険者兼商人としての一日が始まった。

取り合えず服は手に入れたし、依頼書(クエスト)も行商許可証もある。

今日は防具と武器を手に入れて、さっそく魔物討伐をしようと思う。

一階に降りると、空いているテーブルに腰を下ろす。

テーブルクロスがあるんだが、異世界といえば剥き出しの木製のテーブルだと思うだろ?なんと周りを見てみると、テーブルクロスで手を拭いている人たちがいた。

なるほど。この時代にはハンカチとか無い感じですね?

あと、ここはロング亭と呼ばれているらしい。

あの女将さんがミス・ロングだそうだ。


「朝食も銅貨5枚で良かったかな?」

俺は女将さんに聞いてみた。

「あいよ、うちは銅貨5枚が基本だよ」

銅貨5枚を革袋(サイフ)から取り出した。


朝食が運ばれてくる。これは・・・パン粥か?

後は温野菜。根菜類がほとんどだ。

「肉はないんですか?」

「肉は夕食に出るよ。稀にだけどね。」

「ちなみに・・・その肉って何の肉ですか?」

「ボア肉だよ。」

猪肉(ボア)。商品にできそうだ。しかも食される頻度が低そうなので、これはチャンスかもしれない。

ゆくゆくは取引してみたい。


*******************


俺は朝食を食べ終わると、宿屋を後にし、武器屋を探した。

看板を見て回る。

丁度、剣と盾の象徴(マーク)のある店を見つけた。

中に入ってみると、甲冑が置いてあったり、剣が立て掛けてあったり、かなり重量のありそうなものが並んでいた。

「・・・・」

店の奥から視線を感じる。

俺は奥に行き、店主と思われる厳ついおじさんに声を掛けた。

「防具と剣を見たいんだが。」

「そこらにある剣を試し振りしてみな。あんたに合った剣ならおのずと分かるだろうさ」

「防具の方は?」

「あんた、冒険者なりたてだろ?胸当てと肘、脛当てがちょうどいいかな。」

店主はそう言って、奥の方に引っ込んでいった。


手頃な剣を手に取って、正眼の構えをしてみる。

重い。

剣を肩口に縦にして構えてみた。八双の構えだ。ああ、楽だな。

確か盗賊とか、護衛の人たちは袈裟切りに振っていたな。剣を振ってみる。

俺は振った勢いで体勢を崩してしまった。うーん。難しい。

今持っている剣を置いて、それ程重くなさそうな剣を手にした。

今度は軽すぎるかな。もうちょっと重量あってもいけそうだ。

刀身もあるんだが、幅がちょっと小さく、耐久力という部分でも合ってないかもしれない。


「こっちは・・・っと。」

三本目に手にした剣は、竹刀よりもちょっと長く、重量もあったが、袈裟に振ってみると丁度良く制御(コントロール)できた。

今度は上段に構えてみる。

ちょうど店主が戻ってきた。

「・・・オイ、オイオイオイ!!」

なんだなんだ!?

「な、なんすか?」

「なにってお前、剣を持ち上げて何してんだ!!」

「こういう構えなんすけど。」

「そんなの見たことねええ!!」

俺は店主に怒られてしまった。

「第一、縦にしたとして敵一人だろ。横に振れば範囲も広がるし、遠心力で威力も出る。ストロークも広い。あんた、剣の扱いがなっちゃいねえ。木剣から始めろ。」

「なんと!失敬な!」

しかし、郷に入っては郷に従えと言うし、商人グラハム氏も珍しい剣術だと言っていたことを思い出した。

「とりあえず!俺はこの剣に決めた!」

「ああ、そうかい!好きにしな!!」

この店主、ご立腹である。

「防具も持ってきてやったというのに。なんなんだお前は!」

お、防具!早速着けてみたい。

俺は防具も試着させてもらった。ちょうどいい感じだ。

「あんた、ちょっと奥に来な。」

「へっ?」

店主さんが不機嫌な顔で俺を奥へと(いざな)う。

中庭のようなところに出た。あれ?既視感が。


「あの的に向かって攻撃してみろ。」

ははーん、さては俺の実力を見たいってことだな。

「分かった。」

俺は正眼の構えをとった。

店主の眉毛がピクッと動いた。

摺り足で近づいていく。一定の間合いに入ると一気に踏み込んで上段から剣を振るった。


バンッ


次いで、ものは試しと袈裟に切っていく。


ザシュッ


弾け飛んだ頭部に肩口からの斬撃(スラッシュ)

店主は「ぉう・・・」と声を漏らした。


「・・・どうですか!?」


俺は店主の方に向き直って、顔色を伺った。

「・・・なかなかやるじゃねえか。」

どうやら俺の評価が上がったらしい。

「だが、上段からのあれ、切るというより殴ってねえか?」

そりゃそうだ。剣道では切ってるんじゃなく打ち込んでるんだから。

「・・・それに、思ったよりも速かった。あんた、何かやってるだろう?」

俺はその答えに対して、言ってやった。

「もちろん、剣道をね。」

すると店主は訝しんで、「ケンドー?」と言っていた。

「聞いたことのない流派だな。まあいい。これで実力は分かった。」


店主は腕組をして、鼻息でフーっとため息をした。

「俺はスミス。また何かあったら立ち寄りな。」

右手を差し出してくる。俺は握手を握り返した。

「ワイドです。ワイド・トレント。」


店に戻り、会計をする。

「銀貨20枚だ。」

20まい!?

つまり、いうと、4万円。

「・・・まけてはくれませんか?」

するとスミス店主は、「しょうがねえ奴だなあ」と言いながら、15枚にしてくれた。

ありがてえ。

剣が10枚、胸当て、肘当て、脛当てで5枚だそうだ。だいぶギリギリでやってくれてたようだ。


俺は店主に「あざます」と言って出ようとした。

横目に宝石が(しつら)えてある剣が目に入る。

「・・・ところで、あの剣ですが。」

「なんだ?」

「いくらするんですか?」

「金貨100枚だ。」

たっか!!あまりに高かったので聞き返した。

「え!?なんでそんなに高いんすか!?」

スミス店主はやれやれ、といった風に説明をしてくれた。


「その剣は、見ての通り魔石を組み込んでいる。

それに合わせて柄から刀身までも特殊な素材で作られている。

俗に魔剣と言われることもあるが、魔法が使える者でないと十分な威力は出ねえ。

とはいえ実際に使える者はいないに等しい。装飾として貴族様達が購入されるものなんだよ。」


なるほど。どおりで刀身や柄までが他の剣と違い、神々しく反射しているのですね!眩しいです!

それに魔石と言われる鉱物が、赤く煌びやかにあることでその存在感が一層際立つ。


「・・・ちなみに、この剣で使う魔法は?」

「炎だ」

予想通り。赤い魔石だから、炎なんですね!

何はともあれ、今の俺には無理すぎる値打ちであることを実感しながら、店を後にするのだった。


*******************


次は、クエスト完了の証を入れる袋を調達だ。

討伐の証として、魔物(モンスター)の身体の一部を収穫するらしい。

スライムだと核を、スピアならハリ、スパイダなら顎だそうだ。

「どこで買えるんだ~?」

俺は街並みの看板を見て回る。

次の角を差し掛かる手前に、何かの道具が描かれた看板を見つける。

「なんの店か分からないけど、入ってみるか。見てみるだけならいいよね?」

ドアを開いて店内に入る。

机や戸棚の中に色々なものが入っていた。雑貨屋か?

「いらっしゃい」

奥から女性の声が聞こえた。

「あの、収穫するのにちょうどいい袋を探してるんですが」

「・・・、ああ、収穫袋ですね!ありますよ!」

そう言って、店の中を案内される。

「こちら、収穫袋の大、中、小ございます」

収穫するなら大きい方がいいだろう。大は小を兼ねるというし。

「大をお願いします」

「はい、こちら銀貨1枚になります」

銀貨1枚を革袋から取り出す。

「それで・・・ええと、冒険者の方、ですよね?

実は頼みたいことがあって・・・」

なんだ?何かのイベント発生か?

「なんでしょう?」

すると女性は語り出した。

「わたし、この店の主人のエミリーといいます。

実は、新しい商品を作ろうかな、と思っていたところ・・・

なかなか冒険者ギルドで依頼(クエスト)出せずにいたんです。

ちょうど良く、新人の冒険者さんが店に来てくれたので、

それで、その、お話しを聞いてくれませんか・・・?」


なんだ、出不精か?

それにしてもこの若さで店主か。いろいろありそうだ。

「いいよ、話を聞こうじゃないか。」

「ありがとうございます!」


エミリーによると、より丈夫な布を作ってみたいらしく、魔物である蜘蛛(スパイダ)の糸が欲しいらしい。まずは試作品からということで、スパイダの腹を一つ依頼したいらしい。


「いいね、乗った!」

「ありがとうございますぅ!」

そこで俺も商人の許可証があるので、条件を出してみた。

「しかし、条件があるんだが」

エミリーは、"条件"という言葉を聞いてピクリとした。

「な、なんでしょう・・・?」

俺は自分の行商許可証を引っ張り出し、エミリーに見せた。

「新商品ができたら、是非とも俺に買い取らせてくれ!」

エミリーは目を丸くしている。しかしその次にはにっこりと微笑んで、「はい!」と受け答えてくれた。



*******************


俺は南門へ足を向ける。クエストを行うのだ。

「止まれ」

門番に声を掛けられる。

「交通料を出せ」

俺は許可証を見せつけた。

「・・・なんだ、移動商か。通っていいぞ」

やったあ。無料で通れるぞお!

「・・・あんた、グラハムさんと一緒に来てた奴か?」

また呼び止められたのかと思いきや、門番さんは俺のことを覚えていてくれてたようだ。

「はい!その節は、どうも。」

「神の加護は受けたか?」

「ええ、受けましたとも」

「そうか、それならいい。無理をせずにな。命は大事だぞ。」

「はい!」

なかなかいい門番さんじゃあないか。

俺は改めて、自己紹介をした。

「ワイドです。ワイド・トレント。」

「よろしくワイド。ヘクサーだ。」

「ヘクサー!よろしく!」

俺は気が合いそうな門番と握手を交わし、討伐へと足を向けるのだった。


*******************


南門の前、草原が広がっている。

農家と思われる農地や家がある中、俺は依頼書(クエスト)を開いた。

文字は読めないが、簡単な絵は描いてある。昨日、ミラリス嬢から口頭でも教えてくれていたから、なんとなくどんな魔物(モンスター)か分かった。


人工生物(スライム)に、(スピア)、あと蜘蛛(スパイダ)か」


特にスピアとスパイダは毒持ちだそうで、気を付けて倒さなければならない。

早速、スライムが足元を這っている。

足で踏んづけてみた。

ぐにゅっ。

柔らけえ。癖になりそうだ。

だがそこで俺はあることに気付いた。

「こんな柔らかいものを剣で切れるの?」


そこからは気力と体力を使っていった。

スライムは弱小モンスターでありながら、その個体数が多いのだ。だから食害も多い。

数が多いというのも、単価が小さいから量をこなしていかなければ大したお金にはならない。


次いで、(スピア)だ。スライムと同じくらいの大きさで、尻の棘で攻撃してくるが噛みつこうともしてくる。その顎も大した大きさだった。飛び回っててなかなか当たらない。

しかし、そこは考えがある。

わが日本の技術。居合抜き。

見よう見まねで瞬発的にやったら案外けっこう当たってくれた。

ふん。虫めが。


その次が蜘蛛(スパイダ)だった。

何せ糸を吐いてくる。そしてその八本の脚で近づき噛みつこうというのだ。

捕食者がどちらか思い知らせてやる。


*******************


「つ、疲れたあああ」

俺は草原に寝ころびながら、今回の討伐で得られる金額を想像しながら伸びをした。

片手にはいっぱいの討伐印(顎や針、スライムの核など)の入った袋を持っている。

さて、帰るか。


うきうきしながら帰路につく。

南門では10人程度だろうか、列が出来ていた。

後ろに並び、順番を待つ。

「次、入れ」

「やあ、ヘクサー」

俺はヘクサーに声を掛けた。

「おお、ワイドさん。帰ったか。・・・沢山収穫したな。」

自慢げに袋を持ち上げた。

「じゃあ、また明日。」

「・・・ああ、明日な。」

柔らかい土道から硬い街道へ。冒険者ギルドへ一直線だ。


勇み足でギルド内へ入っていった。

奥のカウンターに足を運ぶ。

「クエスト、終わりました!」

「お疲れ様です、ワイド様!」

袋いっぱいの顎やら核やらを渡し、「少々お待ちください」の声を受ける。

俺は近くの椅子に腰かけて、換金はどのくらいかと待ち侘びていた。

しばらく待っていると、


「ワイド様~」


お声が掛かった。

カウンターへと歩いていく。

「こちら、スライム100体、スピア75体、ポイズンスパイダ20体で・・・

銀貨2枚、銅貨13枚です!」


俺は絶望した―――





















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