今朝
三題噺もどき―にひゃくごじゅうきゅう。
『――♪』
―っるさいな…。
突然鳴り出したお気に入りの音楽に、思わずそんなことを思ってしまう。
まぁ、朝だし。アラームとしてかけているわけだから、うるさいのは当たり前ということで。
しっかりと起きている時に聞いてしまえば、とてもいい曲なのだ。
「んーー…」
未だなり続けるそれをとめようと、仰向け状態のまま、あたりを探す。
はれ…どこに行った…この辺に置いたはずなんだけど…。
「っぐっ―!」
―ったい…。
仰向け状態だったお腹のあたりに、突然の痛みと重み。
あぁ、はい。
いつの間にこの部屋にはいってきたんですか…君の寝床はリビングにあるはずなんですけど……。
「……にぁ……」
ぼんやりとした視界の中で、飼い猫がうるさいからさっさとそれをどうにかしろ、と言わんばかりの不機嫌顔で座っていた。
または、早く起きて飯をよこせか。
「…んん、おはよう…」
アラームを探していない別の手で、くしゃりと頭を撫でる。
素直に受け入れてくれるあたり、案外そこまで怒っていないのかもしれない。
…あ、あった。
「んしょ…」
猫を撫でながら、ゆっくりと体を起こす。
ついでにお腹の上からどいてもらう。華奢な方ではあるはずだが、普通に重い。
あと、ものすごい勢いで乗られたせいで、未だに痛い気がする……どんな勢いで乗ったの貴女…。
「くぁ……」
まだ、頭はぼうっとしている。
起きて動けば覚めるだろうか。
アラームを止めたことで少し機嫌がよくなったのか、今度は膝の上で丸くなった。
そこにいるのはいいけど、動けませんよーごはんいらんのー?
「…ちょっとしつれー」
しかしまぁ、そういうわけにもいかない。
飼い主もお腹がすいておりますのでぇ。
膝の上で丸くなった猫を抱え、そのままリビングへと向かう。ついでにカーテンも開いておこう。
「おぅ…まぶ…」
この部屋はありがたいことに日当たりがよく、朝から気持ちのいい光を浴びることができる。しかし、今日はいつも以上に眩しい。
…あぁ。
よく見れば、ベランダのあちこち水滴がついていた。端の方には水が溜まっている。水が光を反射しているせいで、キラキラとしていたのだろう。
猫も眩しそうにしている。
…面白い顔してるねぇ。
「ごはんたべようかぁ…」
一旦猫を床に下ろし、キッチンへと向かう。
猫もトコトコと、後ろをついては来たが、キッチンの手前で止まる。
賢い子なのだ。悪知恵の方にその頭の良さが傾いている時があるが。
やんちゃが残っていて、たまに手におえない時もある。
が、まぁ、そういう所も可愛いので、何にも言うまい。
「よいしょ……」
彼女のを出すか。多分夜中に動き回ったりしただろうし。
腹は私より減っているだろう……。
あぁ、思いだした。そうか、昨日は珍しく雨が降ったせいで、寒すぎて。彼女が湯たんぽ代わりに温めてくれたのだ。普段はそんなことはしないのだが、昨日は珍しく布団の中に入ってきたのだ。寒かったのかな?
「はい、どーぞ」
昨夜のお礼もかねて、いつもより気持ち多めに入った皿を、彼女専用の机に置く。
パクパクとおいしそうに食べているあたり、腹は減っていたのだろう。
―さて、飼い主もご飯食べよ。
「……」
んーパンで良いかな。
ついでに、この微妙に残っているジャムを消費しよう。
…何でこんな残し方してるんだ。
「……」
一枚だけ残されていた食パンを、トースターの中に放り込む。
焦げるているのは食べたくないので、焼き加減を見つつ慎重に焼いていく。
ついでにケトルでお湯を沸かし、スティックのカフェオレをいれる。
お気に入りのマグカップを用意し、適当に粉をいれ……あとスプーン。
「……」
パン…お。いい感じ。
これ以上焼くと焦げそうなので、回収。
あち…あ、皿だしとくの忘れてた…。
ま、いいか。ティッシュの上に置けばよし。洗い物減ってラッキー。
ジャムも全部ぬって…。中途半端すぎないかこの量……。いつかの私を呪うしかないなこりゃ。
「……」
ん、お湯沸いたな。
マグの中にお湯を注ぎ、スプーンでかき混ぜる。
そのままリビングへと戻り、床に座る。
低い机の方が好みなので、椅子が必要になるような大きな机は置いていない。
あと、こっちの方が一緒にたべているかんがあっていい。
「……食べ終わったねぇ」
ま、大抵先に終わっているけど。
綺麗に食べられた皿の横で、満足したのか毛づくろいを始めていた。
丁度良く日の光も当たるので、そのまま日向ぼっこを始めるのが彼女の日課だ。
「いただきまーす」
ザクリと、パンを食べながら。
私も一緒に日向ぼっこしようかなぁ…なんてことを考えていた。
お題:水・猫・日向