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くろがね姫の離婚  作者: 春凪 志苑
3/14

種が、蒔かれる。

二人が成人を迎えたころ、隣の国から使いがやってきた。

「東の国にて民が反乱、国主は惨殺され、治安乱れに乱れおることは御承知の由。我等、手を携え、かの国より押し寄せる暴徒を防ぎ、民の平和を守らねばなりませぬ。つきましては、同盟を結びたく存じ奉り候。…」

風の噂。

隣の国の、新しい国主の野心家ぶり。

「…、我が国の主は、無益な争いを好みませぬ。…さりとて、平和を乱す者あらば、容赦せずの心構え」

同盟のしるしには、くろがね姫を嫁がせること。

つまりそれは、戦わずして傘下に下ること。

「同盟を」

くろがね姫の父親はすでに高齢、病がちにてもはや戦へは出られない。

この小さな国が、今のいままで平穏無事であったことが奇跡。

同盟を断れば、ひとたまりもなく潰されるは必至。

同盟か。

戦か。

…年老いた国主は、従属への道を選んだ。


「なぜ? 」

混乱。

「私は、アメツミの生まれ変わりである。…人質とはこれいかに」

「そなたへ良い婿をと考えていたところじゃ。隣国の国主はなかなかの人物と聞いておる。喜ばしいことよ」

「強い者へ嫁ぐことこそ、女の幸せであろう?」

「夫によく尽くし、沢山の(おのこ)を産め」

「子を産まねば、女として一人前とは言えぬぞ」

城じゅうが、笑顔と女の幸せと命乞い。

いつのまにやら、生まれてきた意味を、定められていた。

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