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転生

なぜ異世界転生モノが多くの魅力を持ちながら、しかし見続けていると疲れてしまうのだろうか?

異世界に夢見る内容が、ゲーム世界のそれと似てしまうのはなぜだろうか?

現実に生きている人たちは、死んだ先に楽しい異世界転生を夢見ているのは、現実世界に対しての不満や憤り、生きづらさがあるに違いない。


俺は異世界ものが好きな訳だが、うんざりしている所もあった。

主人公によくありがちなチート能力を発揮して異世界を無双するのは爽快だが、それは夢想でしかない。いつから爽快が不快になってしまったのだろう。


そんな折、仕事でくたばりそうな身体をデスクから引き離して、夜も深夜という時間に家に帰ろうとした。

目眩がして床が見える。俺は倒れた。


**********************


閉じた瞼に光を感じ、眩しなと思いながら身体を起こす。

周りは岩場になっていて、起こした身体が痛いと通告している。

「・・・ここは?どこだ・・・?」

俺は恐る恐る自分の両手を見てみた。

何も変わっていない。服もカッターシャツにスラックスだ。

空を見上げる。晴天に雲がいくつか。なにも変わったものはない。


いや、こんなにも広い空を見たのはいつぶりだろうか?

なにも変わったものはなくても、俺の置かれた状態が変だろう。

こんな時にふと思う。


「異世界転生したんじゃね?」


まずはじめに試してみたいことがある。

「ステータス!」

すると目の前にステータス画面が出現・・・しない。

しなかった。

「ここは異世界じゃない!」


俺はそう現実逃避という名の確信を得た。

目前には、崖下に広がる森が見え、右側にずっと行ったところにロックストーンのような遺跡が微かに見えた。なにはともあれ、この夢の間だけは探索を楽しんでやろうと思い立った俺だった。


**********************


鬱蒼と茂る森の中、30分を超え、1時間が経とうとしているうちに、森を抜け出した。

遺跡が50mぐらいの距離に建っていた。

俺は遺跡に向かい、何か面白いものはないかと探索しだした。

すると、錆びた剣が落ちているのを発見した。

刃渡り1mはありそうな見事な錆びた剣だった。心許(こころもと)ない。

あるに越したことはないと一応拾っておいた。

「重い、錆び臭い、汚い」


遺跡を出た後は、とりあえず町を探さなけらばならないので、道がないか散策した。

「道があった!」


俺は道を見つけて、人の通りがあることに感謝しつつ、

「日が暮れる前に人に会えたらラッキーだなー」

と思いながら、歩き出した。


**********************


ちょうど丘を越えたところだった。

馬車が盗賊に襲われているのを発見した。

馬車の護衛の人たちが

盗賊たちが声を張り上げている。

中には下卑た笑い声を出している輩もいる。


「うわあ、これイベントフラグ立ちました?」


別に助ける義理はないだろうと、あらぬリスクを取りたくない俺だったが、これで目覚めが悪くなるのも嫌だった。

「どうせ夢なら、やっちゃいましょうか!」


俺は丘の上から猛ダッシュした。

「おらおらおらおらァーーー!!!」


盗賊の一人が俺に気付く。「なんだ?」ってな感じだった。

錆びた剣を上段に構える。俺はこう見えて剣道経験者なのだ。ブランクは長いけど。


不意を突かれたのか、盗賊は一歩出遅れた。

脳天に錆び剣が直撃する。

ドスッ!

鈍い音だった。

それと同時に手が痺れる。

「イッッッてえええェェェ・・・・・・!!!」

竹刀とは違い、錆びても剣は重くそれに伴って返ってくる衝撃も比例する。


周りの気付いた盗賊たちは一瞬なにが起こったのか理解できずにいる様子だった。

だが、一人が血しぶきをあげて、脳天がかち割られているのを見て、異様な光景に一瞬立ちすくんだようだった。


しかも、俺の錆びた剣を見て、そんなモノでここまでなるとは思わないだろう。

「錆びて・・・る剣だ・・・・と」


盗賊の一人がそう言ったと思うや否や、馬車の護衛の一人が、盗賊の一人を切り伏せていた。

盗賊たちはこの状況を把握したとたん、逃げ出してしまっていた。


「助太刀、ありがとうございます!見事な一刀でしたな!」


俺は痺れる手をぶらぶらしながら、そう近づいてくる護衛の一人に声を掛けられた。


「いえいえ、たまたま通りかかったのもですから。」

「しかし、真上から切り下すなんて、珍しい剣術ですな。」


これには、俺もなんと返せばいいのか、一瞬口どもってしまった。


「なんにせよ、助けてもらって恩に着ます!」

馬車の中から、商人らしい恰幅のいい人物が現れた。


「うちの商品が、こんなところでみすみす奪われるのではないかと、肝を冷やしましたぞ!」

「商品、ですか。何を取り扱っているのですか?」

これは聞いてみたが、それは内緒とばかりに、にこりと笑って話を逸らされてしまった。


「こんなところで、貴方様もどうかれたのですかな?連れはいないようですが。」

おそらく、異世界から転生してきましたとも言えず、認めてもいなかったので、

「悪い夢を見ているようです」

と答えた。

商人も「それはたしかに」と言いながら訝しんで、俺の恰好を下から上まで見回した。


「こちらの馬車(ワゴン)はどちらに向かっているんですか?」

俺は、良ければ一緒に連れてってくれないかと交渉した。

商人と護衛達は、「いいですとも」と快く引き入れてくれた。


馬車は、アヤゴンといわれる都市に向かっているそうだ。ちなみに今いる国はイーシアで、南西にアヤゴン、北にアンノック、南東にイーシャトと呼ばれる都市があり、国の中央には首都イーシアがあるそうだ。


「私は商人のグラハム、よろしく。」

「俺は、・・・ええと、ワイド。ワイド・トレントといいます」

俺は苗字の広瀬を(もじ)って、ワイドと答えることにした。


異世界転生モノでよくあるのが、自分の氏名をそのまま使うことだ。

もちろん悪くはないんだが、世界観を乱したくない。

異世界なら異世界なりの名乗り方(偽名)をしてもいいじゃないか!

第二の人生、転生前の名前に引っ張られたくない。


俺は道中、色々と商人に聞きたいことがあったので、話しを聞いてみた。

この世界で魔法は存在するのか、亜人種は存在するのか、魔人は存在するのか。

そして何より、通貨はどんなものか。

商人は色々と教えてくれた。

魔法はあるが希少であるし、貴族しかいないこと。

亜人種はいて、魔人は伝説上では存在していたこと。

そして通貨については、

「国によって違いますが、ここイーシアについて言えば、イーシア金貨、イーシア銀貨、イーシア銅貨があります。我々は普段、金貨、銀貨、銅貨と簡単に言っていますがね。」

と言っていた。

なるほど、国によって違うのは現在の地球と同じか。

「・・・ところで、ワイドさんの着ているその服。上等なものとお見受けしますが、どちらで買われたのですか?」

俺はぎくりとした。咄嗟に口をついて出てくる。

「俺の故郷では、皆このような恰好ですよ。・・・それは遠い国で。無事に帰りつけるか心配しているところなんです。」

商人グラハムは目を丸くして、

「なんと!是非とも貴方様の国に行ってみたいものですな!」

と興奮していた。

商人魂というものだろうか。


馬車の横に護衛の一人が近づいてきた。

「それにしても、錆びた剣を使うとはなかなかえげつないですな。」

それには俺も「?」となってしまったが、

「錆びというものは、切られるとその傷口からじわじわと腐っていってしまうのですよ。

例え、微かな切り傷であっても。」


なるほど。それで盗賊たちは慌てて逃げ出したという訳か。金品奪っても残りの命の長さが大事ということか。


「アヤゴンまでは、どのくらい掛かりますか?」

俺はどのくらいの時間になるか聞いてみたら、あと一晩は掛かりそうだと言われた。

一晩この馬車に揺られながら行くのか!

腰が痛くなりそうだ・・・












異世界転生や異世界召喚を元にしたライトノベル、漫画、アニメを見ている中で、実際に転生した場合にゲーム調でステータスなどが現れるとしたらどうでしょうか?

もちろん目に見える形で成長を感じられるのは楽しいかもしれない。モチベーションも上がる。実際、作品のゲーム化を楽しみにしたり、妄想が膨らむ。


今回、書き始めた「異世界転生アンチの俺が転生しました」は自分でも異世界モノを書いてみたいと思ったことが始まりです。

ステータス画面やらゲーム世界を土台とした時に、ああ、またこの感じかと呆れることもあり、それでは面白みに欠けると思っていました。


実際、書き始めるにあたってゲームシナリオを書いてみました。


すると、ただ文章を書くよりも自分の中で想像という妄想が膨らんできて、

書くよりも、構想を考えるのが楽しい。そんな当たり前のことを改めて感じさせられました。


小説を書く、というよりもゲームシナリオを描く。今まで書いてきた人たちはどんな方法で書き続けてきたんだろう。そういう意味では、自分の中で画期的なやりかたのように思いました。


まだ、どんな顛末になるかは分からないけれど、趣味と割り切って、何よりも楽しんで書いていきたいです。


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