種が、蒔かれる。
二人が成人を迎えたころ、隣の国から使いがやってきた。
「東の国にて民が反乱、国主は惨殺され、治安乱れに乱れおることは御承知の由。我等、手を携え、かの国より押し寄せる暴徒を防ぎ、民の平和を守らねばなりませぬ。つきましては、同盟を結びたく存じ奉り候。…」
風の噂。
隣の国の、新しい国主の野心家ぶり。
「…、我が国の主は、無益な争いを好みませぬ。…さりとて、平和を乱す者あらば、容赦せずの心構え」
同盟のしるしには、くろがね姫を嫁がせること。
つまりそれは、戦わずして傘下に下ること。
「同盟を」
くろがね姫の父親はすでに高齢、病がちにてもはや戦へは出られない。
この小さな国が、今のいままで平穏無事であったことが奇跡。
同盟を断れば、ひとたまりもなく潰されるは必至。
同盟か。
戦か。
…年老いた国主は、従属への道を選んだ。
「なぜ? 」
混乱。
「私は、アメツミの生まれ変わりである。…人質とはこれいかに」
「そなたへ良い婿をと考えていたところじゃ。隣国の国主はなかなかの人物と聞いておる。喜ばしいことよ」
「強い者へ嫁ぐことこそ、女の幸せであろう?」
「夫によく尽くし、沢山の男を産め」
「子を産まねば、女として一人前とは言えぬぞ」
城じゅうが、笑顔と女の幸せと命乞い。
いつのまにやら、生まれてきた意味を、定められていた。




